勧誘

 家に帰った後、暇なので家で転がっていると狛が帰ってくる


「おかえりーおつかれー」

「ただいま、転がってるな」

「ちょっと疲れた」

「何かしてたのか?」

「ちょっと運動を」


 殺人鬼の事は伏せて適当な事を言う

 実際、運動はしたので間違いでは無い

 余り良い話では無い

 知らないで居れるなら知らない方が良い


「運動を? あぁ鈍らないようにか」

「毎日の運動重要、ダンジョン行かない日も運動はしないとな」

「探索者以外何もしてないもんな」

「一応なんかの資格取るか日雇いの仕事しようとは考えてた」


 狛がテレビを付けてソファーに座る

 普通のニュースが流れる


 ……流石にまだやってないか


「殺人鬼の騒動で何か新しい情報出ねぇかな」

「捕まったり発見されない限りは無いと思うぞ」

「そうか」

「あっ、そうだ筋トレ道具借りていいか?」

「うん? あぁ良いぞ」

「筋トレすれば力も付くと思いたい」


 ……筋トレすれば鍛えれると思うが呪いだからなぁ


「でも筋トレでどうにかなったら呪いの意味無くない?」


 半分になったステータス分を筋肉で補う

 それが出来るなら良いが俺もそう簡単に行けるとは思っていない


「意味はあると思うぞ」

「あれかな、鍛えても筋肉量の半分の力しか出せないとか」

「エグすぎる。それだったら力は諦めだな。体力は増やしたい」

「移動で疲れてるもんな」

「そうなんだよ、戦闘も考えるともっと鍛えないとなぁ」


 体力がない為定期的に休憩や休みを入れないと戦えない


 ……辛いなぁ


 雑談していると殺人鬼が死亡したと言うニュースが流れた

 死体の回収をした鳴が討伐したとそのニュースでは言われている


 ……俺が言った刀使いなんて存在しないからなぁ。混乱させない為に一先ず鳴が殺った事にしたのか


 あの場で咄嗟に付いた嘘

 普通なら誰かが名乗りをあげるが今回は名乗りを上げる者はいない

 この事を嘘だと知っているのは俺と鳴だけ


「殺人鬼死んだのか」

「みたいだな」


 探索者の犯罪者やダンジョンへ逃げ込んだ犯罪者が死ぬケースは多い

 言ってしまえばそれほど珍しくないニュース


「この鳴って子強いのか?」

「俺の後輩」

「あぁ、お前がメール返信してない子か」

「そうだ」


 ……覚え方よ。いやまぁ事実なんだが


 事実故に何も言い返せない


「黄色い髪の毛これは地毛?」

「あぁ、そうだ」


 ダンジョンが現れてから髪の色や目の色が一般人とは違う色を持つ者が現れた

 と言っても色が違うだけで殆ど変わらない

 強いて言うなら髪や目の色と同じ色の系統の魔法を習得するケースが多い


 ……俺の目赤くなってるが赤色関連の魔法が手に入るのか?


