第23話
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人工ダンジョン =アフトリ=・地下五階層
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地下5階層...この階層は不気味なほど静かな場所だ。
今、何も起こっていない内に戻るのが良いだろう。
ノキアはそう決めると少し離れたシズに呼びかける。
「おい、師匠。とりあえず一旦戻るぞ。こっちに来てくれ。」
「・・・・・・・。」
「おーい、聞こえないのか?」
「・・・・。」
反応が無い?
いや、聞こえているはずだ。
ノキアはシズの様子を見る。
すると、先ほどよりも酷い顔色でこちらを見ていた。
一歩ノキアが近づこうとすると、シズは一歩後ずさる。
「来ないで...ください。」
シズはノキアにそう伝えるが、それをノキアは否定する。
「おい、これ以上何か起こる前に戻らねえといけねえんだ。ふざけてる暇はねえんだよ。」
だが、シズの意見は変わらない。
このままじゃ埒があかねえ。
ノキアは素早くシズに近づき気絶させる。
そして、シズを抱え地上を目指すことにした。
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人工ダンジョン =アフトリ=・地下四階層
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先ほどと同じ酷い天候、泥水が流れ少し先の様子さえ分からない。
木々は薙ぎ風が吹き荒れている。
「ここは変わらずだな。」
すると...
後ろに気配を感じた。
ノキアは咄嗟に距離を取る。
そこに居たのは、ハイトロルと言う魔物だった。
「な!?さっきまでは気配すらなかったのに...」
視界が悪く分かりづらい為、気付くのが遅れる。
とにかく、逃げる。
それが、今の最善だった。
幸いハイトロルは動きが鈍い魔物だったため助かった。
だが、行きとは違い明らかに魔物に襲われるようになっていた。
水の中から襲いかかる
少しでも早く3階層へ。
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人工ダンジョン =アフトリ=・地下三階層
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ようやく荒野地帯に戻ってきた。
ここも油断はできないが視界が確保できるから地下4階層よりは
マシだ。
遠くの方に"アシッドヒドラ"の巨体が見える。
だが、アイツは縄張りがはっきりしてる為、こちらから向かって行かない限りは大丈夫だ。
そしてノキアは一気に地下2階層、地下1階層を駆け抜けた。
地上にて、
気付けば"ジュギ"を発ってから3日が経過していた。
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ジュギ ー 宿 ー
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「おかえりなさい、ノキアさん。」
"ジュギ"に戻るとナナミがノキア達を迎えた。
「ノキアさん達が戻ってきたという事はアフトリのダンジョンを攻略したのですね?」
ナナミは嬉しそうにノキアに尋ねるが...
「いや、問題が起きてな...途中で戻ってきた。とりあえずコイツを部屋で休ませる。」
ノキアは抱えたシズを見てナナミに話す。
「シズさん!?どうしたんですか!?」
「俺にも何が何だか...」
二人は宿の部屋へ行きシズをベッドに寝せた。
「何があったんですか?」
ナナミがノキアに聞くとノキアは今までの事を説明し始める。
アフトリで出会った先遣隊...
地下3階層の魔物...
地下4階層のヘビ型の魔物...
地下5階層の不気味なほど静かな草原。
そして、怯え始めたシズ。
「とにかく、現状を報告してこねえと...ナナミはこのまま
「はい。」
ノキアはギルドに現状の報告を伝えに行く。
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冒険者ギルド-
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ノキアは受付でギルドマスターを呼ぶよう職員に頼んだ。
「おい、悪いがギルドマスターを呼んでくれ。受けた依頼の報告がしたい。」
「かしこ...かし...かしこまりました。す、すぐにお取次ぎ致します。」
そう言うと職員はギルドマスターを呼びに奥へと消えて行った。
ノキアは残っていた職員に尋ねる。
「なあ?今俺の対応をした奴って...」
「ぷふっ。」
職員が笑いを堪えノキアに話す。
「ええ、B級冒険者のべラン様です。ノキア様たちとの問題の後、アトリ様に罰を与えられ、今はギルド職員の見習いをしております。ちなみにB級からC級に降格したそうですよ。」
どうやら相当絞られたらしい。
そんな事を話しているとギルドマスターのアトリが来る。
「君は...ノキアだったね。天災の弟子の...」
「現状の報告に来た。それと問題も起こってな。」
ノキアの言葉を聞くとアトリは自室へとノキアを連れて行った。
「それじゃあ、聞かせて。」
アトリに報告を始める。
「まず俺とシズは地下3階層まで行き魔物を倒した。ジャンヌから確認した"ワイバーン
「問題?」
「ああ、
「原因は分かっているの?」
ノキアは首を振り説明を続ける。
「いや、分からねえ。とにかくこのままの調査は続行不可と判断してアイツを連れて戻ってきた。今は宿で休ませている。」
「そう。分かったわ。とりあえず、何か分かったら報告して頂戴。いいわね?」
ノキアは報告を終え宿へと戻る。
部屋の外にはナナミが居た。
「あ、おかえりなさい。ノキアさん。」
ナナミはノキアに気付くと近寄りシズの様子を伝えてくる。
「あのあとシズさんが目を覚ましました。ですが、私の姿を見るなり怯えて...」
「そうか...お前もダメだったか。」
「シズさん...一体どうしてしまったのでしょうか?」
顔を俯けるナナミ。
私にできることは何も無いの?
ナナミは自分に問いかける。
すると...
自分の中に何か別の気配の存在を感じる。
何?...今の感覚は?
ナナミは集中しその感覚に触れる。
ドクン ー
脈打つ鼓動を感じた。
ナナミのモノではない。
だが、ナナミの中に確かにある気配。
"ド...ク...血に..."
「・・・ミ?ナ・・ミ?ナナミ!」
ボーっとしていたナナミにノキアは声を掛けた。
「えっ?あ、ノキアさん?」
「大丈夫か?」
「え、はい。あのノキアさん。シズさんのあの状態はもしかして何か毒の様なモノを受けているのでは?」
ナナミは突然に何かが分かったような様子でノキアに伝える。
「毒?何でそう思うんだ?」
「いえ、その...頭に浮かんできて...」
「毒か...」
ノキアは怯えたシズを連れ出し、街の治癒院へと向かう。
「治癒院...薬屋ではないのですか?」
ナナミがノキアに尋ねる。
すると
「今回、アイツが受けた毒が分からない。判断ができない以上、下手な薬は逆効果だ。なら、魔法で毒を取り除く方が良い。」
解毒を行うとシズの様子が落ち着きを取り戻した。
ナナミの言う通りシズは毒の影響を受けていた。
「良く分かったな。何で、毒だと分かった?」
ノキアはナナミに尋ねるが...
「いえ、ただ思いついたとしか・・・」
「・・・そうか。」
ナナミの反応を怪訝そうにノキアは見た。
ナナミの様子...何も無ければいいが・・・
そう思いながらもノキアは、ナナミとシズと共に宿へと戻っていった。
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誰も知らない彼方の場所でその者は声を上げる。
〘・・・ミツケタ。〙
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その日、ナナミは"ジュギ"が滅びる夢を見た。
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