第25話

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人工ダンジョン =アフトリ=・地下五階層

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パチパチとなる拍手にノキア達は警戒を強める。


【まさか、ヌーヴァを倒すなんて。】


ノキアたちの目の前に翼を生やした者が降り立つ。


!?


そこにはノキアが探し求めてた存在がいた。


「ノキア、アイツ強敵よ...ねぇ?聞いてるの?」


ノキアの様子が変わる。


「テメェ...」


「ノキア?」


「言え!!"ラキエル"は...何処だああああああああああああ!!」


「ノキア、待って!!」


天人そらびとに向かい飛びかかるノキア。


だが...


【ハァ~...血の気が多いね。これだから下界人は...】


天人そらびとは手で目の前の空間を軽く振り払う。

すると、触れても居ないノキアの身体が天人そらびとと反発するように弾き跳んだ。


「ガァッ!?」


元居た場所に頭から突っ込みダメージを負うノキア。


「ノキア!?」


「ガァッラァ!!」


ノキアが再び天人そらびとへ向かって行く。


しかし、結果は同じく弾き飛ばされるだけだった。


【ハァ~...何度やっても無駄だって。少しは話を聞こうよ。】


激昂するノキア。

歯を食いしばり、殺意を向き出したまま息をする。

どう見ても普通ではない。



▽▽▽▽▽▽▽▽

闇光纒刃あんこうてんじん

△△△△△△△△




ノキアの作る外套がノキアの短刀に纏わりついた。


黒い闇で刀身は見えにくく不安定に揺らいでいる。


それをノキアが振るうと離れた場所の天人の片腕が切れ落ちた。


それを見たシズは驚いた。

それは、先ほどシズが繰り出した距離すら無視して離れた場所を攻撃した技そのものだった。


「ノキア...アンタ、それは・・・」


激昂しているノキアはシズの声すら届いていない。


【う~ん、それは危ないな。】


片腕を斬られてなお冷静さを崩さない天人そらびと


もう一度、ノキアは武器を振り上げ切りかかろうとする。


その一瞬、天人はノキアの懐に入り殴打をかます。


=闇て...=


防御が間に合わず、ノキアは大きく後ろに飛んだ。


「グァッ!?」


「ノキア!?」


【君もね。】


天人は近くに居るシズにデコピンをするように指を軽く弾いた。


「キャアッ!?」


シズの身体も大きく飛ばされた。


【君たちさぁ、少しは僕の話を聞いてくれないかい?】


天人は二人に語り掛けるが...


