第13話 黒の秘密
『クソが…………』
フラワーに一撃で吹き飛ばされたディザイナーズは悪態をつきながら立ち上がろうとしていた。数秒前まで圧倒的だったはずの戦力差を縮められた事に加え、倒れている相手に追撃してこない甘さにも苛立っていた。
『調子に……のってんじゃ………』
『寝てろ』
全身ひび割れながらも立ち上がったその時、冷淡な声と共にディザイナーズに雷が落ちた。
『ガッ……ハッ…………』
再びディザイナーズが倒れ、その後方に黒いドレス姿のレイヴンが降り立った。
「え……レイヴン!?」
『…………フラワーか』
互いに姿が変わったことに驚くフラワーとレイヴン。すると地に伏せたディザイナーズの岩の外皮がボロボロと崩れ始め、崩れた箇所から膨大な魔力が溢れだそうとしていた。
『調子に乗りやがって…………テメエらふたりまとめて……ッ!』
ディザイナーズの動きにフラワーは構えをとり、レイヴンは追撃を放とうと魔力を込めた。だがその時…
『ブッ殺し―――』
ディザイナーズの叫びは彼の姿と共に一瞬で消え、綺麗さっぱり跡形もなく消滅したのだった。まるで瞬間移動でもしたかのように。
『………………』
「一体………っあ!アンバー!!!」
レイヴンはその光景を見て何かを考え、フラワーはすぐさま仲間の元へと向かった。
「アンバー……今元気にしてあげるからっ…!」
アンバーに必死になって回復魔法をかけるフラワー。そんな中スカイは自力で立ち上がると、レイヴンに声をかけた。
「その姿………どういうことなの?」
『さぁ。俺にも分からねぇ』
「え…………」
レイヴンの返事にスカイは目を丸くした。しかしレイヴンはいつも通り冷静な顔で何かを考え続けていた。
「あ、あの……レイヴン?貴方ってそんな喋り方だったっ………け?」
『喋り方?別にいつもと変わってねぇ………ん?』
確かに女性の声なのだが、明らかに喋り方が違う。少し前まで強かな女性のようだったのに、今ではガサツな男のような喋り方だった。
『……………ごっ…ごめんあそばせ!私急用を思い出しましたので!お大事に!!』
「ちょっ……!?」
レイヴンは急に焦りだし、意味不明な喋り方になって今までより数倍もの速さでその場から去っていった。
「…………不思議な人ね」
「っ!アンバー!良かったぁ…………」
「……無事に終わったようですね」
「うん!勝ったよ!」
スカイは様子がおかしかったレイヴンについて深く考えることはなく、目を覚ましたアンバーの元へと向かうことにしたのだった。
――――――
戦いの場から離れ、急いで部屋に戻った。その瞬間に変身は切れ、元の姿へと戻ってしまった。ベッドの上にはデナが当たり前かのようにちょこんと座っていた。
『ギリギリセーフだね』
「テメエ……ふざけんなよデナ………」
デナに悪態をつきつつ、俺は床に座り込んだ。どっと疲れた。戦いもそうだし今の一件もそうだ。
ついさっきスカイに喋り方を指摘され自動翻訳が切れていたことに気づいた瞬間、脳内にデナの声が聞こえてきたのだ。
【時間切れだ。変身が解けるよ】
(……っ!?時間とかあんのか!?てかお前今までどこに――)
【10、9、】
(おいおい待て待て待て!!!)
