第9話 復興の兆し

辺境の町ルッツにスタンピードが起こった。


どうやらギルドマスターの話では今回スタンピードを企てたのは魔族の仕業だったらしい。


トロル、コボルト、レッドウルフ、ワイバーン、レイスetc...

様々な魔物が徒党を組み辺境の町ルッツへと進行してくる。


本来、魔物が徒党を組むことなどないハズ...やはり魔族の仕業なのか...


魔物が800体に対してこちらの冒険者の数はせいぜい30~40人。

いや...逃げた冒険者も居たから実際はもっと少ない。


ここは辺境の町ルッツ...A級冒険者など居ない。良くてB級が関の山だ。


勝ち目などありはしない。


だが、何もせず勝手に滅びるなんて御免だ。


残った冒険者で魔物に抗う。


B級冒険者の指示に従い2人以上の組になり戦った。

しかし、所詮は付け焼刃。


数の力になど勝てはしないのだ。


次々と冒険者がやられていく。


見知った顔や見知らぬ顔が等しく死傷を負って逝った。


そんな中、突然...


魔物の群れに轟音が響いた。


何が起こった!?


大地が隆起し魔物を押しつぶす。


すると、町からの声が辺りに響いた。


"天災だ、巻き込まれるぞ!"


声に気を取られ目を離す。


"天災?一体何のことだ?"


再び魔物の群れを見る。


一瞬、目を離しただけ...

一瞬だけなのに再び目を向けた時、魔物は屍となり無造作に溢れていた。


冒険者たちが恐怖する。


もし、自分たちがあの場所で戦っていたらあの魔物たち同様に平等な"死"が訪れていただろう。


ほどなくして戦いは終わりスタンピードは終息した。


戦禍の痕は決して軽いものではない。


町は結界に守られ被害は無かった。


だが...


冒険者が死んだ。


顔見知りでよくつるむ奴だったのに...

冒険者が死んだ。


あいつには恋人が居たのに...

冒険者が死んだ。


アイツのことは知らない...だが、家族だろうか?沢山の人が泣いている。

冒険者ギルドに運び込まれた遺体の間を確認し見て回る。


助かったと喜ぶ者の少し先で、どうしてあなたがと嘆く者がいた。


だが、残った者は明日も生きて行かねばならないのだ。


命を投げ出すことは簡単だ。


だが、ここでソレをしてしまえば命を賭けた者たちはどう思うだろうか?


俺はこの町ルッツの冒険者だ。何があろうとここで明日も明後日も生きていく。


その為に...


「今日も依頼を頑張るか!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る