第一章10 『任された依頼。鉱石を入手せよ』
ご要望にお答えして、奴隷少女の願いを叶えてあげることにしたヒロアキは冒険者ギルドにてリーフィアの登録の手続きをしてもらうことにした。
物体を透明化させる魔法を鎖に使用している為、リーフィアが奴隷であるということは周囲の客達にバレてはいない。
「すんません。半獣の娘なんですが冒険者の登録って出来ます?」
「あなたはこの間の……ミアケ・ヒロアキさん。――はい、可能でございます。少々お待ちください」
受付嬢に事情を話す。それを聞いた彼女は快く登録手続きを引き受けてくれたので、俺達はカウンター席へ移動するとリーフィアの冒険者プレートを発行してもらうことにした。
緊張しているのか、リーフィアはヒロアキの服の裾を掴みながら不安げな表情を浮かべている。そんな彼女の頭を優しく撫でてやると、少しだが安心したようだ。
「大丈夫だ。リーフィア。何もされないよ」
「……ごしゅじん様」
三十分後、受付嬢からプレートが手渡された。
「やったな!リーフィア。これで晴れて冒険者の仲間入りだぞ」
「はい!」
リーフィアは満面の笑みで答えると、ヒロアキへ向かって抱きついてきた。どうやらすごく嬉しかったみたいだ。……喜んでくれて良かった。
「あの~イチャイチャしているところ悪いんだけど」
一人の冒険者が俺達に声をかけてきた。
冒険者ギルドへ用があってやって来たというメリアに遭遇する。
「ごしゅじん様、この方は」
「彼女はメリア。ドラグニア王国で冒険者をしている魔法使いで、この人も俺を助けてくれた一人だ」
「ごしゅじん様、この方は」
「彼女はメリア。ドラグニア王国で冒険者をしている魔法使いで、この人も俺を助けてくれた一人だ」
「よろしく。レイナからある程度の事情は聞いているわ。まさか、小さな奴隷の女の子に手を出す人だったなんて……。初めから貴方の本性を知っていたら、冒険者パーティーに誘ったりしなかったのに」
呆れたような軽蔑の視線をヒロアキに向けると、ため息混じりに呟いた。そして彼女はリーフィアの方へ視線を移すと優しい笑みを浮かべ、手を差し伸べてきたので握手を交わすことにしたらしい。
「ご、誤解だ! 誤解。俺にそんな趣味はねぇよ」
慌てて否定するが、メリアはジト目でヒロアキを見やり、
「……冗談よ。遠くて聴こえなかったのかしら。言ったでしょう「事情は聞いてる」って」
「からかうなよ。まったく、びっくりするだろう」
「……大陸にある他の王国ではどうか知らないわ。けれど、奴隷を連れているのはこの国じゃ重罪に等しい行為よ。昨今、法律の穴を突いて闇市で取引が横行していてね。身元がない奴隷を使って犯罪に利用するケースが増えているわ」
「つまり、奴隷は高値で裏取引するだけの価値のある素材って事だ」
「……あなたは、そういう輩とは違うみたいだから心配する必要はなさそうね。何にせよ、周りに気を付けなさい。その子を狙う、人さらいが現れるかもしれないわ」
「ふぅ、疑われたと思った」
安堵の息をヒロアキは吐くと、それに釣られてリーフィアも微笑んだ。その表情を見て俺も自然と笑みがこぼれる。
「……ギルドで騒ぎを起こしたルーキーランクの冒険者がいたって噂で持ち切りよ。それって、あなたのことでしょ?」
双剣のなんとかって大男を負かしたあの一件。……仕方ないか。どうやら俺の悪評が広まっているらしい。
「で、何か用があって来たんだろ」
話を逸らすためにヒロアキは話題を変えた。魔法使いのメリアは頷くと、
「あなたの実力を試す為にクエストを持ってきたわ」
「ご依頼ですか? 良かったですね。ごしゅじん様!」
リーフィアは目を輝かせながら俺を見上げると、ぴょこぴょこと嬉しそうに尻尾と耳を動かしている。
「まだ、俺のことを疑っているみたいだな。そんなに信用ならないか」
「……当たり前でしょう。討伐クエスト以来、レイナは協力してくれたあなたを気に入っているみたいだけど、私は彼女のようにはいかないわ。あなたのこと何も知らないもの、信用できない」
睨みながら答える。どうやら彼女は未だに俺を疑っているらしい。無理もないか、
「――わかった。そのクエストを受けよう」
「……ドラグニア王国の東に位置する渓谷に行って道具の生成に使う素材を採取してきてちょうだい。武器屋の店主からの依頼よ」
説明によると、渓谷にある「パワーストーン」っていう鉱石を採取する事。
そのパワーストーンというのは武器や防具の素材の一部に使われるモノで、武器屋の在庫がなくなって困っているらしい。