意味深なカウントダウンを始められ、男だとバレるわけにはいかないという一心で全速力を出したというわけだ。
「…おいデナ。色々と聞きたいことがある」
『…………答えよう』
一段落ついた後、デナにいくつかの質問をすることにした。誤魔化されるかと思いきやデナはすんなりとこれを受けた。
「まず1つ。何してた」
『ここにいた。でも魔法でずっと見てたよ』
「だったらなんで何も教えてくれなかった?」
『……それは君の新しい力に関係する』
「というと?」
食い気味に急かす。するとデナは淡々とした口調で語り始めた。
『ピンチを乗り越えた先、自身の想いの先で魔法少女は新たな力を手に入れることが出来る。これからの戦いにおいても必要だと思ってね』
「……なんだよこれからの戦いって」
相変わらずデナの話は聞けば聞くだけ謎が増える。隠してることだらけじゃねぇか。
『実際に対峙しただろ。あの新手のデザイアンに。比べ物にならないほどの知恵と力ををつけ、前までの君と互角以上だ。だから君達には自力で覚醒してもらう必要があった。余計な情報は出さず、己の力でピンチを乗り越えてもらおうとね。すまなかった』
「………まぁいい。じゃあ2つ目だ」
怪しい話だらけだが一旦流す。そして俺は次に気になっていた疑問をぶつけることにした。
「あのスライムみたいなデザイアン。何だと思う?」
『……何とは?』
「アレはやけに俺の特性を理解してた。前にデザイアンは欲望を元にしているって言ったよな。今までは暴れるだけだったのに、アレは知性があった。『俺を足止めしよう』っていう作戦の元に動いてた。あのデガブツの口振りからしてもそれは確実だ」
『不思議なこともあるものだな』
「…………あんま俺を舐めるなよ」
床から立ち上がり、ベッドの上のデナを見下して威圧する。そんなもんで誤魔化せると思ってんのか。
「洗いざらい吐いてもらおうか。何を企んでやがる」
『……知らない方が楽かと思ったのだが、仕方ない』
デナはようやく観念したのか、心底めんどくさそうに語り始めた。
『デザイアンが欲望を元にしているというのは本当だ。だがその欲望を解放させている奴らがいる。それがディザイナーズ。悪の組織ってところだね』
「……つまり?」
『これは侵略なんだよ。別世界からのね。さっき戦った相手はディザイナーズの幹部だ。アイツらがデザイアンを作り出している。デザイアンはいわば尖兵といったわけだ』
「………なるほど」
デザイアンは自然現象などではなく悪の組織からの手先だと。それを守るための魔法少女ってことか。
「……でもなんで隠してた?」
『知りたかったか?例えばあの岩男。デザイアンとは違って生きているんだよ。君達と同じさ。侵略とは殺し合いだ。ここまで言えば私の気遣いも分かるだろ』
「そうか……悪かった」
なんとなく納得し、デナに頭を下げる。するとデナはベッドに寝転がってこっちを見てきた。
『まぁ隠していた私にも落ち度はある。罰として好きにしてくれ。モフりたい放題だぞ』
「好きにったって……俺は猫にどうこう思うほど変態じゃねぇよ」
『……そうか。なら』
「え?」
突然デナの体が光りだし、段々と大きくなっていった。少しずつ大きくなり、次第に人の形になって…………
「これならどうだ?」
「なっ!?」
光が収まると、そこには黒髪ロングで褐色の幼女が俺のベッドの上で寝転がっていた。目のやり場に困るとかそういう話じゃない。
「な、ななななにしてんだ!?」
「おや?あぁそうか幼すぎるか。だったら…」
再び光り、更に大きくなっていく。
「これならどうだ?」
同年代くらいの背丈になり、胸も大きくなった。ハッキリ言ってエロい。健全な男子高校生には刺激が強すぎる。
「っ…………」
なんだかいけない気がする。でも目が吸い寄せられる。人間じゃないし……本人が良いって言ってるんだから胸くらい…………
「ごめんマコト!スマホ忘れて……なかっ……た……」
突然部屋の扉が開いた。そこにはホノカが立っていて、このとんでもない光景を目の当たりにして開いた口が塞がっていなかった。
「………どうやって入ってきた?」
「鍵……開いてて…………良いかなって…」
「……………良くはないな。うん」
「そうだよね…………うん……ごめん…」
なんともいえない空気が流れる。するとデナが悪い顔をしてホノカに語りかけやがった。
「貴女も混ざる?」
「ほぇっ…………」バタンッ
余計なデナの一言でトドメを刺されたホノカは、顔面を真っ赤にしてその場に倒れたのだった。
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