第31話 空とは宇宙である。
マコトから大事な話だって呼び出されたのに期待してたような話ではなかった。それだけでもムカムカしてたのに今度はスカイが勝負を挑んできた。姿もいつもとは違うし何だか様子もおかしい。戦いながら説得しようって思ってたんだけど……
「ほらほらぁ!避けてばっかりじゃ勝てないよフラワー!」
「そんなこと言ったってぇ!数が多すぎるよぉ!ぅわあぶなっ!?」
スカイの弾幕が濃すぎて足を止めることが出来ない。というかそもそも弾が速すぎて視認できない。空の星がピカって光ったと思ったらもう寸前のところまできてる。避けられてるのも私が居た場所にしか着弾してないからであって、適当にバラまかれたら避けれる気がしない。
どうにかしてこの弾幕を掻い潜ってスカイを正気に戻さないと……って思ってたら別荘の方から黄色い光が私の元へとやってきた。その光はスカイと私の間に割り込むように止まると、綺麗な6角形の巨大なバリアを展開した。
「っ……!何してるんですか2人とも!主にスカイ!」
「アンバー!……ってなんか大人っぽいね!?」
「え?あぁ……そういえば見せるのは初めてでしたね」
私をスカイの攻撃から守り、叱咤してくれたアンバーは前よりも大人っぽくなっていた。服もドレスみたいになってて綺麗でカッコいい。そんなアンバーの登場にスカイは攻撃を止めて声を張り上げた。
「邪魔しないでアンバー!これは私とフラワーの問題なの!」
「2人の問題は私の問題でもあります!仲間でしょう!何があったか言ってください!」
「アンバーには関係ないことよ!……でもまぁ仕方ないから――」
『いいぜ!なら僕が代わりに教えてや……ん?』
なんだかんだアンバーの質問にちゃんと答えてくれそうだったのに、スカイの台詞を遮るようにちょっと耳の長い小さな男の子がスカイの隣に登場した。でもその子もスカイの台詞の違和感にすぐに気づいたのか困ったような顔でスカイの方を見て、緊迫していたはずの空気は一瞬で静かになってしまった。
「あ、貴方はあの時の!」
そんな静まりかえった状態の中、アンバーがスカイの隣に現れた男の子へと声をかけた。男の子も気の抜けた顔からすぐに嘲笑うかのような表情に変わり、話がまた進みだした。
『へぇ?僕のこと覚えててくれたんだ!』
「当たり前です!貴方もディザイナーズの幹部なのですか!」
『あぁそうさ!僕の名前はブルヴェ!エルサ・ブルヴェ・カシ――』
「ちょっと!私の邪魔しないでよ!」
高らかに名を名乗っていたディザイナーズの幹部だったけど、今度はスカイがそれを遮るようにその子を叱った。ブルヴェと名乗ったその子は顔をしかめてスカイと向き合った。
『そっちこそ僕の邪魔をするなよ!少しは黙っててくれ!』
「そっちこそってなに!?私達の勝負に割り込んでこないでよ!大事な話なんだから!」
『っ………だったら止まってろ!』
言い争いを始めてしまった2人をただ見ていると、男の子の方が指をパチンと鳴らした途端にスカイの動きが止まってしまった。まるで時間が止まってるみたいに微動だにしない。
『はぁ………やっと静かになった…』
「………それで?今回は何が目的なのですか?返答しだいでは容赦はしませんよ」
未だに状況を飲み込めてない私の代わりに相手と面識のありそうなアンバーがバリアを展開したまま質問を続けた。
『…………ンンッ!目的?いいぜ教えてやる!今回は計画の最終段階だ!』
「計画?」
『惚けるなよ黄色の魔法少女!お前が一番よく分かってるはずさ!』
「私が?……まさか!」
『ケッサクだったよなぁ?恋い焦がれた主人に牙を向ける従者!ま、アッサリ絆されちまったが……今回は違う!』
アンバーを煽るように話すディザイナーズは止まったままのスカイを指差しておもちゃでも自慢するみたいに言葉を続けた。
『聖女の力の汚染が完了した!コイツはもうお前らの仲間じゃない!暴走する欲望のままに動き続ける僕達ディザイナーズの仲間というわけだ!』
「なんて下劣な……!」
「そんな…スカイが……」