「……で、今のあなたにはランクが低いから採取依頼しか受けられないわ」
「なるほど」
冒険者ギルドに登録したばかりだからな。今のヒロアキでは受けられるクエストは限られている。
まぁ、上を目指す為だ……受けてみる価値はあるだろう。メリアからクエストの内容を聞き出すと、掲示板に貼っていた一枚の依頼書を手に取るのだった。
「今度も、あなたの監視役として私が同行させてもらう。最近、クエスト報酬を持ち逃げされる被害が多発しているの……特に初心者の人間からね」
「俺はそんなあくどいことしねぇよ」
「それはどうかしら、まだわからないわ」
「――依頼書の内容はっと、なになに「拝啓、冒険者様。クエストを引き受けてくださることに感謝いたします。さっそくですが、指示された場所でアイテムを獲得してきてほしいのです。諸事情で私は来れない為、代理の冒険者を雇って手配したのでその方へお願い致します」だってさ」
「きっと、代理はメリアさんのことですね!」
「……クエストの差出人の名前は『アリーシャ』その人からヒロアキに頼んできてってお願いされたのよ」
「それってメリアの知り合いなのか?」
「ええ、魔法学校時代の同級生だった人。……今は独立して、王都で防具や武器のお店を開いているわ」
「ドラグニアに魔法を学ぶ為の学校なんてあるのかぁ。機会があれば、今度立ち寄って見てみたいぜ」
道具の生成に必要な素材を入手する為、ドラグニア王国を出て草原へ。それから指定された場所へと向かった。場所は東にある渓谷地帯だ。依頼主からの指示によれば渓谷の奥地の先にその鉱石が存在するらしい。
道中では危険が潜んでいるかもしれないとメリアから警告を受けたので警戒しつつ、行く手を阻むモンスターの群れを倒しながら進むことにした。
「――もうすぐで採掘場の近くよ」
「ごしゅじん様、頑張って! せっかくの依頼なんですから失敗するわけにはいきません」
「女性陣はスタミナが有り余ってんのか。……休憩なしで何時間歩いたよ? 俺はもうクタクタだ」
疲れた素振りを一切見せることなく、リーフィアは俺の手を引いて元気に歩いている。正式な冒険者になった事で体力が付いたのだろう。
少しは休ませてくれよ。異世界転生されてからというものの、息つく間もなくデケェ出来事が連続して舞い込んで疲れが溜まっているというのに……やれやれだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
渓谷に到着した一行は目的の品物を手に入れる為に探索を開始したのだが、ヒロアキ達の行く手を阻むかのように巨大な岩が道を塞いでいた。
「なんだ、この岩は!? パワーストーンが採れる場所まで続いてんのか」
「……困ったわね。迂回して目的地に向かう手もあるけど、その分モンスターと遭遇するリスクが高まるわよ」
「どうすんだよ、打つ手はあるのか」
「地図で確認したけど、パワーストーンが採れる場所まで道が続いているのは確実よ。……通るには、この岩を破壊するしかないわね」
「なら、破壊しようぜ!このままだと日が暮れちまうからな」
「……急かさないで、その為に付いてきたのよ。初心者に言われなくてもわかってるわ。危ないから下がってなさい」
「一言多いよな。どいてって言えばいいのに、素直じゃねぇな。メリアは」
「ここは下がりましょう。ごしゅじん様。魔法使いのメリアさんにお任せした方が宜しいかと……」
自信に満ちた表情をメリアは浮かべ、俺の前に立つと、岩に向かって手をかざす。
「――『エターナルバースト』っ!!」
目を覆うほどの閃光が走った。
メリアの杖の先から魔力を圧縮した光線のようなものを放出する!
ビームは岩に直撃すると、爆音を轟かせて大爆発を引き起こした。
俺達は爆風で吹き飛ばされないようにその場に屈み込んだ。目の前の岩は完全に破壊されている。凄まじい破壊力だな……さすがベテラン魔法使いだ。
「マジかよ。……あの大きな岩の塊を一撃で吹っ飛ばしやがった……」
ヒロアキは目を輝かせながらメリアを見つめていたが、その隣にいるリーフィアは少し引きつった表情を浮かべているように見える。
その爆発に巻き込まれた岩は粉々に砕け散り、道を塞いでいた障害物は完全に消え去った。
俺はメリアの強さに愕然とした。あの一撃で巨大な岩を破壊するとは……ドラグニアの魔術師は化け物か!?
無事に目的地へ到着することが出来た。そこには確かにパワーストーンらしき鉱石が存在していたのだ。
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