第3話 秘密の作戦会議
某日。市街地にて。
「ヨコセェェエエ!!!」
ビルと同等のサイズの怪獣型デザイアンの咆哮が響き渡っていた。そんな巨大なデザイアンを前にして既に魔法少女達は満身創痍だった。
「この前の硬いデザイアンといい……なんなのよいったい…!」
青色の魔法少女「スカイ」は宙を飛び回りながら魔法の矢を放ち応戦していた。しかし矢は当たったところで対した効果を発揮できておらず、デザイアンは尚も進行を続けていた。
「ディザイナーズも本気を出してきたってことなんですかね………っ」
黄色の魔法少女「アンバー」はスカイとフラワーに補助魔法をかけつつ、一般市民に被害が出ないようにと常に気を配っていた。
「諦めないで2人とも!私達なら勝てるよ!」
ピンク色の魔法少女「フラワー」は仲間を励まし、今まさに全魔力を込めた必殺技を放とうとしていた。
フラワーの前方に大きな桜の花の様な紋章が浮かび上がる。それにフラワーが両手をかざし、全身から振り絞るような声で叫んだ。
「ブロッサム…シューーーーート!!!」
桜の紋章から放たれた光線は見事にデザイアンの顔面に直撃。だが………
「……ッッヨォコセェェ!!!!」
デザイアンの大きな口から反撃と言わんばかりの火球がフラワーめがけて放たれた。避けられる速度ではない。フラワーが自分よりも何倍も大きな火球に飲み込まれる覚悟をしたその瞬間。フラワーを庇うように黒い少女が現れた。
『っ…………ふんっ!!!』
黒い少女は巨大な火球をまるでサッカーボールかのように上空へと蹴り飛ばした。火球が遥か上空で爆発したかと思えば、少女は全身に稲妻を纏いながらデザイアンに向かって突撃。下顎にアッパーをお見舞いし、そのままデザイアンの分厚かったはずの胸部をドロップキックで容易く貫いてしまったのだった。
「…………すごい……」
フラワーはその一部始終を見て素直な感想を溢した。3人がかりでビクともしなかったデザイアンをたったの数秒で倒してしまったのだ。先日の話を聞いてはいたがここまで実力差があるとは思っておらず、フラワーは開いた口が塞がらなかった。
『………………』
デザイアンが完全に消滅したのを確認し、黒い魔法少女はその場を去ろうとしていた。フラワーはなんとか話してみようと急いでかけよった。
「あの……!名前は!!貴女のお名前!私はフラワーって言います!」
『名前……………』
黒い魔法少女は少し考え込むと、駆け寄ってきたフラワーに向けて冷たく言い放った。
『貴女達に教えるまでもないわ』
「へ…………?」
そう言い残すと黒い魔法少女は跳躍し、まさに光の速さで去っていったのだった。
数時間後……
「ぐぬぬぬ……」
「顔が怖いですよ~セリナさん」
「だって………」
「そうだよセリナちゃん。仕方ないって」
とある女子高生3人が部屋に集まって反省会を開いていた。その中でも険しい顔をしているのは青い髪をしている
「でもあの人の態度!それはあの人の方が私達より強いのは分かるけど!ホノカに対してあんなに冷たくしなくてもいいじゃない!」
「まぁまぁ……私は気にしてないし……」
そんなセリナをなだめているのはピンク髪の花咲ホノカ。3人が集まっている部屋の主であり、ピンクの魔法少女フラワーでもある。
「ホノカは優しすぎるのよ!」
「でも私達があの方よりも弱いのは事実ですし、既に2回も助けてもらってますからね~」
「それはっ……そうだけど………」
ほんわかとした口調でも言うことはハッキリ言うタイプの黄色髪の少女、
「そういえば~ホノカさん。私気になっていたことがありますの~」
「え、私?いいよなんでも答えるよ!」
暗い話を誤魔化すようにミアはホノカに向けてとある質問を投げ掛けた。
「先日~昼休みに一緒に教室へと戻っていた殿方は誰なのですか?」
「ギクゥッ……!」
「はぁ……いくら幼馴染みでもああいう不良とは別れた方がいいってこの前言ったよね?」
「ちがっ……だからマコトとは腐れ縁で……そういうんじゃなくて………」
「これはこれは……詳しくお聞かせください~」
先ほどまでの空気から一変し、その後はホノカと幼馴染みについての話でひとしきり盛り上がったのだった。彼女達は街を守る魔法少女である前に、ただの女子高生でもあるのだ。
そんな女子会が開かれていた家の隣。1人静かにベッドに寝転がってあることを思案している男がいた。
「名前か…………」
戦闘後にフラワーに名前を聞かれ、何も考えていなかったマコトはあれからずっと考えていた。
「無難にブラック……いやでももうちょい捻りが欲しい…………」
普段は透かしているがマコトも男子。カッコいい名前をつけたくなるのは当然である。
そんな事を考えていると、机の上に黒猫のデナが現れた。
『名前なんてなんでもいいだろう』
「分かってねぇな……こういうのが大事なんだよ」
『案外ノリノリだな君も』
「…………まぁな。あの火の玉蹴った時とかめっちゃスカッとしたし」
そうしてマコトが下らないことに頭を使っていると、デナが彼に名前を提案した。
『レイヴンはどうだ?黒だしカラスだし君にピッタリだろ?』
「レイヴン……………レイヴンねぇ……」
満更でもない顔で反芻するマコト。どうやら気に入ったようだ。
「…仕方ねぇな。とりあえずそれにしとくよ」
『……それなら良かった』
デナは呆れた様子で机の上から姿を消した。マコトはそんなことは気にしておらず、次に名前を聞かれた時は「レイヴン」と名乗ってやろうとニヤニヤしていたのだった。
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