第35話 いつも通りに君はいない その一

 四月になった。俺達のバンドは、次の出演チャンスを伺っている。月一くらいは演奏りたいけど、対バン関係とか簡単じゃ無い。今の所、学校終わるまでに単独ライブを目指そう!と、話してる。かなり、ハードル高いけど、不可能では無いと思ってる。後、丸々二年!頑張れる事が有るのは!それが好きな事なのが、堪らなく嬉しい!

 新学期が始まり、共学普通科高校であれば、クラス替えという大イベントが発生するのだろうが、此処、男子8割強、基本1クラス1学科の工業高校では、有り得ない、夢の国のお話だ!と言いつつ、新入生の季節、この前まで中坊だった、可愛い奴らがやって来た。

 まぁ、去年は俺達だったのだが、親父化は容赦なく進む所で、進んでいる。俺の成長期は、何処ぞで道草を喰んで居られるらしい! 我が工業高校軽音部にも、幾人かの新入部員が、いらっしゃられた。基本的に、此処で、メンバー募集してグループ結成、パターンも少なく無いけど、俺達みたいに基本メンバー有りの奴等が、多いと思う。そんな中で、昼休みの、部室占拠は今年も俺達で確定だ!そんな、昼休みのひと時に、珍なる客の訪問があった。

 「失礼します、私、新入生の片田来楽かただらいらです」「サンバ・カメンズの方々ですよね?」 「イカ煮も角煮も、その通し」「お通しだって、タダじゃ無いのよ」 「あっ、それ!良いです、要らないです」  「ダメ、ダメ、お通しあっての居酒屋よ!」 「ここ、軽音部ですよね?本当!要らないです」「その手の、コミュニケーション!」 「おこりんぼさん!御用はなあに?」 「カノミー先輩は、いませんか?」 「あっ、カノミーね、彼の娘は他校の生徒だよ」 「やっぱり、そうなんだ!」「私、去年の“工業祭”でカノミー先輩を見て、惚れちゃったんです!」「兄貴が、もう卒業したんですけど、去年は3年生で、多分、他校の生徒だろうって聞いてはいたんですけど」 「あっ、片田先輩って、何十年かぶりで、地元の国大に合格した人だ!」「まぁ、工業系の大学行くなら、以外と工業高校の方が有利とは言え、国大は結構無理だよね」 「まぁ、兄貴は変人ですから」 「で、カノミーに会いたいの?」「サインでも、貰っとく?」 「えっと〜、私も、メンバーになりたいかなって?」 「あぁ、そ、なんだ」「パートは、何?」 「キーボード系なら!ピアノ習ってたんで!」 「えっ、キーボード!最高じゃん!」 「ピアノ習ってたってことは、譜面起こしも得意?」 「一応、出来る程度ですね」 「えっ、と、聞きにくいんだけど、見た感じ90のEぐらい?」 「ふぇ、それ位です、ね」 「へぇ〜、それは、良いよ!因みにスリーサイズは?」 「はっ!はい?」 「ノゾキヤロー、セクハラ!セクハラ、オヤジじゃねーんだから、やめとけ!」 「ムッ、う〜ん!そっかそっか、了解、了解です!」「でも、カノミーの不足を補って、あまり有るね!」「男は、皆んな、赤ちゃんだから」 「一寸さんは、例外かな?」「ガリコ、好きだから!」 「そんな、こた〜ねぇぜ、俺だって、二つありゃあ良いとは、言わねぇよ!」 「一寸さん、セクハラ!」「気ぃ付けろって!」「女子の面前なんだから」 「「了解です!」」  「で!どうなんですか?私、メンバーになれます?」 「「「合格!!!」」」「「「カノミーの返事次第だけどね!」」」

 来楽には、次の“音合わせ”の時、カノミーに紹介するということで、了解を得た。因みに、来楽の自宅は北上町商店街の隣り町だった。ただ、学区がカノミーとは違ったため、小、中学校は別々だったそうだ。

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 ライラを紹介する日が来た!ライラは一旦家に帰ってから、合流すると言うことで場所だけ教えた。近所だけあって、直ぐに分かったようだ。俺達がいつも通りに、チャリ3台連ねて練習スタジオに到着した時には。二人は顔を合わせて、自己紹介まで済ませていた。

 「ライラ、早いなもう来てたんだ」 「はい!カノミー先輩に、挨拶も済んでます」 

 「で、カノミーは、どう思う?」 「そうね、キーボードは、一寸さんが欲しがってたし」「腕、次第かな〜」「早速、合わせてみようか〜」  キーボードが加わるだけで、音の厚みとメロディラインに安定が出た。 「まぁ、良いんじゃ無い」 「それじゃあ、ニューメンバー加入祝いに、“エミちゃんママの店”行こう」 「三馬鹿の奢りね!」  「カノミーさん?先輩として、奢りませうよ!」 「あら、レディにお金を出させるの?」 「先輩にレディもジェントルマンもありゃあ、しませんぜ」 「等しく、年嵩の者がいるだけじゃあ、ありゃしませんか?」 「つべこべ言って無いで、金出しゃあ、良いんだよ!」 「「「い、イェッサーマム」」」

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 「カノミー!また、弱い者いじめ、してるの?」 ゆるふわ、エミちゃん、我らの天使様が、ペッタン尻でか女に言ってくれている。「あら、私に、お金を使えって、こいつら言うのよ!」 「えっ、男3人もいて、何て、甲斐性無しなの?」 「「「そりゃ、無いぜ、エミちゃん!」」」 「ところで、この子は誰かしら?」 「新メンバーの、片田来楽かただらいらと言います!」「工業の1年生です!よろしくお願いします」

 「私は、久留木くるきエミ、このお店は私の母のお店なの、こちらこそ宜しくね」

 「ところで、一寸さん新メンバーも入ったことだし、新しい歌詞書いてよ」 「んな、簡単にゃ、出来ないにゃ!」「時に、ライラお前、歌詞とか書ける?」 「まぁ、工業に入った時点で、そっち系は無理なんじゃ無いすか?」 「俺、書くけど!」 「そりゃ、希少種ですね!」「絶滅危惧種?」 「そこまでか!」「じゃあ、テーマくれよ、考えるヒント」 「今の季節、桜っしょ!」  「日本の人は、桜好きよね!」 「男女の別れと、散る桜花」 「涙ハラハラ、桜チルチル」 「チルチル、満ちて、ミチル、チル、チル?」 「なぁ〜んだよ、それ、頭に残って、歌詞浮かばね〜」 「「「「ん、じゃ、そゆことで」」」」

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    風通り過ぎ


 風通り過ぎ 残す花弁

 鐘の音過ぎて 散らす花弁

 燃え残した 手紙の文字を

 読む暇もなく 風が持ち去る

 慰めの 言の葉も無く

 ただ流れゆく 花弁のさざめき

 あなたの肩に ひとひらの花弁

 消しても消えない 思いの様な

 Just do its. The dream is over

 Just do its. The dream is over

 涙じゃ消えない 恋の残火

 消して欲しいの あなたの息で


 風通り過ぎ 残す花弁

 鐘の音過ぎて 散らす花弁

 流れるまま 消えゆく時を

 惜しむ暇なく 雨が連れ去る

 しばらくの 躊躇いもなく

 また震え出す 花弁のざわめき

 私の髪に ひとひらの花弁

 哀れな女を 慰めるよに

 Just do its. The dream is over

 Just do its. The dream is over

 涙じゃ消えない 恋の残火

 消して欲しいの あなたの息で

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