第32話 君がいなくても過ぎる日々 その十

 結局、カイタローの“朝食の歌”も、ノゾキヤローの“コンビニの傘”の歌も、勿論、“便所コオロギは泣かない”も採用には、若干の問題があり、オリジナルとは、なり得なかった。カノミーは、意外に古風な歌詞を書いて来た。 「何、なに?“梅の香”ですか?歌のタイトル?」 「いいでしょ?和風よ、和風!」 「夜影、月影、花の影....出だし良さげだね!」「人待ち梅の香、磯の香あられ、彼の香、夢の香、月の雫、春待つ霙」「ちょっと、いい感じの言葉並べた?」  「まだ、先が有るでしょう」  「春のせせらぎ、夏のざわめき、おはぎに?牡丹餅?」「エッ!これ何?忍れど?山路の秋?」「エッ、エ〜!栗鹿の子?苺大福?...お菓子の名前じゃん」 「ん〜とね!家の製品!“忍れど”はね、お父さんが考えたの!求肥で包んだ粒餡を、カステラ生地で、更に包むの!すっごく美味しいヨ!」 「これ、製品カタログじゃん、歌詞じゃ、無いじゃん!」 「エッ〜トォ、菓子かしの、?」「良いよね!家の宣伝になるし!」 「カノミー、お前までふざけたら、うちら、戻れんよ!普通のバンドに」 「でも、分かった、私に作詞は、無理!」「餅は、餅屋よっ!」  「「「ペッタンさんが、餅屋さんに振ったら駄目じゃん」」」  「お前ら!まだ言うのか!」 「「「ドラムスティックで、たないで〜」」」

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 「しょうがない!取っておきを、出すよ!」「心の傷が、開くやつ!」  「無理しなくても、良いよ、一寸さん!」  「大丈夫!せっかく書いたんだし」「読んで、みてよ」


     二人が始める物語


 二人で 一つの物語りを 

 作れなかった 二人

 一人づつ 別の物語りを 作って行くんだ

 君が始めた 物語の中に 僕はいない

 君のいない 物語りを 

 僕も始めなけりゃ いけないね

 でも少しぐらい 休んでも良いよね

 それから初めても 

 君に追いつきたい 訳じゃない

 今はまだ 君のいない左側に 慣れない

 僕の左手はまだ 君の右手を恋しがる

 いつか忘れられる 心の穴は塞がるんだ

 でも その事さえもが 今は悲しい


 夕陽に 二つの影法師が 

 重ねられない二人

 一人づつ 別の帰り道を 辿って行くんだ

 君が見つめる 彩りの中に 僕はいない

 僕が見たい 景色の中 

 君を消さなけりゃ いけないね

 只ほんの少し 残しても 良いよね

 そこから始めても 

 君を追いかける 訳じゃない

 今はまだ 君のいない左側に 慣れない

 僕の左手はまだ 君の右手を恋しがる

 いつか忘れられる 心の穴は塞がるんだ

 でも その事さえもが 今は悲しい

 

 いつの日か 君のいない左側に 慣れてさ

 僕の左手は ただ誰かの右手を掴めるの?

 それで忘れられる 心の穴は消せるのかな

 まだ その事さえもが 信じられない


 「良いんじゃない、さすがね、一寸さん!」「餅は、餅屋ね!アッ」  「「「餅は、餅屋!お菓子は、お菓子屋!さすが、流石の!ペッタン!カノミー!」」」

「お前ら〜っ、最後のペッタンは余計ダロウ?」

「「「アレッ!ちょっと、壊れちゃった?」」」  「コンノ!馬鹿共〜ッ!絶対許さん!」  「「「痛い!痛い!カノミー!許されて欲しい〜」」」

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 私と寧子と和君の三人は、ツアーバスの乗り換え場である、ミー君達の通学駅前を目指してバスに乗った。今日は、6人で、浦安ランドへ行く日だ!寧子は、私を気遣って、和君を放ったまま話しかけてくれる。和君も、「今朝、早く起きたから眠いよ!」と言って、寧子の隣で目を閉じていた。

 「寧子、そんな気を使わないで、私、お子ちゃまじゃないんだから、構ってくれなくても拗ねません!」  「そっかな〜、ガッコ甘えたさん、だから、淋しくて泣いちゃいそうじゃん!」  「そんな、群れから外れた子ウサギじゃあ無いです〜!」  「そんな、可愛いモノ?あんた!」  「自分で言って、恥ずいかも?」 「「うふふ、ふっふっ!」」 「でも、楽しみだね!浦安ランド!」 「そう、だね!」

 バスは、目的地に着いた。バスを降りると、結海たちが先に着いており、乗り換えのツアーバス乗り場で合流した。ツアーバスの座席は、基本的にカップルシートになっている。従って、私の隣には西城君が座った。

 通路を挟んだ横に、寧子と和君、私たちの背後に結海と小歳君のカップルがそれぞれ座った。 「ガッコちゃん、窓際が良い?」  「別に、どっちでも良いよ」  「西城君は、希望ないの?」  「寧子ちゃんが、通路側だから、ガッコちゃんもそうする?」  「うん、そっしようかな」

 私の右側は、ミー君の為に空けられたのかな?と、思って少しだけ嬉しくなった。誰にも言えないけど! 「今朝、早く起きたから、ちょっと、眠いな、寝ちゃって良いかな?」と、西城君に聞かれて「うん、良いよ、私も眠いから、ちょこっと寝ようか?」  「そう、するべぃ!」  「ん、だすな、ん、だす!」 「「うふふ、ふっふっ.........」」さして、面白くもないのに二人で笑った。

 浦安ランドに着いた。4ヶ月ぶりだ、この前来た時は、マー君の意地悪のお陰で楽しめなかった。今日は、ミー君がいない、でも、楽しんでやるんだ、ミー君の分も合わせて、二人分楽しんでやるぞ!寧子と和君は、入園するなり手をつなぐ、当たり前のように恋人繋ぎだ!結海と小歳君は、初々しく結海が小歳君の袖を摘んでいる。私と西城君はカップル達を見て、変に意識してしまい私は半歩下がって歩いた。人気アトラクションは結構な待ち時間ではあったが、期待通りに面白く!男の子達3人が連携してくれて、効率良く浦安ランドを楽しめるように、エスコートしてくれた!定番の“電飾行進”“ファイヤーワークス”と、最後まで楽しみ尽くして、満足のうちに帰路についた。帰りのバスの中では、皆んな子供のように疲れ果てて眠った。西城君の座る右側は、チリチリとむず痒い感じがした。ちょっと、悪戯な冒険をしている気分だった。バスが乗り換え場所に着く直前に西城君が「ガッコちゃんが、ピアスを外して僕と会ってくれたら、嬉しいだろうな」と、言った。「そんなこと、言われると困る」「次が、怖くなる」と言うと「ごめん、もう言わないから、また、みんなで遊ぼう!」と返された。結海達とは、ここでj別れた。

 私と寧子と和君は、一緒のバスで帰った。私の家の近くまで、3人で歩いて、私が家に向かうと、和君は寧子を家まで送ってから帰ったようだ。

 今日は、二人分楽しめた。どうしたら、ミー君に、楽しさのお裾分けができるのか?考えていたら、いつの間にか寝てしまっていた。

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