第20話
ジャンヌから出された依頼。
それは"ジュギ"と言う街の近くに発生したダンジョンの調査だった。
「造られたダンジョン?」
シズはジャンヌの言葉を繰り返す。
「はい、何でも外観が自然に発生した物とは違うようです。人為的に造られたと言う方がしっくりくると言いますか...私も実際に見た訳ではないのですが、話を聞く限りそう言う物としか言えないようです。」
ジャンヌは説明を続ける。
「最初、ダンジョンを発見した者が"ジュギ"の街の冒険者ギルドに届けを出しその後ダンジョンに潜ったのですが、3階層目から連絡が途絶え、他の冒険者が調査に行ったところ3階層目で遺留品が見つかりました。」
「なにが起きたの?」
シズはジャンヌに尋ねる。
すると...
「三階層目には、魔外域に生息する魔獣が居たようです。少なくとも4体。"ワイバーン
話を聞いたシズは納得した様に頭を抱える。
「なるほどね。それは確かに私に声が掛かる訳だ。」
「現在ダンジョンの3階層以降の立ち入りを規制している状態です。貴女に依頼する調査はダンジョンの階層数の確認、脅威度、どんな魔物・魔獣が生息しているか、そして人為的に造られたダンジョンの目的です。安全ではありませんが私の知りうる限り適任者は貴女しかいません。お願いします。」
ジャンヌは深々と頭を下げた。
シズはため息を吐いた後、ジャンヌに声を掛けた。
「分かったわ。その依頼、引き受けてあげる。」
ジャンヌは顔を上げシズに感謝を述べた。
「ありがとうございます。」
「その代わり、帰ったら奢りなさいよね?」
シズがジャンヌに言うと彼女は微笑みシズに言葉を返した。
「貸し一つですよね。」
「ぅぐっ!?」
「ふふ、冗談です。帰ってきたら皆で食事をしましょう。だから、無事に帰って来てくださいね。」
ジャンヌはシズにそう伝えた。
「...て事で、ノキア・ナナミちゃん。ここで私は別れるわ。
シズは二人に別れを告げる。
すると...
「何言ってるんですか?シズさん。一緒に行くに決まってるじゃないですか。ね?ノキアさん。」
「ったりめぇだ。お前、俺につけた飯代をまだ返してねぇだろ?そのまま逃がす訳ねえだろうが!」
二人はシズにそう言うと着いて行く意を示す。
「いいの?かなりの寄り道になるわよ?」
「まあな。だが、別に急いでいる訳でもない。別に構わないさ。」
「私も役に立てるか分かりませんが、お手伝いしますよ?」
三人のやり取りを見てジャンヌはクスリと笑う。
あのシズが...変わりましたね。
コホン…
「では、シズさん、ノキアさん、ナナミさん。あなた達三人はまず"ジュギ"の冒険者ギルドに向かって下さい。そこでダンジョンの調査依頼を請けてから事に当たってください。私の方であちらのギルドマスターに話は通しておきます。」
三人はジャンヌの説明を聞き準備を始める為治癒院を去ろうとする。
「そう言えばノキアさん。"ジュギ"まで行くのにどれくらい掛かりますか?食糧は1週間分程で良いですか?」
ナナミがノキアに尋ねる。
すると、その話を聞いたジャンヌが三人を引き止めた。
「お待ち下さい!もしや、歩いて向かわれる気ですか?」
ジャンヌはノキア達に聞いた。
質問に頷く三人。
それを見たジャンヌは三人に話しをする。
「アースドランを使って下さい。竜車を用意します。」
「アースドラン?何ですか?それは?」
ナナミがジャンヌに尋ねる。
「アースドラン…騎乗できるように訓練した小型の地竜です。最近、王都で試験的に運用を始めました。皆さんはまだ騎乗出来ないと思うので竜車を用意してそれを引かせます。徒歩では、4〜5日程掛かりますが、竜車では恐らく12時間程で着くでしょう。」
ジャンヌの説明にナナミは驚く。
今まで徒歩での旅をしてきたナナミ達にとってその早さは信じられるものではなかった。
ナナミはジャンヌに聞き返す。
