第15話 銀煌竜《シルバードレイク》の視点

産卵の時期、銀煌竜シルバードレイクはとある山に降り立った。


ここは、魔外域と違い外敵も居ない。

人間にしても脅威になどならない。

故に、子育てをゆっくりとできる。

さあ、我が子よ。早く顔を見せておくれ。

銀煌竜シルバードレイクは卵を産むとソレを大事に温める。


暫くの後、人間どもがやって来た。

何をしている...ここから出て行け!

銀煌竜シルバードレイクは人間たちを威嚇する為、咆哮を上げた。

天に響く咆哮。

これさえ聞けば奴らは大人しく帰るだろう。

人間など関わりたくもない。

少しばかり眠いな...

銀煌竜シルバードレイクは眼を閉じ眠りに入る。


・・・・・・・

・・・・

・・


「・・・オス様、ありました。」

何やら話し声が聞こえる。

誰ぞ居るのか?

銀煌竜シルバードレイクは眼を開きその巨体を動かした。

「うわあああああ!!」

叫び声が辺りに響く。

「バカ!?じゃなくて何を叫ばれているんですか!カリオス様!!」

「逃げますよ!カリオス様!!」

「ま、待て!!そこに卵が銀煌竜シルバードレイクの卵が...」

カリオスは銀煌竜シルバードレイクの卵に近寄る。


近づくな!!

カリオスに向かい銀煌竜シルバードレイクは咆哮を浴びせる。


「お、お前たち!!何をしている!!銀煌竜シルバードレイクの注意を逸らせ!!」

冒険者たちは注意を引く為、銀煌竜シルバードレイクを挑発する。

だが...

そんな中、カリオスは銀煌竜シルバードレイクの卵を割ってしまった。


プツンと何かが切れた感覚がした。

愚かな人間よ!!許さん、決して許さんぞ!!

巨体を羽ばたかせ逃げる人間たちを追う。

貴様らは許さない。はらわたを引き裂き、その喉を噛み千切りお前の存在を滅ぼしてやるぞ...

小さな人間たちは森に紛れ姿を隠す。

遂には人間たちを見失ってしまった。


小賢しい虫が...忌々しい。

ぐつぐつと煮えたぎる感情を落ち着かせ銀煌竜シルバードレイクは一度山へと戻っていった。

割れた卵の残骸を見る。

卵が零れ、辺りが銀色に染まった。

失われた生命いのちはもう戻ることは無かった。

亡き生命いのちを弔った後、銀煌竜シルバードレイクはカリオスを探した。


あの者の匂いがする。

嗅ぐだけで腸が煮えくりかえるような感覚。

そうか...あの街に...

そこへ竜は降り立った。

あの人間を出せ...忌々しい者、カリオスを...

だが、竜の言葉など理解出来る者など居なかった。

銀煌竜シルバードレイクは暴れ街を壊した後、再び山へと戻っていく。


幾日が過ぎた頃、山に再び人の匂いがした。

もう許さない...愚かな者どもよ!!

来るなら来い、八つ裂きにしてその屍を我が子の前に晒してやる。

銀煌竜シルバードレイクは怒りの咆哮を上げた。

そして、現れた三人の人間。

お前らはどこまで強欲なんだ。

あれだけの事をしでかしながらまだ足りないと別の者を寄こすのか。

一人の者が仲間に話しかける。

「加勢は必要か?」

「いいえ、必要ないわ。」


何をごちゃごちゃと言っている!!

銀煌竜シルバードレイクは怒号と共に空へと羽ばたいた。

これ以上、我から貴様らは何を奪う!!

轟く咆哮と共に業火の息吹きブレスを吐く。

だが...

フッとろうそくを吹き消すように業火が消えた。

「ごめんね。アナタに恨みは無いけれどこれも仕事だから...」

確かに聞いた言葉と共に目の前が暗くなる。

身体に力が入らない。

意識が薄れていくのを感じた。

ああ...人間はなんて強欲な...存...ざ...。

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