生放送

 鳴の家まで歩く


 ……やはり遠いな。この距離普通のバックは間違いなく辛かったな


 時間をかけて鳴の家に着く

 そしてチャイムを鳴らすと鳴が出てくる


「悠永先輩、どうぞ入ってください」

「失礼する」

「案内しますねー」


 家の中を案内してくれる

 家の中はかなり綺麗で植物が色々と飾られている


「トイレはここで、風呂はここです」

「覚えとかないとな」

「寝室は2階です」


 案内され2階に行く


「私の部屋はここで隣の部屋が空いてるのでご自由に使ってください。あっ、相当大きな音でも無ければ響きませんから安心してください」

「それは助かる」


 自分が泊まる部屋を見に行く

 置かれている物は布団や物を仕舞えるボックスが4つ置かれている程度で質素な印象を覚える

 掃除がされていて綺麗に保たれている


「物入れは自由に使って大丈夫ですよ」

「中々大きいな、これなら色々入りそうだ」


 軽く見て部屋を出る


「2階のトイレはここです」

「2階にもあるのか」

「はい、一先ず案内は終わりです。何か聞きたい事は?」

「何か気を付ける事とかあるか? 家のルール」

「特にこれと言ったルールは無いです。あっ、料理が作れるなら偶に作って欲しいです。私がメインで作りますが」

「簡単な奴なら出来る」


 案内が終わり居間にあるソファーに座る


「そういえば下着ってどういうの使ってるんですか? 流石に男用では無いですよね?」

「サイズが合わないからな。女性用を雑に買った」

「……下着もファッションですよー。着飾りましょうよ」

「俺はファッションには興味無い」

「私の貸しましょうか? 色々ありますよ?」

「遠慮します」

「あっ、その装備」

「鳴も知ってたっけ」

「はい、魔法特化の装備ですよね。かなり優秀な」

「階層主の時に使おうかと思ってな」

「成程、高魔力補正、魔力効率……他にも強いですね」


 性能を確認した鳴が言う

 魔法に関する物に特化している性能

 耐久性能は無いが代わりに魔力防御を展開出来る、その為防御面も優秀


「使うべきなんだろうと思うが女性物はどうしても抵抗が……まぁ9割方着てく予定だが」


 9割方覚悟は決めたが1割の抵抗が残っている


「先輩なら似合いますよ」

「似合うかどうかでは無いんだよなぁ」

「戦闘面に関してもリザーリオレム相手なら魔力防御は欲しいと思いますよ。本体の攻撃は重いですから」

「そうだな」

「それに触手の攻撃は早いですから対応し切れるかどうか」

「それに関しては試してみるしかないな。ただ俺はスキル、狛は魔法で何とかなりそう」

「狛さんの魔法ですか。シンプルな身体強化系ですね。シンプル故に強い良い魔法です」

「身体能力自体狛は元々高いしな」


 プロの探索者の鳴の意見も踏まえて作戦を考える

 階層主と戦う日まで動きの確認やら魔導具の確認、通話しながら作戦を考える

 ダンジョン以外にも道場で魔法の動きの練習をする

 そして階層主へ挑戦する日が来る

 狛とはダンジョン前の施設で合流する


「久しく感じるな」

「確かに」

「それ着たのか」

「階層主は全力で挑む必要があるからな」


 ゴスロリ風の装備を身につけている


「似合ってるぞ」

「鳴にも言われたが嬉しくねぇどころか複雑だわ」


 家を出る前に鳴は気に入ったのかこの服を着てる俺の写真を撮っていた


「だろうな、それで速攻向かうんだよな?」

「あぁ、最短で進んで9階層で休憩を挟んで挑む」

「時間は宣伝済みだから間に合わせないとな。今からで間に合うんだよな?」

「開始予定の時間は少し余裕を持った時間にしてる。充分間に合う」


 生放送のため、先に時間の指定をして前日にはSNSで宣伝もしている


「今更なんだが」

「なんだ?」

「階層主ってのはポンポン湧くのか? 他の」

「階層主は特殊でな。1週間に1度、必ず戦える」


 決まったエリアに入ると階層主が出現する

 そのエリアに入った人物の中に1週間以内に討伐している者が居る場合は出現しない


「週ボスかよ」

「それに階層主は一応スルー出来る」


 10階層には遠回りだが階層主をスルー出来るルートがある

 1週間以内に倒していれば問題なく進めるが倒していない場合そのルートを使う

 11階層などで活動している探索者は階層主との戦いを避ける

 割と強いため相当高レベルでもないと無傷突破などは難しい


「倒す必要は無い? なら倒す理由あるのか?」

「まず討伐時の経験値が美味い、それと魔導具や武器がドロップするし素材は中々高価」

「成程、このバックも落ちるんだもんな」

「あぁ、他にも希少な奴が落ちる事もある。それと11階層からは更に強くなる。階層主を倒せる実力があれば問題ないが倒せない実力ではちと厳しい」

「……指標に使えるって事か」

「経験値美味いからワンチャンレベル上がるしな」


 ダンジョンに入って9階層へ向かう

 歩いている時、視線が気になる

 今までの服とは全く違う、その上結構目立つだろう


 ……見られてるな。魔物に集中せぇい……それより


 スカートを手で握る

 スカートを履くのは人生初めて凄い違和感を感じる

 スカートの丈は長いが下手に動けば下着が見えないか心配になる

 男の時ですら他人に見られるのに抵抗があったが今はその時以上に抵抗感を覚える


 ……この事までは考えてなかったぁ。これは前の服の方が良かったんじゃ……


 動きづらくは無いがその点が気になって仕方がない

 自然と歩く速度が遅くなる


「どうした?」

「どうもしてない。早く行くぞ」


 翼の魔法を発動させる

 修復機能が付いており翼の魔法を使っても問題ない

 魔物を倒して10階層のゲートの前で休憩をする、休憩のタイミングで魔法を解除する


「今の時間は……11時か」


 最短であればそんなに時間はかからない

 道中の魔物も少なく瞬殺に近い倒し方をしていた


「少し早いが飯食うぞ」


 コンビニのお握りをバックから出す

 俺はその中から一つだけ手に取る


「1個でいいのか?」

「朝も軽く食ったからな。2個は食える自信が無い」


 ……その1個も無理やりだがな


 全身に緊張が走る

 これから階層主と考えると恐怖も覚える

 勝ち筋はあるし勝てる準備はした、それでもまだ不安は残る

 メンバーを増やした方が良かったんじゃないか、無理を言ってでも鳴辺りに同行して貰った方が良かったんじゃないかと脳裏に様々な考えが過ぎる

 いつも、階層主や強い魔物との戦いの直前は怖いし緊張をする


「そんな少食になったのか」

「腹八分目位が丁度良いんだよ。お前も食い過ぎるなよ」

「問題ない、この程度ペロリと行けるぜ」


 言葉通り1つを手に取りペロリと食べてしまう


「食べ終わったら生放送するか」

「その前にチャンネル名前決めないと」

「考えたんだが思いつかなくてな。もはやそのままで良い気もしてきた」

「ちょっと考えてた奴あるからそれでいいか?」

「良いぞ、ちなみになんだ?」

「2人だからオルトロスで」

「何それ」

「神話に出てくる2つの首を持つ犬」

「悪くないな」

「そんじゃ決定」


 飯を食べ終える

 狛が設定を弄りチャンネルの名前を変える


「配信するぞ」

「ちょっと待ってくれ」

「うん?」


 自身の胸元を掴み深呼吸をする

 息を吐くと同時に目を瞑り数秒後に目を開ける


「行ける」

「OK」


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