 この姿になり黒目が赤目になっている

 特徴的な片目の模様は変わっていない

 鳴や詠見はこの模様を知っているが現状は仮面を付けている俺しか見ていない

 もし目を見ていればバレていた可能性はある


「言うて珍しくもないか」

「そうだな、現在だと結構数いるらしいからな。まぁ鳴の場合は目も特徴的だからそれを考えると珍しいかもな」

「おぉ本当だ」

「殺人鬼が居なくなったし明日辺りダンジョン行くか」

「明日か了解、新しい被害者出る前に終わって良かったよ」

「そうだな」


 ダンジョン内で被害者が出たという情報は無い

 最もまだ発見されていないだけと言うケースはある

 飯を食いシャワーを浴び着替え明日に備えて眠りにつく


 翌朝


「おはよう」

「おはよう、飯はあるぞ」

「これは……確かベーコンエッグだっけ」

「そうだぞ」


 ジーと見る

 見た目に辛そうな要素は無い、匂いもベーコンエッグそのもの


 ……激辛では無いな


 食べる

 そして感じる

 これは……辛い、見た目は赤くないベーコンも卵も辛い要素は無い

 なのに辛い


「何故だぁ。これは何が辛いんだ分からねぇ」

「あっ、辛い。なんでだ?」


 食べ終えた後、支度をして車でダンジョンへ向かう


「今日も6階層からか?」

「あぁ、6階層〜9階層だ。10階層はレベルを10に上げてから向かう」


 ……あっ、レベル8に上がってるわ。まぁ言わなければバレないか


 殺人鬼捜索の時に道中の魔物を討伐していた

 その際にレベルが上がっている


「あっ、これ出る前に言えばよかったな」

「どうした?」

「防具別のを使いたい」

「あぁ、何個かは持ってるぞ。どう言う奴が欲しい?」

「軽装って感じの装備があれば重要部位を鉄で守ってるみたいな」


 バックの中を漁って確認する

 今持ってきている服は所有している物の一部予備用でしかない


 ……多分狛の言ってるのは肘とかカバーついてる奴だよな。……ないな


 探してみるが狛が求めている物は見つからない


「そのタイプはない。家には有りそうだが」

「そうか」

「ただ俺が付けてる防具に似た奴はあるぞ」

「戦闘服みたいな?」

「そうそう、お前が好きなアニメキャラが付けてるような服やコート型なんかも軍服みたいなのもある」

「本当に色々あるんだな」

「本当に色々ある。性能もな。バック渡すから気に入ったのあれば着ると良い」

「分かった」

「鎧とは勝手が違うから気をつけろよ」

「あっ、そうか補正無くなるのか」


 全身鎧の防具は筋肉に補正と自動治癒能力があった

 防具を変えるという事はそれが無くなると言う事


「それに攻撃は余り受けるなよ。耐久力はあるが鎧程では無い」

「自動治癒も無くなるんだもんな。気をつける」

「まぁあの鎧は優秀だが他のステータス補正は他の防具の方が高い事がある」

「敏捷とか?」

「敏捷補正もあるぞ」


 駐車場で車を止めてからバックを狛に渡して別れて椅子に座って待つ


「ちょっと話いいか?」


 声の主を見ると男性だ

 20代前半位の男性でチャラ男のような見た目をしている

 狛が付けていた全身鎧に似た見た目の防具を身につけ剣を付けている

 仲間は居ないのか1人

 男性は隣の椅子に座る


「今日もダンジョンに?」

「そう」

「昨日も来てたよね」

「来てた」

「今のレベルは?」

「言わない」

「今何階層で戦ってるの? 最新の動画だと6階層っぽいけど」

「言わない」


 質問攻めに適当に返す


「その仮面魔導具だよね? 新人なのにどうやって手に入れたの? それ以外にも武器もダンジョン製」


 ……よく気付いたな


 感心する

 ちゃんと探索者をしているのだと分かる


「知り合いから借りてる」

「成程ね、知り合いから、その人結構強い?」

「知らない」

「まぁそうか、なんで配信しようと?」

「気まぐれ」

「気まぐれかぁ。レベル低いのに魔法使えてるのは何故?」

「さぁ?」

「言わないかぁ」

「何が目的?」

「目的はお近付きになりたいって」

「他を当たれ」


 ……狛、まだ来ねぇか。選んでるからか時間かかってるのかもな


 服型の防具は全身鎧と違って着替えやすい

 それでも時間がかかっているという事は決めるのに時間がかかっているのだろう

 狛は優柔不断だ


「冷たいなぁ、あっ、名前忘れてたな。俺は佐藤優一22歳だ」


 ……年下か。


 実年齢から計算して年下


「レベルは20だ」


 殺人鬼と同じレベル

 現在で考えれば格上だ

 レベル下の俺に話しかけている理由がわからない

 配信者としても正直再生数、登録者は増えているが名のある人々とは違い圧倒的な人気とは言えない

 リザーベドルを討伐した際の放送を見た者、聞いた者が珍しさで見ている印象

 動画の再生数も最初に比べれば伸び悩んでいる


 ……だとすると俗に言うナンパって奴か……しかし


 俺の今の見た目は14.5位の少女だ

 少女を22歳がナンパってのは変だなと思い別の理由を考えるが思い付かない


「勧誘が目的だ」

「勧誘?」

「そ」

「パーティ?」

「いやクランだ」

「……クラン」


 クラン、探索者が集う組織

 かなり数があるが大抵クランリーダーは高レベルの探索者やパーティが担当している

 全部は知らないが有名どころであればソロだった俺でも知っている

 クランの勧誘なら分からないでもない

 レベルは低いが配信者、リザーベドルの件で一発屋で終わる可能性はあるがそうだとしても入れて損は無い

 問題はこの人物が入っているクランが何処なのか

 怪しいクランはある

 詐欺集団や女探索者を狙った物等様々だが怪しい物はある


「クラン名は?」


 優一はそれを聞いてニヤッと笑う

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