第13話
翌日
ノキア達はギーグに会いにギルドへとやって来た。
受付に行き職員にギーグを呼び出してもらう。
暫くすると…
「よう。アンタら未だ居たのか。こんな所は早めに去るのがお勧めだぜ。」
皮肉を利かせたギーグがやってくる。
「こっちもそうしたいんだが金がなくてな...何か仕事を紹介してくれないか?」
ノキアがギーグに頼むと奥から複数の依頼書を取ってくる。
「今お前らに紹介できるのはこんなもんだ。」
三人はギーグが持ってきた依頼書を見る。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
ランクF:街のゴミ拾い
ランクF:水路のドブさらい
ランクE:下水に住む害獣の駆除
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「報酬はそんなに大した事ないぞ。せいぜい小遣い稼ぎにしかならん。それでもいいか?」
三人は顔を見合わせ相談する。
「これは想像以上だな。」
「でも、ギーグさんもきっと大変な中で依頼を発注してるんだと思います。」
「まあ、何もないよりマシよね。」
相談した結果、三人(ノキアとシズ)は依頼を受けることにした。
シズは街のゴミ拾い、ノキアは水路のドブさらいと下水の害獣駆除を引き受ける。
合わせて銀貨1枚弱の仕事だ。
だが、無いよりはマシである。
ノキア達はギルドを出てそれぞれの依頼の場所へと向かった。
シズはナナミと共に街のゴミを拾い集める。
「やっぱり人が殆ど出歩いていませんね。お店に関しても、お客が来た時に対応していますし...」
「それだけあの領主の息子の影響があるんでしょ。みんな関わりたくないのよ。」
街を闊歩する住人は殆ど居ない。
外を出歩いているのは、シズ達のように依頼を受注してる者だけだ。
「あれも、あっちも、あちらの人も皆、冒険者なんですね。」
ギーグの出す依頼のおかげで街に住む冒険者は何とか仕事に在りつけていた。
全ての依頼をギーグ自らが出していた。
「
シズはゴミを拾いながらナナミと話した。
すると、
「ほぉ、今日も精が出るな。」
護衛を引き連れたカリオスが歩いてやってくる。
街の住人はそそくさと立ち去る者、その場で目を逸らす者、家に隠れる物まで居た。
「またゴミ拾いか。お前ら冒険者は余程ゴミが好きなように見えるな。そんな依頼よりもドラゴンの討伐の方が儲けも栄誉も大きいと言うのに...」
カリオスは目の前のシズ達に話しかけた。
「まあね、儲けは大きいけど、命とつり合う対価なんて無いでしょ?ゴミ拾いの方が遥かにマシよ。領主(代理)様もお金が手に入るからと自分の命を対価にしないでしょ?」
シズは領主の言葉に意見すると再びゴミを拾い始めた。
「ああ、そうだ。だがな、命の重みが平等とは限らない。私の命と貴様の命、そして...」
ジャキン ー
「そこの小娘の命...価値が違うのだよ。だからこそ、価値の低い命を使い交渉もできる。」
カリオスは私兵を使いナナミとシズに刃を向けた。
「シズさん!」
ナナミがシズに声を掛ける。
「何を...してるの?」
空気がピリ付く...
「お前は、あの"天災"だろう。S級の称号を辞退したと聞いていたがここで会えるとはな...私は運が良い。お前、ドラゴン討伐に興味は無いか?」
カリオスはシズに訊いてくる。
「それは、脅しって事かしら?」
「どう捉えてもらっても構わないが、答えによっては私兵が手元を狂わせてしまうかもしれない。」
シズはナナミを見る。
「・・・・・ハァ...分かったわ。ドラゴン討伐を請けるから武器を降ろして頂戴。それと一つだけ条件があるわ。」
「決まりだな。」
カリオスはシズとナナミを連れギルドへと向かった。
「ギーグ、ギーグは居るか?」
カリオスはギルドに入るなりギーグを呼び立てた。
「はいはい、何ですか?カリオス様。」
勘弁してくれと言う雰囲気でギーグはカリオスの元へ現れた。
「喜べ。今しがた
ギーグはシズを見て尋ねる。
「おい、本当か?」
「まあ、ちょっとした成り行きでね...」
シズは答える。
「ほら、さっさと依頼の手続きをしろ。」
「その前にさっきも言った通り条件を出すわ。
「ふん...それで
カリオスに言われシズは手続きを進めた。
「これでいいのよね?」
「シ、シズさん...」
「大丈夫よ。あの
シズはギーグに手紙を渡しナナミと共にノキアの帰りを待った。
だが...
「おい、いつになったら討伐に行くんだ!こうしてる間にも私の命が危険に晒されてるんだぞ!!」
カリオスはシズ達に因縁をつけてくる。
「うっさいわね。そもそもなんで
「卵銀・・・
「はぁ?誰よ?そんな出鱈目を言っているのは...そんな訳ないでしょ。」
カリオスの説明をシズは否定した。
やがて...
ノキアが戻ってくる。
「ん?お前ら揃って何やってるんだ?」
ノキアはシズに聞いた。
「遅い!ほら、さっさと依頼完了の手続きをしなさい。
「は?嘘だろ!?何でそんな話になっている?」
「色々あったのよ。道すがら話すわ。」
驚いているノキアにシズは答えた。
「それで、
シズはギーグに尋ねる。
「ん、ああ...
ギーグに見送られ三人は北へと発つ。
北の山へと向かう途中...
「おい、大丈夫なのか?何の準備もせずに来ただろう?」
ノキアは今ある不安を述べた。
「仕方ないのよ。準備できる時間も無かったんだから...ある物だけを活用していきましょう。」
シズはノキアに事情を説明する。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
「なるほどな。それでドラゴン討伐か。」
「すいません。私のせいで...」
ナナミはしょんぼりと気を落とす。
「仕方ないわ。あの状況じゃあね。」
「そうだな。依頼で報酬も手に入る。結果オーライだ。」
「ノキアさんとシズさんはそれでいいのですか?」
ナナミが二人に尋ねると二人は顔を見合わせて言った。
「「決めた選択を後悔するより、決まった結果の為に最善を尽くすだけ
続けてノキアはナナミに尋ねる。
「そもそも、お前は未来が見えるのか?」
「へ!?そんなの分かるわけないじゃないですか。」
ナナミはノキアの問いに答えた。
「"先の事なんか誰も分かるはずが無い。"...誰でも分かる単純なことだ。だが、それに気付いてない奴らが多いからな。それなら俺らは"決めた選択をより良くする為に行動する"んだ。」
ノキアはナナミにそう伝えるとシズとナナミの足を止めた。
陽も傾き夜が迫る。
「今日はここらで休むことにしよう。」
「はい、分かりました。」
「賛成~」
ノキア達は夜営をする為準備を始めた。
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