リザーリオレム
スタンバイしていた数は20人
複数のドローンを起動させて飛ばす
『リザーベドル以来の生配信だ』
『おぉ! 2人だァ』
『なんかまたハクさん魔導具増えた気がする』
『ユエさん可愛い』
『ゴスロリチックな服装だ』
『服装変わったからめっちゃ印象変わるな』
『可愛い! 似合ってる!』
配信に使っている名前は本名、漢字は使わずカタカナで表記している
本名で呼び慣れている為、別の名前を使っても咄嗟に呼び間違える可能性がある
そして俺の名前の悠永は本名とは思われづらい
「今日はタイトル通り、10階層の階層主と戦います。名前はリザー……」
「リザーリオレム、レベル10の階層主」
「そうそう、それと戦う」
『階層主!』
『早くね?』
『レベルもう10行ったの?』
『2人で勝てるのか?』
『初戦闘だよな? 2人で良いのか?』
『普通なら3、4人の筈、無茶苦茶じゃね?』
『階層主舐めすぎじゃないか?』
『レベルが上がるのが早いから調子に乗り過ぎだろ』
コメント通り、階層主に挑むにはかなり早いペース
狛は初心者、探索者の中でも上位の速さだろう
「確かに早いね」
「勝てないと判断した場合、撤退する」
『倒すつもりじゃないの?』
『討伐じゃないの?』
『挑むが無理なら諦めるって事だろ』
『頑張れー』
「戦うのは初めてだから様子見も兼ねてって感じ」
「…………」
『逃げるの視野にって本当に勝つ気あるのか? 途中で無理でしたぁとか言って逃げる気じゃねぇよな』
『無理なら逃げるのは普通だろ』
『煽んな。可哀想だろ』
『初心者には優しく』
コメントを見るのを辞める
これ以上見ると色々と言ってしまいそうだ
……雑音に意識を割くな、集中しねぇとな
「行くぞ狛」
「あぁ」
10階層に足を踏み入れる
ゲートの先に大きな扉がある、その横に細い道がある
扉に手を置くと音を立てて自動で開く
『おぉ、すげぇ』
『自動で開いた!』
『おぉ正しくボス戦って感じだな』
『2人とも頑張れー!』
扉の先は大きな広場が広がっている
扉を超えると広場の中央に魔物が現れる
写真で見た通りの姿をしているリザーリオレム
「グルルル」
こちらを見ている
「あれが」
「作戦通りに行くぞ」
『作戦?』
『何か策を考えていたのか。そりゃそうか無策では行かないよな』
『いやいやそう言ってるだけで作戦なんて無いんじゃねぇか』
「翼よ我が怒りに答えたまえ」
魔法を使いスキル危機感知、捕食者の視覚を使う
黒い翼が背中から生える
距離を取って睨み合う
狛と俺は互いに距離を取りながらリザーリオレムとの距離も一定を保つ
そしてゆっくりと触手の間合いに入っていく
相手も警戒して近寄って来ない
階層主となると凶暴だが無闇に突っ込んでは来ない
『状況動かないな』
『何してんだ?』
『戦えよー』
『あれは触手の間合いギリギリを狙ってるな』
『触手の間合い?』
『リザーリオレムは2本の触手扱う。本体よりも長いリーチと早い攻撃速度』
『本当に考えてるとでも?』
『もう始まってるのか。遅れた!』
『まだ始まったばかりか』
『ギリセーフ』
触手の間合いギリギリで待ち構えていると背中の触手が動く
……どう来る?
