第14話

ノキア達は夜営をする為準備を始めた。


薪を拾い火をおこす。


辺りを警戒し、落ち着けると判断するとノキアは二人に話をする。


「さて、さっき言った通り...最善を尽くす為、今の状況を知っておきたい。戦うすべ、持っている食糧、その他の気になる事など話し合っておきたい。」


「異議なし。」


「はい。」


三人は話し合いを始めた。


「まずは食糧の話からだな。これに関しては把握しておかなければ最悪詰むからな。今ある分はどれぐらいだ?」

ノキアは二人に持っている食糧を聞く。


ゴソゴソとバッグの中を調べ二人はある物を提示した。


「私はこれです。」


「私はこれだけよ。」


ナナミが持っていたのは"石パン"ひとつ。


シズに至っては干し肉の欠片がほんの少しだけだった。


「ノキア、アンタはどうなの?」


シズに聞かれノキアは答える。


「俺は...すまん。持っていない。」

ノキアは二人に謝った。


それもそのはず、ノキアの請けた依頼は"水路のドブさらい"・"下水に住む害獣の駆除"...自分が水路や下水に入る可能性を考えて食糧を持ってこなかったのだ。

だが、言い訳を漏らすことなくノキアは謝る。


「まあ、いいわ。つまり今ある食糧はたった1食の一人分ってことね。水は...四湶しせんがあれば何とかなるけど...」


四湶しせん?」

ナナミが尋ねる。


「簡単に言うと私が使う武器ね。水が出せる槍のような物よ。ただ...」


シズは持っていた割符をノキアに見せる。


「残っている割符はこれ一枚。泗湶しせん割符これを使えば銀煌竜シルバードレイクの討伐が難しくなるわ。」


「うむ...とりあえず、今は温存しておいてくれ。何も手が無くなった時は頼む。」


ノキアの言葉にシズは頷いた。


「そう言えばシズさん。」


「ん?」


ナナミがシズに尋ねる。


「カリオスさんが言っていた銀煌竜シルバードレイクの卵で魔法の力が手に入るって話は何だったんですか?」


「ああ、あれはね...昔、北方の山に銀煌竜シルバードレイクが同じように産卵に来たことがあったの。でも、その銀煌竜シルバードレイクは衰弱していて卵を産んだら力尽きたんですって。そこに通り掛かった冒険者が空腹のあまり銀煌竜シルバードレイクの肉と卵を食べたそうなの。その後、その冒険者は魔法の力が発現したと噂になったそうよ。あのカリオスはその話を信じているんでしょうね。」


シズはナナミに語る。


「信じてる?えっと...その話は噓なんですか?」


「そんな食べるだけで魔法が使えるなら皆がもっと大規模に銀煌竜シルバードレイクを狩ってるわよ。S級に頼らなくてもA級冒険者が10~20人居れば狩れない事もないしね。」


ナナミは話を聞いて眉をしかめた。


「待ってください!?今、討伐に向かっているのは銀煌竜シルバードレイクですよね?A級冒険者20人も居ないのにどうやって討伐するんですか!?」


ノキアはナナミに確認する。


「なんだ?言ってなかったのか?師匠シズは元S級の冒険者だぞ。」


「えええ!!!」

驚くナナミに向かいシズは尋ねる。


「あれ?私、元S級って言ってなかった?」


「聞いてませんよ!!そんな凄い人と旅をしていたのですか!?もしかして、ノキアさんも...」


「俺は、ただのC級冒険者だぞ?」


「なんだ...そうですか。」


安心したようにホッと息を吐くナナミ。


「おい、何でそこで安心する?」


「いえ、ノキアさんは普通だったので親近感が...」


...ね?」


三人が話をするなか夜は更けていった。


翌日


「今日は、食料や水を探しつつ山へと向かうぞ。多少道を逸れようが食材を確保したい。」


ノキアが二人に語ると納得してくれた。


山へ向かう道の途中、遠くに見える小さな森。


ソレにいち早く気付いたのはナナミだった。


「ノキアさん、あれは...」


「森か?」


ノキアが目を凝らす中、シズが口を開き言った。


「そうね...森だわ。あそこなら何か食料がありそうよ。」


ノキア達は道を逸れ、森で食料を探す。


小さな森、そこには木の実や茸、獣も多く存在していた。


「二人は一通り食べれそうな物を回収しておいてくれ。俺は獣を狩ってくる。」


そう言ってノキアは獣を探して森を歩いた。


「至る所に獣はいるが、それより先に確かめたいことが・・・ここか。」


ノキアは獣らを追ってへと着いた。


「これで一安心ってとこだな。どうやら師匠シズには頼らなくても良さそうだ。」


ノキアが見つけた場所、それは森の中の"泉"であった。


獣が居た...それは、水が飲める場所が存在するという事だ。


ノキアは獣を一匹狩ったあと二人を呼び、水と食料を蓄えた。


森を後にし再び山へと向かう。



「今日はここまでだ。明日は山に入れるだろう。」


気付けば陽も傾き、辺りも暗くなり始める。


草木が生える場所も少なく石や岩が多い地形になり始めた。


レツィオを発って2日目の夜。


ノキア達は焚火を囲んで夜を過ごす。


「食料もある水もある。一時はどうなるかと思ったが何とかなったな。」

ノキアは二人に話しかける。


「そうね。じゃあ、早速アンタに活躍してもらうわ。」

そう言うとシズはノキアに焼いたキノコを片っ端から食べさせた。


「ちょ、まっ!?ムグ」


「シズさん、何をしてるんですか!?」


突然のシズの行動に困惑するナナミ。


ノキアを見ると顔が青ざめていく。


明らかに普通の茸ではない。


「これはダメね...こっちはどうかしら?」


次の茸をシズはノキアの口に放り込んだ。


今度は顔が紫がかり腹痛を訴える。


「腹が裂ける!!痛‶っでぇぇえぇ!?」


「これもダメか。こっちは・・・」


「止めてください!!シズさん!!」


ナナミがシズの腕を掴み止める。

「何をしているんですか!!」


ナナミは目に涙を浮かべシズを見た。


「な、ナナミちゃん!?どうしたの!?」


シズは慌ててナナミに尋ねる。


「何をしてるんですか...ノキアさん...苦しんでいるのに...」


「えっ!?まさか...ナナミちゃん、知らない??」


シズの言葉を理解していないナナミ。


シズはノキアを叩き起こす。


「ノキア!アンタまさか何も言って無いの?」

意識を戻したノキアをナナミは心配そうに見た。


「ん?どうしたんだ?」


「どうしたじゃないわよ。アンタ、ナナミちゃんに何も話していなかったの?」


シズの言動をノキアは聞き理解した。


「そう言えば...ナナミには話したことは無かったな。」


「どういうことですか?」


ナナミはノキアを見て尋ねる。


「俺はな、んだよ。」


ノキアはナナミにそう告げた。

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