「ジャンヌさん、今4~5日掛かる距離が12時間ほどで着けると聞こえたのですが...」
「はい。多少の誤差はありますが1日程で
どうやら話を聞くと本当の事みたいだ。
だが、それがあればかなりの時間を縮めることができる。
三人は準備を済ませた後、ジャンヌに用意してもらった竜車で"ジュギ"へと向かった。
ーーーーーーー
ージュギー
ーーーーーーー
昼に王都を出て約12時間後、三人は"ジュギ"へ着いた。
街に入る頃、夜は更け町が静まり返っていた。
三人は竜車を降りジャンヌに手配してもらった宿へと向かう。
歩いていないはずだが三人の表情からは疲れが窺がえる。
「...お尻が...痛いです。」
「まさか、竜車があんなに揺れるなんて...戻ったらジャンヌに文句をいってやりましょう。ナナミちゃん!」
「お前ら、ちゃっちゃと歩け。今日はアイツが手配してくれた宿でもう休むぞ。他の事は明日集まって考えようぜ。」
ジャンヌが手配していた宿へと向かい三人は体を休めた。
ーーーーー
=翌日=
ーーーーー
目が覚めた三人は宿を出て冒険者ギルドへと向かう。
扉を開け中へと入ると、そこは今まで立ち寄った街のどのギルドよりも冒険者たちで賑わっていた。
「ノキア、ギルドマスターとの交渉はアンタに任せるわ。私はナナミちゃんと後ろで大人しくしているから。」
シズはそう言うと後方で静かになる。
コイツ...面倒な事を丸投げしやがった。
シズに向かい話しかけてはみるが彼女は一向に沈黙したままであった。
「ちっ、だんまりとしやがって...まあ、そっちがそうするならこっちだってある事ない事をぶちまければ…」
突然放たれる殺気。
それは後ろに居るシズが放つものであった。
"余計な事を言えば〇す。お前に許されるのはギルドマスターとの交渉のみだ。"
実際に言われたわけでは無いが後ろに感じる殺気から全てを理解する。
コイツはマジでやりかねん...
余計なことは考えずノキアは受付へと向かい職員に話しかけた。
「ギルドマスターを呼んでくれ。"
ノキアは職員に言伝を頼む。
「はい。お待ちください。」
職員はそれを聞くとギルドマスターを呼びに受付の奥へと消えて行った。
職員が呼びに行ってすぐにガラの悪そうな冒険者が話しかけてきた。
「よぉ!兄弟。お前らここらじゃ見ない顔だな?他の街から来たやつか?」
冒険者の質問にノキアは答える。
「ああ、王都からな。ここのギルドマスターに呼ばれて...」
すると、話を遮る様に冒険者が話しかける。
「おいおい、嘘を言っちゃあいけねぇな。ここのギルドマスターは忙しいんだ。お前らみたいな ひよっこ を呼び出すわけねえだろ。ギルドマスターに用があるならまず俺を通しな。このB級冒険者のベラン様をな。」
高圧的な態度でべランは三人に迫ってくる。
「どうやらお前らは素人みたいだからな、俺様が手取り足取り教えてやるよ。」
そう言うとべランはノキアの後ろに居るシズとナナミに不快な視線を送る。
何かを感じ取りノキアの後ろに隠れるナナミ。
周りの冒険者たちは遠目で巻き込まれないように様子を窺っていた。
それを見てノキアは理解する。
このべランと言う冒険者はギルドから腫れ物扱いされているらしい。
しかも、半端に実力があり
「おい、放っておいてくれねえか?自分たちの事くらい自分たちでなんとかできるからよ。それにうちの一人がアンタに怯えてるみたいだしな。」
それを聞いたべランは文句を吐き理不尽な要求をしてくる。
「ああ゛?お前ら俺様をバカにしてるよな?お前ら程度のカスがB級の俺様に乞えるんだぞ。いいから後ろの娘たちを渡せ!!」
10分後、何も知らぬまま"ジュギ"のギルドマスターがロビーに訪れた。
「・・・一体、何があったの?」
目の前には重症な傷を負いながら三人に向かい謝るべランの姿があった。
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