捕食者の視覚を使っている今なら見える
ギリギリで躱して触手が伸び切った瞬間、一瞬動きが止まる
そこを狙って翼で叩き切る
俺と狛に1本ずつ、狛は避けず踏み込んで叩き切る
その動きを視界の端で確認し突っ込む
……カウント20、19
触手はリザーリオレムの背中から半径6メートル
その距離なら縮地で詰めれる
胴体はリーチで届かない、狙うは足
縮地で接近し魔力を込めた翼を勢いよく叩きつける
遅れて反対側の足を狛が切り裂く
切り傷から血が流れる
「良いの入ったな」
「くっそ、浅い」
触手が再生するまで時間がかかる
追撃を仕掛けようとするが後ろに飛び追撃を躱す
「弾け!」
「燃えろ!」
距離を取った瞬間、短剣を取り出して力を使い突風と炎を当てる
飛び退いた瞬間は無防備になる
直撃する、威力は低いがダメージを蓄積出来る
……10
『おぉ、短剣』
『あれもダンジョン製か。すげえな』
『どうせ知り合いから貰った武器だろ? 装備も沢山あるしユエの方やったか?』
『買ったとしてもあんな沢山初心者が持ってるわけないもんね』
『知り合いから貰ったとか借りているとかあるんだろ』
『いけぇ! やれぇ!』
すぐに縮地を使い接近して再び足に攻撃を叩き込む
……7、6
2発目を叩き込んで距離を取る
「5秒!」
狛は一撃を入れてから距離を取る
先程と同じ触手の間合いギリギリの距離へ移動する
触手の再生速度は最速で20秒
触手が再生する
再生して直ぐに触手が放たれる
狙いは俺、2本とも
俺の方が攻撃を当てている、俺を先に仕留めるつもりなのだろう
……無理
1本を回避して翼で切り裂く
2本目は魔力障壁で防ぎ翼で素早く切り裂く
『防いだ! どうやって?』
『魔力障壁か!』
ゴスロリ風の服が持つ能力の1つ、魔力障壁
自身から一定範囲内に半透明なバリアを張れる
『何かしたのか?』
『魔力を使う事で展開出来る障壁、1本は先程と同じように避けたが2本目はすぐに障壁展開して防いだ』
『ただ避けきれなかっただけだろ』
『避け切れないを即座に判断するのは難しいぞ。相当戦い慣れてる』
『2本来たって事は』
『ハクさんがフリー!』
俺が触手に対応している間に狛が素早く接近した
どちらかに攻撃が集中した場合、片方は攻め込むと言う作戦
フリーの狛は2本の剣を振るい切り裂く
「もう1回」
リザーリオレムは攻撃を受けた後、足で反撃を繰り出す
ノーモーションで放たれた威力は低いが素早い蹴り
「あぶね!」
狛はギリギリで反応して後ろに飛んで回避する
魔法で強化した身体能力で無ければ避けれなかっただろう
縮地で接近し足に攻撃を叩き込む
「こっちにも居るぞ! 弾け!」
顔面に突風を叩き込む
「ガルルガァァァ!」
リザーリオレムは叫ぶ
……第2ラウンド、少し予定より早いな
この咆哮は怒りを顕にした時の物、ここから行動が変わる
予定より早いが特に支障は無い
『うぉっ、なんだ?』
『怒り状態、触手だけでなく本体も積極的に攻撃をし始める』
『撤退した方がいいんじゃね??』
『煽られたし意地になって戦うかもよ』
『がんばれー! 負けるなー』
『怒り状態が早いな。これも想定内か?』
前足が振るわれる
距離を取って回避して振るい切られた前足に翼を叩き込む
怒り状態は俺が抑え込む
短剣の攻撃を入れてヘイトを維持する
攻撃を避けて攻撃を入れる
無駄の少ない動きで攻撃を避ける
『凄ぇ避けてる』
『本体の攻撃は遅いとはいえまじか』
『避けてるだけでなく反撃も入れてるし短剣の攻撃も入れてヘイト集めてる』
『いや、偶然だろ。本体が遅いんだろ? あんなの俺でも』
素早い触手の攻撃を混ぜてくる
遅い本体の前足による攻撃と素早い触手の攻撃の乱打
避け切れない攻撃は障壁を展開して防ぐ、障壁は硬く完璧に防ぎ切る
攻撃が当たらないギリギリで躱して攻撃を叩き込む
そして1本、短剣で切り裂く
……カウントは無し
短剣で触手の付け根近くを狙う
直撃する、触手の攻撃がズレて地面に突き刺さる
しゃがみ前足の攻撃を避ける
振り下ろしを横に飛んで回避する
『おぉ!』
『次々と避けてる!』
『頑張れー! 勝てぇ!』
『ハクさんは何してるんだ?』
『ビビってるんじゃね』
『これも恐らく作戦だな』
『怒り状態? に入った後攻撃してないから多分?』
狛は様子を見ている
下手に攻撃してヘイトが向くよりチャンスを伺い一撃を叩き込むように言っている
左前足を振り上げた瞬間、縮地で後ろ足の元へ移動し翼を関節に叩きつけて勢いよく振り切る
リザーリオレムはバランス感覚が弱い
前足を上げている時に後ろ足がズレれば体制を崩す
リザーリオレムはすぐに振り上げた左前足を攻撃を辞めて立て直そうとする
「弾け!」
そこに突風が飛び足元の軽く地面を削る
削れた地面のせいで滑り左側へ倒れ込む
倒れ込む前に縮地でリザーリオレムが倒れ背中が無防備になる左側に移動し触手に接近して2本とも切り裂く
これでこの瞬間、攻撃の術を失った
「くたばれ!」
高倍率に切り変えた狛がハンマーを勢いよく振るう
そしてリザーリオレムの顔面に振り下ろす
衝撃で空気が大きく揺れ鈍い音が響き渡る
『やったか!』
『これは勝ちだろ!』
『おぉ!』
『勝った! すげぇ!』
『無傷勝利だ!』
『すげぇなぁ!』
「よし」
この時、コメント欄は勝利を確信していた
狛もこの一撃に手応えを感じていたと言う
俺自身あの攻撃を頭に受けてまだ動くとは考えていなかった
しかし、スキルの危機察知が危機を伝える
まだ戦いは終わっていないと
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