第一章1 『エリクト王国』



 異世界に転生され、召喚された少年ヒロアキは途方に暮れていた。


「――これは、つまりアレか異世界に召喚された。ということらしい」


 ヒロアキの目の前には元の世界にいた人間とは違う見た目や格好をした人々がいた。


 青髪や金髪、ローブや鎧を身に纏っている人。中には漫画や小説にしか見たことがない、尻尾の生えた獣人や妖精がお店で果物を買っているのが見えた。


 そのファンタジーな世界観にヒロアキは呆気に取られている。


 しかし、突然の出来事にヒロアキ少年にも状況が整理できておらず、自身のステータスを確認してみることにした。


 ヒロアキのステータスは以下となっている。

------

名前:ミアケ・ヒロアキ

種族:人間

職業:??? Lv1

状態:良

HP:30/30

MP:0/0

攻撃:10

防御:7

そうび:布で出来た服



 確認してみると使用している通貨も違っていた。頭に猫の耳がついている者や亜人、リザードマン。中には変わらない見た目の人間もいて、


 それぞれが助け合い共存している世界のようだった。


「どこかの王国みたいだけど、ここがどういった場所なのか知る必要があるな」


 誰が何のために何の目的で自分を召喚したのか、元にいた世界に帰る方法もわからない。


 右も左も分からず目の前にうつったものを観察するように、ヒロアキは街の中を歩き回る。


 建物やそこにいる人々を見ながら通路を歩いていると、鎧を着た人とドワーフ族の男が喫茶店で話しをしているのが聞こえる。


 少し離れた壁の影から様子を伺うようにして、聞こえてきた話に耳を傾けた。


 ――聞こえた会話によるとここは、『エリクト王国』って名前の場所でさまざまな種族の者が住んでいる場所のようだ。そして各国には国王様がいるらしい……まさにRPGゲームのスタート地点のようで、


「いったいどうなってやがんだよ。唐突に転移されたからわけがわからねぇ……脳みそがバグるぜ」


 元にいた世界では学校に行って授業を受けたり、帰宅してから友達とゲームをしたりして楽しかった。お腹が空いたら両親が用意してくれた夕飯を食べて、お風呂に入って。ふかふかの布団寝て、また学校へ。


 そんな楽しい生活の繰り返しが、あたりまえに続いていく。


 ――と、そう思っていた。



「本当にこれからどうやって生きていけばいい?」


 ゲームの舞台によくあるファンタジーみたいな場所へ来てしまった。そうなってしまったのだから項垂れたり、考えていても仕方がない。


 これはゲームじゃない……現実に起こってしまったことだ、と自分へ言い聞かせる。


「しっかりしろ俺。これはゲームじゃないんだ、現実を受け入れて切り替えていくしかないんだ」


 普通の人なら、やったー異世界に来れて第二の人生を謳歌できるぜ〜〜なんて喜ぶのかもしれないが……ヒロアキは一刻も早く日本へ帰りたいと考える。


 この国の王様に興味があった。

 もしかすると手掛かりを知っていて元の世界に戻る方法があるかもしれないと思ったからだ。


 それにこの異世界を生き抜くには強くならなければいけない。


「ま、頑張って足掻いてみますかね」




 まずは冒険者登録をしてお金を稼がないといけないと、この世界について情報を得るために大勢の人が集まる冒険者ギルドなる建物を探して周ることにした。






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