第24話 共鳴
レイヴンとアンバーが肩を並べ、人狼のようなデザイアンと対峙する。二対一なら勝機はあると踏んでいた2人だったが、そう上手く話は進んでくれなかった。
『まさか男だったとはなぁ!』
『……最悪』
レイヴン達を煽るような大げなさ拍手と無駄に大きな声を発しながらどこからかディザイナーズの幹部である岩男のヴィが姿を現した。ヴィを見たレイヴンが悪態をつくと、ヴィは両腕を広げて言葉を続けた。
『おいおい連れねぇなぁ!オレ様は気にしねぇぜ!強い奴なら性別なんてどうでもいいからよ!』
『それはどうも……だったらこのまま帰ってくれない?』
『………まぁ正直今はお前らと戦う意味なんてないんだけどよ。コイツの準備運動も兼ねてリベンジマッチと行こうぜ!』
ヴィは体を大きく広げながら高らかに宣戦布告をした。しかしレイヴンはその申し出を受ける訳にはいかなかった。レイヴンはともかくアンバーが危険すぎる。手応えからしてデザイアンの方を任せることは出来ないと考えていたからだ。
もう一度あの姿に成れたならと思案するレイヴンに対し、アンバーは背中を強くひっぱたいた。
『っ……なにするの』
「セバスは私に任せてください。それが主人の勤めですから」
そのあまりに力強い眼差しにレイヴンは覚悟を決め、アンバーに拳を突きだした。
『すぐに終わらせるわ』
「……ふふっ。一度してみたかったんです。こういうの」
アンバーも拳を突きだしてレイヴンの拳に重ねた。その時の2人の拳には僅かに黒い稲妻が走った。アンバーは体が痺れるような感覚を味わったが、それが何かを考える前にデザイアンがアンバーへと向かって突撃した。
『試合開始だぁ!!』
「ヒレフセェ!!!」
それと同時にヴィも急接近。レイヴンとアンバーも構えをとって各々の相手を迎え撃った。
『かかってきなさい!』
「…………セバス!」
―――――――――
『ハッハッハァ!楽しいなぁ!オイ!』
『くっ………!』
岩男の攻撃を捌きながら合間合間に反撃する。だが生半可な攻撃では岩男に効いている様子はまるでなかった。それどころか戦いを楽しんでいるようにすら思えた。
『どうしたどうした!軽すぎんぞ!』
『アンタが重すぎるのよ!』
俺と同等のスピードを誇りながら繰り出されるパンチの重みがまるで違う。受け流しているはずなのに手や腕が痺れる。連打の一撃一撃がまるで砲弾でも受けてるみたいだ。今のままでは勝ち目なんて無いだろう。
となればあの姿に成るしかない。だが未だに再現出来たことはない。デナが言うには気持ちの問題も大きいらしいのだが……
「くぅっ…………!!」
「ヒレフセェエ!!」
『アンバー!?』
あの日の事を思い出そうとしていると背後でアンバーのバリアが破られ、鋭い爪がアンバーの細い体を引き裂いた。服は破れ、皮膚まで到達していた。それほど深くは無さそうだが血が出始めている。
『余所見してんじゃねぇよ!』
『ガッ……!?』
その隙をついた岩男のパンチの衝撃が俺の体を貫いた。そのまま俺は壁まで吹き飛ばされ、なんとかガードしていたはずの右腕の感覚がなくなってしまった。
『………チッ』
岩男は虚しそうに舌打ちをすると、俺への追撃はせずにデザイアンの方へと向かった。
『まさかこれほど強いとはなぁ……やっぱエクスの言う通り人間が1番欲望まみれってことか』
「ヒレフセ……!」
『………恐ろしいもんだぜ』
岩男がデザイアンに対し手を伸ばして何かをしようとした瞬間、アンバーが叫び声を上げた。
「まだです!」
『……あ?』
「まだ………終わってません……セバスは…渡しません!」
『どいつもこいつも………魔法少女ってのは諦めが悪いな。でも今回ばかりはその諦めの悪さには付き合う気はねぇ。もう目標は達したんでな』
デザイアンは岩男の命令か何かなのか完全に動きを止めていた。口振りからしてトドメを刺すつもりもないらしい。だがアンバーはそれでも立ち上がり、体を震えさせながら吠えた。
「逃げるんですか!この臆病者!」
『………………』
「また負けるのが怖いのでしょう!フラワーにコテンパンにされたそうですものね!」
『…………はぁ。死んでも知らねぇぞ』
岩男はアンバーの叫びに呆れたかのように腕を振りかぶり今にも殴ろうという体制をとった。その光景を見てもなお俺の体は動かなかった。アンバーは諦めてない。あんなに細い体で、俺よりも弱いのに逃げようとしない。なのに俺は立ち上がることすら出来てない。
クソが…………!
あの時みたいな…力があれば………!
どくんっ…………!
心臓が跳ねる。全身へと血液と共に魔力が巡っていくのが分かる。無理矢理に心臓を掴まれ、凄まじい勢いで循環している。その感覚に俺は覚えがあった。
その事を確信した俺は、あの瞬間と同じようにただがむしゃらに力を求めて叫んだ。
『「俺が全部!!ぶっっ潰す!!!」』
叫びと共に不快感は消え、変わりに暖かく優しい黄色い光が体を包んだ。何かと繋がり、そこから魔力を流し込まれているかのような感覚。間違いなくあの日と同じ現象だ。
「ッ…!!!あ゛ぁぁぁぁ!!!」
それと同時にアンバーも悲痛な声をあげた。黒い光に体を蝕まれるように侵食されていき、それを見た岩男はニヤリと不適な笑みを浮かべていた。
『どいつもこいつも……本当にムカつかせてくれるぜ!』
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