第二章13 『課外授業開始! ドラゴンの卵を守れ』
いまは魔法が使えるだけで充分だ。贅沢な暮らしをしたい訳じゃないし、必要最低限の収入があれば問題ないとヒロアキは考えている。
先生が話した通り、魔法の腕を競う大会とやらが近々開催されるらしい。その大会に優秀な魔法使いの生徒を代表として何名か出場させるそうだ。
「選手としての素質を試すための訓練。課外授業の内容と詳細について話し合っていこうと思いまーす」
今日はヒロアキの入学初期に来ていた担任の男性教諭が欠席しているということで女性のアンリエッタ先生が任される事となった。
ハイテンションで言いながらアンリエッタが手を挙げる。初対面したときは、大人のクールビューティ系な性格の先生かと思ったのだが以外とノリが良い。
俺は、あまり興味が無かったので適当に聞き流していた。
「先生。課外授業って具体的には何をするんですか?」
「うふふ、実は学院長から直々に依頼を託されているの。クラスのみんなには今からその
その質問待ってましたと言わんばかりな顔でアンリエッタ先生は得意げに答えた。
授業なのか任務の依頼なのかハッキリしてほしいところではあるが……。ややこしいのでロイド学院長から預かった「任務」の名称にしておこう。
「やれやれ、今回もヤバい輩に絡まれたり大変なことにならなければいいが……」
内容についてはこうだ。
二人一組のチームを組んで指定された場所へ向かう。お題をこなしつつ、それをクリアして戻ってきたチームが合格となる。密林の奥地に存在する「ドラゴンの卵を入手せよ」が今回の課外授業のお題ってわけだ。
教科書の記載によると卵を温める習性があるらしい。つまり、このドラゴンの卵が孵化するまでに何としてでも手に入れなければならないのだ。しかし、制限時間もあるので急ぐ必要があるだろう。
ドラゴンといえば、草原にて敵に襲われた際に助けてもらったことがある。今回は恩を返す、いい機会かもしれない。ヒロアキはそう考えながら、一緒に組んでくれそうな相手を探した。
「あれー。ヒロアキくんじゃん! あいて探すのメンドイしぃ、あたしとチームを組まない?」
派手なネイルを付けたギャルの名前はローリエ。
髪は茶髪で短いツインテールをしており、その大きな胸を強調するかのような露出の多い服装をしている。背は若干低く顔も幼い感じがするが同い年だというのだから驚きである。性格も見た目通り明るく人懐っこい感じなので誰からも好かれている人物。
「良いよ。よろしく頼む」
「嬉しい。やったー!」
正直、大会とやらに参加するのに抵抗があったのだが、魔王ふっかつ阻止に力をつけなくてはと考えていたヒロアキは二つ返事で了承した。あのギャル娘のローリエに俺の秘密を握られているからだ。
「みんな。組んでくれる相手は見つかりましたか?」
先生が終わりを知らせるように軽く手を叩く。それを合図に全員がそれぞれ自分の席に戻り、授業を受ける準備を始めた。
逆にヒロアキの方もローリエの秘密を握っている。それは『ドラゴンが人の姿に擬態して日常に溶け込み、生活している』という。ローリエの正体はドラゴンらしい。彼女の秘密を握れたのはラッキーだった。
もし、仮にこちらを裏切る事があれば
「――っということで内容は把握出来たかな? 生徒のみんなには密林へ捜索に行ってもらい、ドラゴンの卵を入手してきてもらいます」
「任務中は他の授業は一時中断ということでしょうか?」
「良い質問ですね! はい。確定で、そうなりますねー。ちなみに出発は明日の早朝からですよ」
本来、あした予定していた授業がすべて潰れたことにより教室内の全員が大喜び。アンリエッタ先生はくるっと半回転にターンをしてから嬉しそうに微笑むと説明を続け、
「授業は一日で終わる予定ですが、密林の奥にあるドラゴンの住処まで行って卵を回収するまでに何日かかるか分かりません。……で・す・ので食料や水など必要最低限の物は各自持参するようにしてくださいね!」
説明が終わると同時に終業の鐘がなった「また明日」どうやら今日の授業はここまでのようだ。ヒロアキは帰り支度を済ませて教室を出た。
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