第32話 ただの思い込みすら、貫けば最強

「……何やってんだアイツら」


 いきなりスカイが襲ってきたかと思えば、敵の幹部みたいなガキが出てきて、そのガキをスカイが躊躇なくぶん殴って意味の分からん持論を展開した。


 で、その様子を岩の影に隠れて俺はただ眺めている。どうやらレイヴンはお呼びでないみたいだし、正直もう巻き込まれたくない。


『やぁマコト』


「うぉっ!?んだよデナか……」


 急に俺の股下から猫姿のデナが現れやがった。ホントに神出鬼没だよなコイツ。


『マコトも参戦しないのか?魔法少女のピンチだぞ?』


「…まぁ大丈夫だろ。アンバーもなんか強くなってるし、スカイとあのガキもコントしてるし。俺にはそんなピンチには見えないけどな」


『……本当にそうかな』


 こんなバカげた状況だというのにデナは危機感でも覚えているかのような言い回しをした。するとスカイにぶん殴られたガキがデカイ声で叫びだした。


『ッ………おい!じゃあその宇宙の力ってのを発揮する相手を間違ってんだろ!お前の目的も忘れたのかよ!』


「私の…………あ、そうだった!」


 理不尽な理由で殴られたというのにガキは本来の作戦っぽい話へと軌道修正をかけた。スカイもスカイでそれにあっさり乗り、フラワー達の方へと指を差した。


「ちょうどいいわ!アンバーもフラワーもまとめて相手してあげる!私が最強だって見せつけてやる!」


「……このまま絆されてくれると思ってたのに、やっぱりそう簡単にはいきませんね」


「ど、どうするのアンバー……」


「迎え撃ちます。今の私とフラワーならきっとスカイを抑えられるはずです」


「えぇ……でもぉ………」


「じゃあ……ッ再開!!!」


 未だに困惑するフラワーと交戦する気満々のアンバー。そんな2人にスカイは再び星形の魔法を放った。


「いくら速くても!私のバリアは突破出来ま――――」


 その攻撃を巨大な六角形のバリアを展開することで防ごうとしたアンバー。しかし………


 パリィンッ!


「…………へ?」


 決め台詞を言いきる前に、ガラスが割れたような音と共にアンバーのバリアに綺麗な星形の穴が空いた。幸いアンバーには直撃しなかったものの、体のスレスレを通過していった。


「な、なんで……」


 アッサリと自慢のバリアを貫通され、動揺しているアンバーへとスカイは自信満々な顔つきで語りだした。


「言ったでしょアンバー。私が最強なんだって。最強の私の魔法がじゃん」


「…………スカイ。全部終わったらみっちり勉強会でもしましょうか」





「……マジかよ」


『さぁどうするマコト。このままでは彼女達が危険だぞ』


「……………やるっきゃねぇか」


 なんだかデナに誘導されてるみたいで嫌だが、アイツらがピンチなのも確かだ。あの宇宙バカ野郎の目を覚まさせてやる。





「さぁさぁさぁ!どうしたの2人とも!」


「そんなことっ……!言ったって……!おわっちょ!?」


「くうっ……!スカイ!もう少し手加減を覚えてください!」


 スカイが繰り出してくる魔法の弾を避け続けることしか出来ない2人。むしろ一発も当たってないのは奇跡だろとは思いつつ、変身した俺は空に浮かんでるスカイ目掛けてすっ飛んでいった。


『いい加減にしなさい!!』


「レイヴっ……んっ!!」


 全速力で突っ込み、おもいっきり蹴り飛ばす。スカイはその蹴りをなんとか腕でガードし、吹き飛ばされつつもすぐに体勢を整えた。


「やっと来たわね………」


『……どうして仲間割れなんてしてるの』


「そんなこと貴女に…………いや、そうでもないわね。むしろ貴女にこそ関係のある話よ!」


『……私に?』


 やけに自信満々のスカイは俺を指差すと、なんとも言えないアホヅラで語りだした。


「レイヴン!貴女の正体は………デナさんでしょう!!私には分かるんだからね!」


『は?』


「ブフッ…!」


「え、どうしたのアンバー?」


「いえなにもっ……ふふっ………」


 的外れ……とも案外言えない事を言ってくるスカイ。だが仮に俺がデナだったとしてどう関係してくるというのだ。

 と考えているとスカイは拳を握りしめ、今度は怒りに満ちた顔になった。忙しいなコイツ。


「私はね……鴉谷マコトが許せないのよ…………私をその気にさせておいて…他の女にばっかりデレデレしてるのが………!」


『……だから?』


「貴女は強い!でもそんな貴女を私がここで越えて見せれば!私は本当に最強になれる!最強の魔法少女になれれば鴉谷もきっと……私の事を…………!」


『…………そう』


 スカイの……いや、美空の言いたいことくらい分かる。そこまで真っ直ぐに想われるってのも悪い気はしてない。俺が負けることでこの場が丸く収まるならそれでいいのかもしれない。


 だがな、勝負しようってんなら俺にだって譲れないもんがある。最強になりたいんだったら受けてたってやる。やれるもんならやってみろ。


『いいわ。かかってきなさい』


 その告白、真っ正面から断ってやるよ。

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