第7話 シャボン玉の日々 その五

 今日は、日曜日だ、二人が二度目のデートをする日だ。 僕は、ガッコからその事を聞いていた。匠、は意地でも僕に連絡しては、こないだろう。僕とガッコの親密度が、気になって仕方がないはずだ。僕も男だから分かる、聞いても仕方のない済んでしまったことなのに、確認したいのだろう。男は、最初の男になりたがり、女は、最後の女になりたがるらしい。自分の子である確信が欲しい、男のさがと、自分の子を確実に育てたい女のさがと言う事らしい。

 いずれにしても、ガッコの初めては僕へのご褒美だ、ガッコの初めて全部を奪い尽くしたいと思ってしまうのは、彼女への愛情ゆえなのか?あの二人に感じる運命的な何か?それに対しての嫉妬しっとなのか?

そんな初めてが無くなったくらいで、匠はガッコをあきらめたりは、しないだろう。決して、むしろ上べだけの、本当の価値のないものを取り除いてあげるのだ。

 そうして、ガッコは一生、僕を忘れないかもしれないし、ガッコを諦め無い匠も、ガッコ以上に僕を忘れることはできないはずだ。

 僕の望みは、本当の僕、あるいは僕が大好きな僕自身を、僕の大切な人達にしっかりと覚えておいて欲しいのだ。その為に、僕は、匠がこの状態でまだ耐えて行けるのか確認する必要があった。僕は、その日の夕方18時に匠に電話した。

 「今晩は、匠、今日、ガッコと会ったんだろう?」

 「ガッコから聞いていたのか?お前達、別れたんじゃないのか?」

 「別れたって、友達だ」「電話ぐらい、良いだろう」

 「じゃあ、俺に任せるなんて....ガッコを任せるなんて、言うんじゃねーよ」

 「僕からは、もう、しないよ」「でも、ガッコからの電話は、受けるよ」

 「あぁ、そうしてくれ」

 「じゃあ、機嫌悪そうだから、もう、切るよ」

 「話、無いのか?」

 「あぁ、声が、聴きたかっただけさ」

 「キモい、こと言うなよ、.....じゃあな!」

 まだまだ、大丈夫そうだ。僕は電話を切った。 

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 今日、ミー君と会った。マー君の代わりには、どうしたってならない。でもね、大事にされているのが分かるから楽しいし、嬉しい。“シャボン玉飛んだ”の推し絵の前では、目が潤んでいた。ミー君は、優しい、時々意地悪だけど、何時も優しい。

 マー君も優しい、でも、優しさの感じは同じじゃ無い。マー君の優しさは、大きくて、皆んなを包み込む感じだ。

 ミー君の優しさは、私だけを包んでくれる。友だちとしてなら、ミー君を大事だと思えるけど、ミー君はそれじゃ駄目なんだと分かる。でも、私が欲しいのは、マー君なんだ。楽しいからって、ミー君と会うことを続けるのは、ミー君に申し訳ない。マー君に、ミー君と会うのを辞めたいって言おう。

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 「今晩は、マー君、今、大丈夫かな?」

 「やぁ、ガッコ、電話待ってた、匠にさ、もう、ガッコに電話しないって約束しちゃった」

 「私、私は嫌だよ、ミー君と、もう、会いたくない」

 「アイツじゃ、マー君の代わりには、なれないよ」

 「分かった、僕から、匠に言っておく」

 「ごめんね、嫌なことさせちゃったね」

 「うん」

 「じゃあ、また、電話するから、おやすみ」

 「うん、おやすみなさい」

 やれやれ、ガッコの方がもたなかったか。

 予定とは違ったけど、結果的に同じ事だ。

 ガッコは、僕を選んでくれた。匠へのプレゼントは、思ったより大分少ないけど、その分傷も浅くすんだな。さて、匠に引導を渡すか。その時、呼び出し音がした。

 「ごめん、マー君....まだ、ミー君に電話してない...かな?」

 「うん、まだ、して無いな」ちょっと、嫌な感じだ。

 「私...二人共...私のこと、考えてくれたのに、私は.....自分の事ばかり......」

 コレは、まずい展開だ。

 「もぅ、少し....ミー君と会ってみる、うぅん、会って良いよね」

 これは、ガッコを共犯にしておいた方がいいな。

 「勿論だ、でも、僕もガッコと付き合える可能性を考えてみるよ」

 「目標は、絶対諦めないけど、もし可能になったら、二人で匠に許してもらおう」「それまでは、二人だけの秘密にしよう」

 「分かった!嬉しい!また、元通りに戻れるなら、すっごく嬉しい!」

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 休み明けの月曜日の昼休み、何時ものように部室に集っていた。焼きそばパンと110ml紙パック牛乳がお友達だ。

 「で?どうだったの、野口ゴロー歌唱会?」

 「なんだ、その楽しそうな会合」

 「悪い、悪い、野口英世講演会?」

 「絶対、居眠りするやつ」

 「豚鼻ガリコの膝枕?」

 「やりてー!けど、誰が、豚鼻ガリコじゃ!」

 「喫茶“バルビゾン”どーだった、良かったべ、だいぶんよ!」

 「悪く無かった、と、だけ、言っておく」

 「アーンは?間接キスは?」

 「ノーコメント!」

 「だから、今時、小学生もいかね〜とこさよ、JK連れ込んで何すっだ?」

 「それなー、JKにも言われた」

 「だっ、ろーな、しか言えね〜」

 「んで、野口雨情、やっべーくれ、下衆かった」

 「逆に、尊敬」「するかっ!」

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 日曜日に拓磨から電話があった。何か用事があったような、様子は無かった。分かってはいたけど、ガッコと連絡を取り合っていた。

 拓磨の口からそれを聞くと、ひどく腹が立った。 拓磨から連絡するのは、止めると拓磨は言った。でも、ガッコからの電話は、受けると言われた。当たり前だ、俺は、ガッコの何者でもありはしないのだ。

 拓磨から電話することを、止めるように言ったことを酷く後悔した。愛され得ない事を知りつつ、嬉々としてガッコに会いに行く惨めな俺が、何を粋がっているのか?

 もう、止めるべきかと思う、止めたくない自分を納得させるために最後のつもりで、ガッコに告白することにした。

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     嘘つき

 

 明日はきっと 晴だから

 傘の準備は 要らないよ

 きっと迎えに 来てあげる

 そして朝には メールが入る

 降り出した雨 傘がない

 ごめんね迎えに 行けなくて

 

 今夜はずっと 一緒ダヨ

 ご飯の準備 お願いね

 きっと来るよと 言ったのに

 夕方過ぎに 留守番電話

 仕事の終わり 見えなくて

 ごめんね今夜 行けなくて


 嘘をつくなら もう少し

 優しい嘘に して欲しい

 何時いつまでもなんて 待てないの

 本当のコトを 言ってしまえば

 幸せの先 見えなくて

 ごめんね二度と 信じない

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