第14話 重なり続ける謎

「マコト。この人誰?彼女?」


「彼女とかじゃねぇけど………その……」


 ぶっ倒れたホノカをベッドまで運び意識が戻るまで様子を見た。その間にデナに元に戻るように説得したが何故か聞く耳を持たず、仕方ないので俺の服を着せることにした。そんなことをしているとホノカが目を覚まし、デナの事をジッと見つめながら俺に関係を訪ねてきたというわけだ。


「……じゃあマコトは彼女じゃない女の人とあんなことするんだ。ふぅん。あっそ」


「何もしてないって!俺は無実だ!」


「鼻の下伸ばしてたくせに」


「…………おい」


 何も言い返せなくなり、俺はデナになんとかするように促した。するとデナは「やれやれ」と呆れながらもホノカに話しかけた。


「私、デナと言います。ホームステイです」


「え?ホームステイ?」


「はい。今日からマコトの家にお世話になります。私の国では家で服を着ないです。だからマコトに怒られてました」


「…………さっきもう少し日本語上手じゃありませんでした?」


「………キノセイデス。ネ?」


 目茶苦茶な嘘で乗り切ろうとするデナ。だが俺もこの場さえどうにかなればいいと考え、この作戦に乗ることにした。


「そうなんだよ!いやぁ困るよなぁ!」


「……怪しい。ねぇデナさん。私に何か隠してませんか?」


「いいえ。隠してないです」


 簡単には騙されてくれないホノカに対し、デナは体を近づけて目をじっと覗き込み、怪しさしかない不気味な笑顔を向けた。


「ね?」


「え…………はい……」


「……分かってもらえて嬉しいです」


 ホノカはデナに何かされたのか心ここにあらずといった表情になり、デナへの追求をしなくなってしまった。


「おいデナ……何した」


「…………ちょっとな」


 俺達が小声で話していると急にホノカは立ち上がり、忘れていたスマホをしっかりと回収してからペコリと頭を下げて俺の部屋を出ていった。

 一応俺はその後を追いかけ、ホノカが玄関から出ていくのを確認してからちゃんと鍵を閉めた。そして急いで部屋に戻り、デナに文句を言うことにした。


「……大丈夫なんだろうな」


「安心しろ。少し前後の記憶が曖昧にはなるだろうがそれだけだ」


「大丈夫じゃねぇだろそれは……ったく」


 まさかのトラブル続きで俺が頭を抱えていると、デナの体がまたしても光り、猫の姿に戻っていった。


『ふぅ……疲れるな』


「…………だったら変身するなよ」


『いやはや、今後のためにも練習をと思ってな』


「練習?何がだよ」


『……明日のお楽しみだ』


 デナは意味深な言葉を言い残すと、窓から外へ出ていくのだった。

 俺はその言葉の意味を少し考えつつも、流石に疲れていたのでベッドでひと休みすることにした。



 その翌日。俺は朝っぱらからデナの言葉の意味を理解することになった。


「今日からしばらくお世話になります。デナです。お願いします」


「はい皆拍手~」


 教室全体にまばらな拍手が響き渡る。席が1つ増えていた時にまさかとは思ったがデナが人間の姿をして俺達のクラスへとやってきたのだ。

 俺はホームルームが終わった瞬間に席を立ち、デナがクラスメイトに囲まれる前に屋上へと連れ出した。


「なにしてんだお前!?」


「……学校に来てみたかっただけだが?」


「みたかったで来れたら苦労しねぇよ!」


「そこはまぁ……魔法でな?」


 コイツ魔法って言えばなんでも解決すると思ってやがる。人の性別すら変えられるんだから実際やれるんだろうが……今のとこディザイナーズとかよりよっぽど怖いぞ。


「……学校では大人しくしてろ。良いな?」


「もちろん。ある程度の常識はあるつもりだ。それに一応ちゃんとした目的はある。なので君に怒られて追い出されても困る」


「……目的?」


「いずれ話すさ。必ずな」


 デナはまた俺に何かを隠している。だが俺はその事に敢えて触れず、ふたりで一緒に教室に戻ることにした。



 教室に戻りデナが自分の席に着くとクラスの女子がデナを取り囲んで話を始めた。


「デナさん大丈夫……?」

「鴉谷くんに酷いことされてない??」


 俺からの呼び出しを受けたデナを心配するクラスメイト。デナはそんな彼女達に対して昨日と同じ手法で乗り切ろうとした。


「マコトの家にホームステイしてます。マコトは私の家族です。安心してください」


「あ、そういうことなんだ………」

「良かったぁ……知り合いだったんだね」


 よくもまぁそんな嘘で通せるもんだ。これもまた魔法の力ってことなんだろう。

 俺が不意にホノカの方を見てみると、ホノカはデナの事を睨むような視線で見つめており、俺から見られていることに気付くと少し顔を赤らめて、頬を膨らませてそっぽを向いてしまうのだった。



 そんなこんなでデナはあっという間にクラスに溶け込み、1日が終わる頃にはすっかり馴染んでいた。俺はデナの目的について若干の不信感を覚えつつも、力を貸してもらっている以上今はデナの事を信用するしかないのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る