第10話
ノキア達は
ナナミはヘロヘロになりながら二人の後を追いかけるように歩く。
「ほら、頑張ってナナミちゃん。もう少ししたら休憩にしましょう。」
「お前、俺の時にはそんなこと言ってなかっただろう?」
「言うわけないでしょ?アンタとナナミちゃんじゃ、全然違うんだから。」
ノキアは足を止めナナミの様子を見た。
ゼェゼェと肩で息をするナナミを見るとノキアは溜め息を吐いた。
「ハァー...とりあえず、休憩だな。」
ノキア達は休めそうな場所を探し休憩を取った。
疲れているナナミを心配そうにシズは見る。
「ナナミちゃん、大丈夫?疲れたなら私が背負って行こうか?」
「い、いえ大丈夫です。すいません、迷惑をお掛けしてしまって...」
シズの話にナナミは謝る。
「そんな事は気にしなくていいの。ねぇ、ノキア。」
「ん?・・・ああ...」
ノキアはナナミから目を逸らすように周りを見た。
「・・・・。」
ナナミの表情が陰る。
休憩を終え再びノキア達は歩き出す。
ひたすらに歩き続け、その日の夜を迎えた。
パチパチと鳴る焚火を囲み、三人は食事を取る。
「はい、ナナミちゃん。」
シズはナナミに"パン"を渡した。
その"パン"はあまりに硬いことから石パンと称され、ナナミにとって苦手な物の一つであった。
「ぅ...あ、ありがとうございます。」
ナナミはシズに礼を言い"パン"を受け取った。
「・・・・・・。」
ナナミをチラリと見た後、ノキアは黙って"パン"を食べる。
「あれ...どうしたの?ナナミちゃん。食べないの?」
食事に手を付けてないことに気付き、シズはナナミに尋ねた。
「い、いえ...あの...」
スッとナナミの"パン"を取るノキア。
「アンタ、まだ食べるんなら、ナナミちゃんのじゃなくてコッチに・・・。」
「ちげぇよ。」
ブチブチブチ ー
ナナミの"パン"を千切り一口大にしていく。
「ほらよ。」
「あ、ありがとうございます。」
礼を言うナナミ。
それを見てシズは尋ねる。
「え?何?どういうこと?」
「コイツは"パン"も千切れないほど非力なんだよ。だから、そのまま渡された"パン"を千切ってやっただけだ。」
ノキアがシズの質問に答えた。
渡された"パン"を気まずそうにナナミは食べる。
食事を終え、焚火を眺める。
「なあ、ナナミ。」
不意にノキアが声を掛ける。
「はい、何ですか?ノキアさん」
「旅を続ける上でお前に大事な事を言っておく。」
ノキアの言葉を聞き、ナナミは真剣に聞こうと耳を傾けた。
「"我慢と遠慮はするな。"」
ノキアの言葉をナナミは聞き返す。
「"我慢と遠慮はするな。"...ですか?」
「ああ、そうだ。お前、昨日と今日ヘロヘロになりながら歩いていたろ?休憩したいとも聞いてないしな。」
「そう言えばそうね。」
黙って聞いていたシズも会話に参加する。
「いいか、ナナミ。一度旅に出ると次の町や村に着くまで食糧や水、道具の調達が難しくなる。更に体調などが崩れても治癒院や薬屋を頼ることもできない。だから、少しでも何か違和感を感じたら我慢せずに言ってほしい。後々取り返しがつかなくなる前にな。今回の休憩に関してもそうだ。疲れを感じたら、我慢するな。」
ノキアの話を聞きナナミは頷いた。
「それを踏まえた上で、聞くがナナミ。お前、俺に何か言いたいことがあるんじゃないか?」
「いえ、その...」
「ナナミちゃん...遠慮と我慢は禁止よ。」
シズの言葉に後押しされナナミはノキアに気になっていることを聞いてみる。
「あの...ノキアさん。私、"足手まとい"になってませんか?」
ナナミの問いにノキアは答えた。
「そうだな...まあ、大丈夫だ。今のところはな。さっきの事さえ守ってもらえば足手まといにはならんだろうよ。」
ノキアはそう言うとひとりで追加の薪を集めに二人の元を離れた。
「くくく...」
シズは何故か笑いを堪えている。
「シズさん?どうしたんですか?」
ナナミはシズに尋ねる。
「いや~、ナナミちゃん。大事にされてるなって思ってね。」
「どういう意味ですか。」
「まあ、以前のアイツとは違うって事よ。またいつか教えてあげる。」
そして夜が更ける。
ノキアが薪を持ってくるとシズが周囲を警戒しナナミは既に寝ていた。
「おかえり。」
シズがノキアに声を掛ける。
「おう、薪を集めてきた。ついでに軽く周囲もしらべたがな、獣の気配も無い。」
「ご苦労様。アンタ変わったよね。昔は夜だろうが気にせずに街に向かって進んでいたじゃん。それが今じゃナナミちゃんを気遣って...」
ナナミは昔のノキアについて話をした。
「昔っつても
「本当にそれだけ?」
ノキアはシズの疑問に少しの間沈黙する。
そして...