「うるせぇよ。てめぇの話なんぞ興味はねえ。それよりも"ラキエル"の場所を教えろ。アイツの..."ラキエル"が奪ったものを返せ!!」


ノキアは会話を拒絶する。


【ラキエル?君は、彼女を知ってるんだ?はて?最近、彼女は何か拾ってきたかな?】


「何を分からねえ事をごちゃごちゃと...」


【まあ、良いか。"世界樹の枝"の気配を感じたけど、どうやら違うようだ。まあ、が倒された以上、ここに用も無いな。】


パチンと天人は指を鳴らすとダンジョンが異様な音を鳴らし始める。


【ここも直に崩れるよ。死にたくなければ早く逃げな。】


そう言うと天人は空の彼方へと消えて行った。


「待てえええぇ!逃げんなあああぁ!!」


「ノキア!今はそんな場合じゃないわ。さっさと脱出するよ!」


怒るノキアを宥めつつ、二人は全力で来た道を戻る。


そして、外へ出ると同時にアフトリのダンジョンは崩れ去った。



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人工ダンジョン =アフトリ= 入り口 ー あと

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ダンジョンの崩れたあとを見る二人。


少しの沈黙の後、シズはノキアに問う。


「アンタのそう言う姿、久しぶりに見たわ。」


「・・・・・・・。」


「私が言いたい事...分かるでしょ?」


シズの話にノキアはコクリと頷いた。


「そう...で?アレは何?アンタがずっと探していた天人そらびと?」


シズの問いに答えるようにノキアは口を開いた。


「ああ...アレは俺が探している奴の仲間だ。おそらくな。」


「ラキエルってやつ?何者なの?」


シズが尋ねる。


「ラキエル・・・俺の仲間たちを殺した天人。そして、仲間の内の一人を連れ去ったやつだ。」


「私らと会う以前の話ね?」


ノキアは頷いた後に説明を続ける。


師匠シズらと出会う前の俺は、とある施設で研究の為、仲間と共に居た。」


「研究?なんの?」


「さあな?以前チラッと聞こえたが、確か..."カミ"を越える為の研究だとかなんとか?」


シズは首を傾げる。


「紙を越える?紙って...あの紙?越えるって山とか場所の話?」


「知らん。とにかく、そのための研究だったらしい。で、仲間の内の一人...ナナミがその研究の成果を上げたんだ。」


「え!?ナナミちゃんが!?」


「あー、違う違う。お前の知ってるナナミじゃねえよ。73番ナナミ...別人の話だ。」

説明を続けるノキア。


「73番が出した成果で、研究は一気に進んだ。そして、あの日、俺らの施設は、ラキエルによって滅ぼされた。仲間と研究者は皆殺し、俺も死にかけた。薄れる意識の中で見たものがラキエルに連れていかれる73番の姿だった。」


「そう。その後、私たちにあったのね?」


「ああ、気づいた時には、俺は魔外域を彷徨っていた。…と、まあそんなとこだ。」


説明を終える頃、ノキアは落ち着きを取り戻していた。


「急いで"ジュギ"に戻るぞ。ナナミの話が気になる。」


二人はダンジョンを後に"ジュギ"へと向かった。




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ジュギ 

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一方、"ジュギ"の街に居るナナミは、ざわつく予感を押し殺しながら街の様子を見る。


二人がダンジョンへ行ってから5日が経っていた。


"ジュギ"の街は平和そのものである。


だが、一人ナナミだけその中に違和感を感じ取る。


僅かな機微だが、その者ナナミにとって、とても大きく、そして何よりも気持ち悪いと嫌悪する感覚だった。


空が突然に光り出す。


「何!?」


空中に浮かぶ謎の文字。

その文字を通り抜け翼の生えた首のない兵が一人、二人と次々に街の外へと降り立った。


街の鐘が鳴り響く。


「これって、ルッツの時と同じ...」

ナナミは冒険者ギルドに向かった。





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ジュギ  ー 冒険者ギルド ー

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ギルドに入ると、すれ違った冒険者たちが情報を共有し、武器を携え次々に街の外へと向かう。


"ジュギ"の街は大きく、ギルドに所属する冒険者の数も違っていた。


その数は約150人。


ギルドマスターの指揮の下、十数人のA級冒険者がB級やC級を統率する。


「お前ら!街の奴らの避難が終わるまで時間を稼ぐぞ!無理に倒す事はない。危なくなった時は下がって他の奴に任せろ!死ぬなよ?いいな?」


A級の一人が鼓舞し士気を上げる。


"おぉー!!!!!"


「行くぞ!」


その一言と共に冒険者達は街の外へと出て行った。


私は…どうすればいい?


今ここにノキアさん達は居ない。


私にできる事は...


⦅事が起きた時、今と同じ方法で僕を呼ぶと良い。でも連れてくることにしよう。⦆


ナナミの頭にマーリンの言葉がよぎる。


「そうだ!マーリンさんに!!」


妖精の羽粉フェアリーパウダーを使いマーリンに連絡を取る。


「マーリンさん!大変です!!"ジュギ"の街が・・・」


本格的に敵の軍勢の進行が始まる。


冒険者たちが街の外で防衛をするも、戦況は圧倒的に不利であった。


防衛にあたる冒険者は約100人。


それに対し敵の数は300に加え1体1体が魔法を行使できる存在であった。


魔法とはこの世界において、どこにでもあり気軽に使えるものではない。


魔族のような魔に特化した者や、亜人の一部が使える力である。

稀にその力が人に宿ることもあるが、魔法を使える冒険者などは圧倒的に数が少ない。


その力はどれも強力であり、種類によっては簡単に複数の敵を一気に殺せる程である。


「いいか?相手は魔法を使うことができる化物だ!多人数で1体を確実に仕留めて行け!!負傷した者は速やかに下がり治療を受けろ!!」


A級冒険者の指示の下で相手を的確に仕留めていく。


だが、数の力の前に冒険者たちは苦戦を強いられる。


300居た敵を240まで削る。

だが240に対し、冒険者の数は約40人まで減っていた。

そして、防衛していた冒険者の隙を突き敵の軍勢が街へと侵入した。


敵は、建物を破壊しながら街の中心へと向かう。


だが、そこへ...


「おやおや、これ以上の侵攻はよしたまえ!!」

聞き覚えのある声と共に、敵が目の前からことごとく消え去る。


そこには、マーリンともう一人の男の姿があった。

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