第11話
翌日
ノキアはナナミとシズを呼び話し合いをする。
「さて、集まったな?とりあえずだが、今後の進路を話しておく。」
そう話すとノキアは地図を広げる。
「今いる村"キダロ"がここだ。そして俺たちの目的地はここ
「行き方は分かったけど、これだと時間が掛かるんじゃない?」
シズはノキアの説明で疑問に思う事を伝える。
「まあな。だが、一番安全な行き方だ。"
ナナミがノキアに尋ねる。
「ノキアさん...魔外域って何ですか?」
「ん?...ああ、お前は知らないのか。魔外域ってのは俺たちが居る大陸を囲んでいる外の世界のようなものだ。一言で言うと危険な場所だな。お前がイメージするなら、以前のスタンピードが10倍の規模で起こっている場所だな。」
ノキアの話を聞きナナミはザワッと身体を逆立てる。
「まあ、近づかなければなんてことは無いわ。安心して、ナナミちゃん。」
「でも、今、魔外域を渡るという言葉を聞いたのですが...」
「ああ、渡っても行けるって話だ。危険だから滅多にやる奴は居ないがな。話を戻すと、最初の方法だと最低2ヶ月ほどは掛かると予想している。まあ、急いでいるわけでもないからのんびり行こうぜ。もちろん、途中で抜けても構わんぞ?」
ノキアはチラリとシズを見た。
「何で私を見たの?お姉さんは抜けないわよ。ナナミちゃんの護衛って大切な役目があるし。」
「え?」
「え!?」
ナナミが聞き返した反応にシズは驚く。
「もしかして、私...シズさんの自由を縛ってしまってましたか?」
シズはナナミの言葉を慌てて訂正した。
「違う、違うわよ、ナナミちゃん。お姉さんがやりたいからやってるだけ。自由を縛ってるとかそういうのは関係ないわ。」
「そうだな。お前は自由奔放すぎるからな。むしろ、
ノキアは感心した目でナナミを見た。
「まあ、とにかく最初の予定で行くぞ。今日、食糧を補充して"レツィオ"の街へ向かう。辺境の
ノキアはナナミにそう説明すると食糧を買いに向かった。
ノキアが買い出しに出た後、ナナミはシズと共に村を歩く。
「あの...シズさん?私達は何をしてるんですか?」
「え?ノキアが食糧の買い出しをしてるでしょ?
私達は村をブラブラしてましょう。昼には出発すると思うし、"キダロ"を出たらまた5~7日は旅の生活に戻るからね。
今のうちに楽しんでおかないと。」
シズの話を聞いてナナミは思い出した。
またあの"石パン"の辛い日々が始まることを...
ナナミが村での心地よさと旅での辛さに葛藤していると声を掛けられる。
「お前ら、冒険者だよな?」
声を掛けてきた者は村の住人ではなく、シズ達と同じ冒険者であった。
「ん?ええ、そうだけど?」
「どこから来た?」
「辺境の
それを聞いた冒険者はシズ達に話をする。
「なら、悪い事は言わない。食糧を買い込んで"レツィオ"は通り過ぎる事だ。」
「どうしてですか?」
ナナミは理由を冒険者に尋ねた。
「"レツィオ"を
冒険者ギルドから討伐依頼が出されているが、腕に覚えのある冒険者もリスクが大きすぎて相手にしない。
その上、街にはドラゴンが報復に来るから防衛はボロボロだ。
悪い事は言わねえ、"レツィオ"を通り過ぎて
ナナミは冒険者に笑顔を見せ、礼を言う。
「ありがとうございます。話が聞けて良かったです。」
「お、おう。いいってことよ。それより、このあと一緒に…」
「じゃあ、私たちはこれで失礼するわ。」
ナナミとシズは足早にその場を去った。
ナナミちゃんの純粋な笑顔...危険ね。
私が注意して護らないと...