「似てんだよな。昔一緒だった奴に...そいつとナナミを重ねてるのかもな。当時の俺はただ上の命令に従うだけの化け物だったから...隣で誰が死のうが気にも留めずただ命を...って、何話してんだ俺は...」
ノキアは話を切り上げて夜の見張りを続けた。
「・・・・・。」
翌朝、ノキアは夜営の後始末を終えると早々に出発する。
「大丈夫か?ナナミ。」
「はい、大丈夫です。」
返事をするナナミの言葉は昨日までとは違っていた。
割り切れない気持ちを納得させようとする確かなもの感じた。
「あと6時間ほど歩けば小さな村があった筈だ。そこまでは頑張ってくれ。だが、無理はするな。疲れた時はちゃんと言えよ?」
ナナミはノキアの言葉に頷く。
-6時間後-
ノキア達は無事に村へと辿り着く。
「やっと、着いた〜…」
ナナミは村へ着いた安堵からその場に崩れ落ちる。
「お疲れ様、ナナミちゃん。」
「ほら、そんなとこにいると邪魔になんだろ。早くこっち来い。」
そう言ってノキアはナナミに手を差し伸べる。
「ああ、すいません!」
息が整ってきたからナナミはノキアに聞く。
「ノキアさん、ここはどう言った村なんですか?」
「確か、村の名前は"キダロ"とか言ったか?あとは分からん。何せ道具と食糧を買ってすぐに村を出たからな…」
ノキアはそう言ったあと、話題を切り替える。
「それよりナナミ。まず町や村に来た時にやるべき事がある。何か分かるか?」
「・・・何ですか?」
「それはねナナミちゃん…宿の確保と腹ごしらえだよ。」
二人はそう言うと打ち合わせでもしていたかのように無駄のない動きを見せる。
ノキアは宿を取りに、シズは飯屋を探すため村人から話を聞き始める。
傍から見ていたナナミは感心した。
二人はテキパキと動き回り、見る見るうちに宿と食事をする場所が決まっていく。
「これが冒険者なんですね!」
30分後ー
3人は村の食事処で食事をしていた。
「久しぶりのご飯だぁ!!」
久しぶりと言ってもたった3日しか経っていないうえに旅用の食事は食べていた。
だが、初めての体験をしたナナミはその有り難みを人一倍感じた。
「そうだな。ちゃんと食っておけよ?今度はいつ食える分からないからな。」
感動しているナナミにノキアは言った。
「はい!」
村で出された料理は燻製された肉や魚が多く口に入れる度、豊かな風味が広がる。
「美味しい!何これ!?口の中で香りがぶわぁーって...」
語彙がなくなるナナミ。
「たしか、燻製って言ったか?煙を使って香りを付けるんだったか?」
ノキアは店員に話を聞く。
「はい、村に昔からある製法で、なんでも東の方から伝わったんだとか。保存にも向いてるので良ければ旅の食糧にどうぞ。」
「あれ?ノキアさん、前に来た時は燻製した物は買わなかったんですか?」
「ああ、知らない物より知っている物を買って行ったからな。だが、こんなに美味い物ならあの時も買っておけば良かったな。」
「本当よね!こんなに美味しい物はここでしか買えないわよ。すいませ~ん、追加注文お願いね!!あ、支払いはよろしく!!」
シズはノキア達に構わずただひたすらに飯を食らい腹を満たし続けた。
「おい!!!少しは自重しろ!!!」
ノキアは銀貨5枚、大銅貨4枚を失った。(約54,000円)
食事を終えるとノキア達は宿に戻り就寝した。
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