第8話 幼馴染みなだけ
私の名前は花咲ホノカ!高校2年生!ひょんな事から魔法少女として戦うことになった普通の女子高生!
そして……
「こら鴉谷マコト!シャツのボタンは閉めろといつも言ってるだろ!」
「うるせぇバカ美空。んなことより勉強してろ。もうすぐ期末だぞ」
「はぁぁぁ!?い、言われなくてもやってますけど!?」
貴重な休み時間に廊下の真ん中で生徒会副会長のセリナちゃんと喧嘩してる黒髪の男子は私の幼馴染みで腐れ縁の鴉谷マコト。昔から不良に憧れてるとかで変なことばっかりしてる正真正銘のバカ。
バカだから高校でも友達が出来なくて、私が話しかけないと暇そうにしてたのに、最近はなんだかそうでもないみたい。
セリナちゃんとよく話すようになった。話すというより喧嘩みたいな感じだけど、なんだかどっちも満更でもない感じもする。
そして放課後も……
「鴉谷くん。今日はお暇ですか?」
「暇じゃない」
「暇ですよね~」
「やめろ忙しい」
「そんなこと言わずに~」
下駄箱でマコトがミアちゃんに絡まれていた。私は咄嗟に隠れてしまい、ふたりの様子を確認しようと覗いた時には既にふたりとも消えてしまっていた。
いや別にマコトが誰と仲良くなろうと私には関係ないけど。私はすごく忙しいし。魔法少女としてやらなきゃいけない事もあるし。花屋さんでもある家の手伝いもあるし。ただの幼馴染みだし。
ただの腐れ縁だし…………
「おかえり………」
『ただいまメポ!』
家に帰り自分の部屋に入ると、白い狐みたいな見た目の「メッポ」が元気に私に声をかけてくれた。
「ねえメッポぉ………私って重い女なのかなぁ……」
『急にどうしたメポ……ホノカは重くなんてないメポ!』
「でもさぁ、聞いてよぉ…………」
『メ、メポ…………』
その後、メッポに最近の色々な事を聞いて貰った。メッポは複雑そうな顔をしていたけど、しっかりと話を最後まで聞いてくれた。しかもその上でとあるアドバイスをくれた。
『本人に聞いてみると良いメポ』
「いやいやいや!何を!?というか別に私はそんなんじゃないから!」
『好きな魔法少女について聞いてみれば良いメポ。ホノカに気があるならきっとフラワーが好きメポ』
「別にっ……マコトが私に気があるとかっ…そんなの…別に………ねぇ?」
メッポは私とマコトの関係をどうにも誤解してるようだ。まぁでも試してみる価値はありそう。私に気があるかはともかくとして、好きなタイプとかは分かるかも。
「…………メッポ。静かにしててね」
『はいはいメポ』
私は意を決してマコトへと通話をかけることにした。いつもなら文章で済ませるけどこればっかりは直接聞きたい。マコトの声が聞きたくなったとかそんなんじゃない。
『なんだよ急に』
2コールもしないうちにマコトは通話に出てくれた。なんだかそれが嬉しくて、弾みそうになっている声を抑えながらなるべく冷静に話し始めた。
「あ、あのさ。ほら、最近さ、魔法少女って……いるじゃん?」
『あぁ………いるな』
「友達とさ、話しててさ、好きな魔法少女は誰?って話になってさ、それでその……マコトは誰が好きなのかなぁって………」
『あー…………』
流石に急すぎたのか、マコトは返事に困っていた。私はマコトの返事を心臓がバクバクと鳴り続けているのをなんとか抑えながら待ち続けた。
そんな数秒の沈黙の後、マコトから答えが返ってきた。
『強いて言うなら…………あの、黒い……新しい奴だな』
「なっ…………え……ど、どこが?どこが好きなの?」
欲しかった答えじゃなかったというのもあり、私は動揺しつつもマコトに理由を尋ねた。するとマコトはなんだか恥ずかしそうに語った。
『いや好きっていうか…………ほら強いだろ?こう………バッて敵を倒してさ。憧れるなぁ……みたいな?』
「ふ、ふーん?そうなんだ………そういう感じ……あ、そぅ…」
『……なんだよ。女の趣味が悪いって言いてぇのかよ』
「いや別に?マコトの趣味が悪くても関係ないし?」
『…………なんでキレてんだよ』
「怒ってません。気のせいです。それじゃおやすみなさい」
『……おやすみ』
私は通話を切ると、ベットに向けて顔からダイブした。すると一部始終を聞いていたメッポが慰めにきてくれた。
『だ、大丈夫メポ!落ち込むことないメポ!』
中身のない台詞で励ましてくれるメッポ。だが私は落ち込んでるわけではない。マコトの言葉から充分すぎるほどのヒントは貰っているからだ。
「メッポ……特訓しよう」
『特訓メポ?』
「そう。あの黒い魔法少女…レイヴンみたいに強くなるために………特訓しよう!」
『なるほどメポ!良いアイディアメポ!』
うつ伏せだった体をグンと起こし、強くなるために特訓をすると力強く宣言した。
だけど……
『……特訓って何するメポ?』
「…………さ、さぁ?」
肝心の内容については何一つ分からず仕舞いで、その日はメッポとあーでもないこーでもないと話し合いを重ねたのだった。
そして翌日。
「くっ………!!」
「アガメロォォ!!!」
またしても紫の光を放っている強いデザイアンが街に現れた。見た目はパンダなんだけど、ほとんど熊みたい。全然可愛くない。
「フラワー!大丈夫!?」
「私は平気っ!アンバー!もっかいやる!」
「……分かりました」
心配してくれたスカイに返事をし、アンバーに再び私への強化を促した。いつまでもレイヴンに頼ってられない。スカイやアンバーはすごく調子が良いし、後は私がこのデザイアンを怯ませられれば勝機はあるはずなんだ。
「っ……ブロッサム…パーーーンチ!!」
アンバーからの強化を受け、デザイアンに向けて突撃する。右手に魔力を集中させて、怖い顔面におもいっきり…………!!
「アガメロォ!!!」
「危ないフラワー!!」
「ぇ…………」
気づけば目の前までデザイアンの大きな爪が迫っていた。その爪はアンバーのバリアをあっさりと突破し、私は死を覚悟――
『まったく……』
一瞬の出来事だった。バチバチっていう音が聞こえたかと思えば、私はいつの間にかレイヴンに抱えられてデザイアンの背後にまで移動していた。レイヴンは腕の中にいる私に視線を落とすと、冷たく言い放った。
『何をしてるの』
「何って……………別に……」
「レイヴン!早く!」
『………大人しくしていなさい』
スカイに声をかけられたレイヴンは私を地面に置き、まさに目にも止まらぬ速さでデザイアンの背中にパンチをした。パンチをくらったデザイアンは膝から崩れ落ち、やがて光となって元のパンダのおもちゃの乗り物へと姿を変えた。
「レイヴン……フラワーを助けてくれてありがとう」
『怪我はないだろうけど念のため見てあげて。それじゃあ』
レイヴンはスカイと軽く言葉を交わすと、いつもみたいにすぐにこの場から去ろうとしていた。私はそんなレイヴンを引き留めるためにとにかく大きな声を出した。
「あのっ!!!」
『……なに?』
こちらに振り返らずに返事をするレイヴン。私はそんなレイヴンに対して思いきってとあるお願い事をすることにした。
「私を…貴女みたいに強くしてください!!」
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