シズはそっと心に誓った。
シズたちが宿に戻るとノキアが買い出しから戻ってきていた。
「おかえりなさい、ノキアさん。」
「おう、どちらかと言うと俺がお前らに言うセリフだがな。」
三人が揃ったところでノキア達は宿を出る。
「ノキア、ちょっと話しておきたい情報があるんだけど…」
「ん?なんだ?」
「次の街の"レツィオ"なんだけどね、何やら厄介な事になっているらしいの。」
「どういう事だ?」
シズは村を散策中に出会った冒険者の話をする。
・・・・・・・
・・・・
・・
・
「・・・なるほどな。それは確かに厄介そうだ。だが、ドラゴン討伐が本当なら相当な金になりそうだな。
「まあ、アンタがそう言うなら止めはしないけど…いいの?もしかしたら、結構な足止めをくらうかもしれないけど?」
「急ぐ旅でも無いさ。
目的地が"レツィオ"に決まりノキア達は"キダロ"の村を出発した。
"レツィオ"に着いたのは7日後だった。
ーーーーーーー
ーレツィオー
ーーーーーーー
チャリーン ー
金が渡る音...
「入行を許可する。」
三人は"レツィオ"の街に入る。
街の様子は人で賑わっているわけでもなく、閑散としてる訳でもない。
ただ、人同士がお互いに一歩離れた距離感で過ごしているように見える。
「あの...」
ナナミが街の人に声を掛ける。
「・・・なんですか?」
「私たち、さっきこの街に来たばかりで...冒険者ギルドを探してるんです。何処にあるか知りませんか?」
もちろん三人はギルドの場所は把握している。
だが、街の様子を確かめる為に声を掛けてみた。
「ギルド・・・冒険者ギルドの事ね?ならあっちに行けば着けるわ...もういいかしら?」
街の人はあまり関わりたくない様子でギルドの場所を示してくれる。
「ありがとうございます。」
ナナミ達は礼を言うと速やかにその場から離れた。
「なるほどね。街の住人はドラゴンと領主に怯えている訳ね。」
シズは理解したように呟く。
「どういうことですか?」
ナナミがシズに尋ねる。
「街並みを見て...所どころボロボロの建物があるでしょう?
おそらくドラゴンにやられた跡よ。
おおかた、馬鹿な領主(息子)が手を出しちゃいけないドラゴンに手を出して報復されたってとこね。
そして、街の住人の様子...あれは監視を恐れてるような感じだったわ。
討伐依頼は出したけどそもそもの原因を作ってしまった領主(息子)の話が出回り悪評を立てれば捕らえられる...そんなとこでしょ。あの冒険者の話は事実だったってことね。」
「とりあえずギルドに向かうか。もっと詳しい話が聞けるかもしれない。」
ノキアの提案通り三人はギルドに向かった。
冒険者ギルドー
ギルドに入ると中は閑散としている。
大きな街のギルドとは思えないほどの閑散ぶりだ。
三人は受付にて職員に話を聞いた。
「随分と静かだな。何があったんだ?」
「い、いらっしゃいませ!!良かった。来てくれたんですね?」
ギルドの職員は目を滲ませノキア達を見た。
「どう言うことだ?」
ノキアの一言で何かを察し、職員は人違いだと気付く。
「あ...失礼致しました。」
「何かあったの?」
シズが職員に尋ねると事情を説明し始めた。
「この街の事はご存知ですか?」
「ええ、何となくだけれど...」
「ある事がきっかけでこの街はドラゴンに目を付けられてしまいました。討伐依頼を出していますが、なかなか事態の解決に至らず被害だけが増えていて...
それで王都のギルドにS級の冒険者を派遣してくれるよう頼んだのです。あなた方は見たことがない冒険者でしたので王都からのS級かと勘違いしてしまい...すいませんでした。」
どうやら思っていたより事態は深刻のようだ。
「S級が出てくるほどとは、領主の息子はどんなドラゴンに手を出してしまったんだ?」
ノキアが尋ねると職員は答えた。
「
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