第9話
意識が薄れゆくノキア。
『では...さようなら。』
ユルドが再び攻撃を放つ。
=
ガキン ー
ユルドの攻撃を弾き返しはするがノキアの身体は既にボロボロであった。
ここで...終わるのか...
・・・・・
・・・
・・
・
いや...
未だだ!!まだ何も成し遂げてない!!
こんなとこで終われねえ!!
倒れていたノキアは素早く立ち上がりユルドを蹴り飛ばした。
「こんなところで終われねえんだ!!」
ノキアは持っていたを割符を取り出し構える。
「解毒に少し掛かっちまったが、何とかなったな。」
『!?・・・何故、立ち上がれるのです!?瘴気に侵されれば人間は生きられないはずなのにどうして!!』
ユルドは目の前で起きた事を信じられず動揺している。
「わるいな、期待に沿えなくて。普通の人間じゃ無えんだわ!!」
ノキアはパキンと割符を割った。
ノキアの手に武器が形成される。
二刃 改:シズの二刃を元に造られた武器だが、二つの剣の柄から伸びた紐はノキアの短刀に繋がっていた。
『その武器はもう見ましたよ。』
そう言ってユルドが距離を詰める。
=
ガキン ー
ユルドの攻撃を弾き、カウンターで首に向かい双剣を振った。
それを読んでいたユルドは素早く距離を取る。
だが...
「逃がす訳無えだろ!!」
ノキアは片方の剣を手放しリーチを伸ばす。
紐で繋がった剣は大きく弧を描きユルド目掛けて飛んで行く。
『くっ!?』
回避する距離が足りずユルドは飛んでくる剣を片腕で受けた。
遠心力で剣は深々とユルドの腕に刺さる。
ノキアはもう一方の剣を強く引きユルドのバランスを崩した。
もう片方の剣もユルドに勢いよく投げ放つ。
二つの剣がユルドに刺さり、柄から伸びる紐が弓の弦のように張った。
その中心にあった短刀をユルドの心臓目掛け蹴り飛ばした。
短刀は矢の如くユルドの心臓を貫く。
『がああああああああああああああああああああああああああ』
ユルドの叫びが響き渡る。
『バカな...こんなはずでは...』
ユルドの身体は崩れ落ち、煙のように霧散する。
「何とか...勝てたな...」
ユルドが完全に消滅したことを確認するノキア。
魔物は全てシズが倒してくれた。
これで
「さすがに...つか...れ...」
安堵した瞬間ノキアは倒れ意識を失う。
次にノキアが目覚めた場所はベッドの上であった。
身体を起こし周りを確認する。
「ここは・・・?」
「お、やっと目を覚ましたか。バカ弟子よ。」
近くにいたシズが声を掛ける。
「シズっ、ここはどこだ?」
「ここはギルドの客室だよ。あの後、色々と大変だったんだからね。」
シズの話を聞くとユルドを倒した後、俺はその場に倒れていたそうだ。
シズは俺を回収してギルドまで戻って来たらしい。
ナナミは俺の姿を見て死んでしまったと泣き叫んでいたとか...勝手に殺すな!
とりあえず、マルクスが気を利かせギルドの客室を用意してくれた。
そこで3日程寝ていたというわけだ。
「そうか、世話を掛けたな。」
ノキアはシズに礼を言う。
「いや、いいって別に...それよりナナミちゃんに後で声掛けときなよ?アンタの事心配してたんだからね。」
「ああ、分かった。」
ノキアはシズの話に返事をした。
「さて、アンタが目覚めたならアタシは少し依頼を請けてくるよ。」
そうノキアに話すとシズは部屋を出た。
暫くして、身体が慣れてきた。
「~んっ...と。よし、そろそろ動いても問題無いだろう。」
ベッドから起き上がり部屋を出ようと扉の前へ向かう。
ガチャッ ー
扉を開け廊下に出ると七美が立っていた...いや、今、来たと言うべきか...
ナナミはノキアの姿を見て勢いよく突っ込んでくる。
「ノキアさん!!」
ナナミの頭がノキアの腹部に直撃する。
「バッヵ、おまっ・・・ゴフッ!?」
病み上がり相手に思いきり突っ込んできた。
危うく意識が飛びかけたじゃねえか!
だが、その文句をグッと堪えナナミに話しかけた。
「まあ、その...なんだ...言っただろ?勝てばいいだけの簡単な話だと。もうこれで大丈夫だよな?」
ナナミはノキアに笑顔を見せ返事する。
「はい!」
「ところでお前は何をしてたんだ?」
ノキアがナナミに尋ねた。
「はい、今はギルドでマルクスさん達のお手伝いをしていました。それで、シズさんがノキアさんが目覚めたと言っていたので今様子を見に来たところです。」
どうやらナナミはノキアが寝ていた3日間の間ギルドで復興の手伝いをしていたらしい。
スタンピードが終わり全てが解決したかと思いきやそうでは無かったのだ。
ノキアはナナミと共にマルクスへと会いに行く。
コンコンッ ー
「入れ。」
「失礼します。」
マルクスの部屋に入ると彼は机で大量の書類に睨みを利かせていた。
「おお、やっと起きたんじゃな。調子はどうじゃ?」
マルクスはノキアに向かい尋ねる。
「ああ、問題ない。部屋を使わせてくれてありがとう。」
「いや、気にするな。活躍した正当な報酬じゃ。主が居なければ町は壊されておったことだしのう。部屋の一室くらい安いものだ。」
マルクスはノキア達に話を続ける。
「さて、主らは確か南の
「ああ、そうだが...何か問題があるのか?」
マルクスの問いにノキアは訊き返す。
「いや、そうではない。単刀直入に言うと主らにはもう暫くこの町に留まってもらいたいのじゃ。」
マルクスはノキア達に説明をする。
「スタンピードが終わったのは主も知っておるじゃろ?だが...その、西の森の方へ向かう道が荒れてしまってギルドの依頼に支障をきたしておるのじゃ。今、シズ殿が依頼を請け西の道の整備を任せておるが、10日程時間が掛かると言われた。」
「それで、俺たちとシズに何の関係がある?」
「シズ殿は主らについて行くと言っておってのぅ...今、主らにこの町を出ていかれると困るんじゃ!頼む!」
スタンピードで町に被害は出なかった。
だが、防衛にあたっていた冒険者は違う。
ギルドに所属していた30~40人の冒険者は半分以下に減っており、新人も中堅もベテランも関係なく運が無い者が等しく死んでいった。
被害が無い災害など無いのだ。
家族を持つ者も居ただろう。大成してやろうと夢を持つ者も居たはずだ。
だが、そんな者達だけが生き残れる世界では無いのだ。
死は平等に彼らを連れ去った。
マルクスの説明を聞いて改めてナナミは諭される。
それを見たノキアはマルクスの話に頷いた。
「その代わり、俺にも依頼を回せ...路銀を貸せがにゃいかんからな。」
ノキアも町の依頼を請け復興を手伝った。
それが亡くなった者達への手向けだと信じて...
そして...10日後
「準備は良いか?ナナミ。」
ナナミに問いかけるノキア。
「はい、食糧と水、その他の道具とバッチリです。」
「ちょっとちょっと、私も準備バッチリよ?」
「お前には聞いてない。」
「酷い!?ナナミちゃん~、ノキアが冷たいよ~。」
「ノキアさん、シズさんを邪険にするのは可愛そうですよ。」
「ああ‶?...分かったよ。とにかく出発するぞ?」
三人は
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