あまり信じたくない。まさかスカイが敵に操られちゃってるなんて。もし本当なんだとしたらそんなの勝てっこない。だってスカイは……セリナちゃんは大事な友達だもん。
『……僕が手を出してもいいけど、それじゃつまらない』
ディザイナーズはそう言うとまたしても指をパチンと鳴らした。その瞬間スカイが動き出し、何が起こったのかと困惑しているスカイにディザイナーズは指示を出した。
『さぁ思う存分暴れて――』
「私に何をしたの!」
『…………後で説明するから』
「いいや!というかあなたは誰!」
『この女ッ…………!』
殺伐としていた流れを問答無用でスカイがぶった切った。ディザイナーズも目に見えてイライラしていて拳を握りしめていた。
『分かった!もっかい名乗ってやる!だから邪魔すんな!』
「はいどうぞ」
『チッ………ッスゥー………!僕はディザイナーズの幹部!エルサ・ブルヴェ・カシム!時間を操れるのさ!』
「時間を……操る?」
『そうだ!お前を止めていたのは僕の力でお前の時間を止めていたからで――』
「はっ…ははは破廉恥な事してないでしょうね!!!?」
『ハレンチ!!?こんな状況でそんなのするわけないだろ!頭どうなってんだお前!』
「あ、あのー……」
またしても私達をおいて勝手に口論を始めてしまった2人。私がいたたまれなくなって2人に声をかけようとすると、その私の声よりも大きな声でアンバーがスカイへと語りかけた。
「スカイー!その人さっきしてましたー!破廉恥なことー!」
「やっぱり!!?」
『はぁっ!!?おいふざけ――』
「もうそれはそれはスゴいことしてましたー!スゴすぎて鴉谷くんなんて釘付けでしたよー!」
「おい!なんで俺を巻き込むんだよ!!」
遠くからマコトのツッコミも聞こえてきたけど一旦聞かないフリをして、私もアンバーの作戦に乗ることにした。
「マコトの部屋にあるえっちな本よりスゴかったよー!」
「えっちな本より!?!」
『バカだろお前ら!?良いのかそれで!!もっとこう…プライドとかねぇのかよ!!!』
「ッ…………許さない……許さないッ!」
『おい騙されてるぞ!?仲間に騙されてるんだぞ!?』
「私のッ………はじめてを……!!!」
『そこまでいけるわけねぇだろ!!?』
なんだかスゴい想像をしているスカイは怒りのままに震える拳をディザイナーズに向けて放とうとした。しかし私達に弄ばれていても流石は敵の幹部。拳が顔に届く前にまたしても動きを止めてしまった。
『調子にのりやがって……!こうなったら僕が直々にっ…ゴフッ!!!?』
半泣きになっていたディザイナーズがこちらに怒りの矛先を向けたかと思えば止まっていたはずのスカイが動き出し、小さな顔へとおもいっきり拳を振り抜いた。
『ハッ!!?なんで動けてんだよ!?』
「……ふーん?知らないんだ。なら教えてあげるよ」
いくら敵とはいえど子供の見た目をしている相手を殴ったのにスッキリしたような顔をしているスカイは動けた理由を自信たっぷりに語り出した。
「
『…………は???』
「つまり
『だから…なんだよ』
「そして宇宙にはね…時間がないのよ!」
『あー…………ん??????』
「はぁ……まだ分かんないかぁ」
うざったい顔で溜め息をつきながらこちらを見てくる。「フラワー達なら分かるよね」と言わんばかりだか正直分かんない。でもとりあえず頷いておこう。
「つまり私にはあなたの能力は効かないってこと!」
『……いやっ…………それとこれとは関係ない……』
「はぁ……これだから無知は困るわね!」
「すごーい。スカイは博識ですねー」
「そ、そうだねー!」
「ふふん!!!」
よく分からない理屈を押し通すスカイをわざとらしく煽てるアンバー。絵に描いたようなドヤ顔をしているスカイに私もとりあえず拍手しておくのだった。
4人目の黒い魔法少女の正体が俺の幼馴染みにバレるまで @HaLu_
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