翼の魔法


『祈りと怒りの翼』

 詠唱えいしょうをする事で白と黒の翼を複数展開出来る(展開条件あり)

 翼を利用した攻撃、防御、飛行が可能


「めっちゃ便利じゃん」

「問題はこの翼の展開条件だ」

「展開条件?」

「白の翼は祈り、信仰の強さによって枚数が増える」

「あぁ〜、無神教だから無理か」

「怒りの翼は怒りの強さで増えるとなっている。そして祈りが左、怒りが右の翼」

「あぁそうか両方1枚ずつないと飛べないのか」


 片方が展開出来ても飛行は出来ない

 便利ではあるが扱い慣れていない翼など邪魔になる

 だから今まで使っていなかった


 ……祈りは無視して怒りの方なら出せるか。と言っても一度も使った事は無い。1枚出せたらいいが


「翼よ我が怒りに答えたまえ」


 詠唱をする

 背中から1枚の黒い翼が生える


「おぉ翼だ」


 はくはぺたぺた翼を触る

 狛は家の中で魔法を使った事には特に触れない、それよりも目の前の翼が気になっている


「柔らかいな。これが攻撃に使えるのか」

「そのようだな。明日辺り試してみるか。低レベルなら倒せるだろうし」

「頑張れー」


 ……低レベルとはいえこっちもレベル1……


 レベルだけでなく身体能力も下がっている


「なぁ狛」

「なんだ?」

「お前も探索者にならないか?」

「探索者かぁ。誰でも成れる物なのか?」

「なるだけならな。ダンジョン外で持ち運ぶ武器は申請が必要になるが」

「許可降りるのか?」

「前科者でも無ければ基本は問題ない」

「そうか、ならなる」


 狛は基本優柔不断

 いつも最後の最後まで悩む事が多い

 これ程早いのは珍しい


 ……元々興味があったのか?


「もう少し考えてもいいんだが」

「後に伸ばすと余計悩むからな。魔法やスキルはどうやって手に入れるんだ?」

「魔法はレベルが上がれば覚える事がある。適性がある魔法なら低レベルの時点で1つ多ければ3つ覚える。そしてその魔法を使い続ける鍛えるなどでその系統の魔法を覚えられる」


 適性のない魔法は覚える事が無い


「成程、良いな魔法、ワクワクする。レベル上がればバンバン覚えるとかでは無いのか」

「レベルは身体能力の上昇が主だな。ろくに魔法を使わないと魔法は増えないし強くもならない。俺が典型例だな。スキルも戦闘スタイルによって得られるスキルが変わる」

「レベルで上がるステータスも戦闘スタイルが関係するのか?」

「そうだな、魔法特化なら魔法ステータス、近接特化なら近接に必要なステータスが上がりやすい。レベル20まではステータスを選べるからその間に自分の戦闘スタイルを確立してステータスを振り分ける」

「成程、大体理解した。あとは武器と防具かなんか良いの無いか?」

「刀ならあるぞ」


 俺は自分が使っていた刀を見せる

 ダンジョンで手に入った魔法の宿った刀、性能が高く優秀

 刀を使う予定は無い、それなら狛が持った方が良いだろう


「俺の家に武器や防具はあるが……今俺は入れねぇんだよな」

「万全なセキュリティだからなぁ。あ、いや俺入れるかもしれん」

「どういうことだ?」

「俺前借りてたじゃん、その時のやつ」


 いつもダンジョンに潜っている為留守にする事が多い俺は前に少しの間、狛を家を貸していた


 ……あぁキーを渡してたな


 何かあった時用にと鍵をそのまま持たせていた

 その為狛なら入れる、最も主の俺が居ない以上長く居座るのは無理だが入る事は出来る

 その事を忘れていた


「武器や防具だけでも持ってくか。色々あるしな」

「そうだな、なら行くか」

「今からか?」

「今から! 善は急げって奴」

「後から行く先これ持って入っててくれ」

「バック?」

「大容量バック、色々と道具を詰め込める。一応一部出しとくか」


 大容量なだけで限界値はある

 入ってる物の一部を出しておく

 包帯や魔力まりょく回復薬、治癒薬、テントやコンロ、サバイバルアイテムなどを取り出す

 ダンジョンに潜るのは1日だけでは無い、深い階層なら数日〜1ヶ月にも及ぶ

 その為サバイバルで使えるような道具も必要となる


「この本は何?」


 狛がバックから出てきた本を拾い表面を見るが書かれている文字が読めない

 読めない事を表情で表している


「それは治癒の本、本を開けば弱い治癒魔法ちゆまほうが使える」

「誰でも?」

「誰でも可能だ。効果は低いがな」

「便利だな」

「よしこのくらいで充分だろう」


 狛にバックを渡して家に向かう

 俺は途中で休憩を挟みながら向かう

 狛はテンションが上がっていてすぐに見えなくなった

 ガタイだけでなく身体能力も高い狛は本来の俺よりも探索者に向いている


 ……疲れるな……やっぱり


 そこそこ距離があり時間をかけて着く

 先に来ていた狛が武器や防具、魔導具を見ていた

 テンション上がって色々手に取って確認している


 ……魔法関連の魔導具や武器、防具あったっけな


 バックに入れながら確認する


 ……確かこの魔導具は魔法系だったな。これは近接きんせつ系か、これは……なんだこれ……


「本当に色々あるな」

「そりゃ集めてたからな。手に入れた物は何かしらに使えるのがないか取っておいた」

「だからこんなあるのか。ってこれ全部お前が見つけたのか?」

「そうだが?」

「前に気が向いて調べた時こういった装備ってかなり高額取引されてたんだが、どうなってんだ」

「結構強い魔物が落とすんだよな。階層主かいそうぬしとかその辺の魔物が」

「階層主、最低でも数人で挑むやつか」

「別に1人でも挑めるぞ。他の魔物よりかなり強いからオススメはしないがな」


「なぁ、この服はなんだ?」

「どれだ?」

「こいつ」


 狛はゴスロリ風の服を引っ張り出してくる

 その服を見た俺は思い出す

 知り合いが置いていったダンジョン製の防具だと

 そして魔法関連で優秀な魔導具でもあると


「それは……あいつが置いてった奴か」

「これもダンジョン製か?」

「あぁ、そうだ。かなり優秀で魔法に関する補正も入る」

「そりゃ強いな……着ないのか? 今なら着れるじゃん」

「流石に……女性型の服は遠慮したいな……」


 姿は少女になったとはいえ心は男

 どうにも抵抗がある

 優秀なのは知っているしこれからは魔法主体になると考えれば着るべき装備

 しかし、それを俺の心が抵抗する

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