良からぬ輩
寝転がって待っていると扉が開く音がする
「おっ、おかえり」
「ただいまです。疲れました」
鳴は疲れた様子でソファーに座る
「階層主か?」
「はい、今週まだ倒していなかったので急いで10、15、20、25、30の階層主を倒しました。明日35階層の階層主行きます」
「そりゃ疲れるわ。お疲れさん。そういや今レベル何?」
「今69です。後1上がったら40階層の階層主に挑む予定です」
「おぉ、40階層のかあいつは手強いぞ」
10階層以降は5階層ずつ存在する階層主
下の階層に行けば行くほどレベルが上がり厄介になっていく
鳴のレベルが69、それなら行ける階層主はレベル60の35階層の階層主まで
……今日1日で30階層まで行ったのか、流石最速
雷魔法を操る鳴は探索者最速と言われている
雷が如く駆け抜ける
今回のような騒動では鳴のような速度の速い探索者は優先的に仕事を回される
オモイカネはこう言った依頼の報酬をきっちり払う為色んな探索者が名乗りを上げる
「それでイレギュラーは起きたか?」
「いえ、起きませんでした。リザーリオレムで配信時の状況の再現を試したんですがそのまま消滅しました」
「まじか……ならイレギュラーにも一定の条件があるのか?」
偶然、あの状況になる条件が揃った可能性はある
特殊条件があるのなら今まで発見事例が無かった事にも頷ける
……イレギュラーの発生条件に決まりがあるなら……パーティが2人以下でレベル10以下か? だとするなら次俺が挑んでもダメだし、試すのは難しい
イレギュラーが起きるリスクがある事を承知でレベル10の探索者に任せる訳には行かない
リスクが大き過ぎる、俺が遭遇したのと同じだった場合、扉が閉まり逃げられない
「圧倒した場合は現れない可能性はありますね」
「有りそうだな。だとすると最悪だが」
「はい、そうなると高レベル探索者では情報を集められないです。他の高レベル探索者が遭遇していればいいですが」
「そうだな」
「15階層の階層主はどうする予定ですか?」
「15階層なぁ」
考えていた行動としてはレベル20になった後、準備を整えて階層主に挑む予定だった
11階層から14階層に出てくる魔物のレベルは11から20まで
9階層までとは異なる
今回のようなイレギュラーが起きる事を想定するなら階層主のレベルである20で挑むのは危険
……それまでに出てくる情報次第だが15階層は余裕持って挑むか
「まだ考え中」
すぐには20にはならない、数ヶ月かかる予定
その時までに考えておけばいい
「腹減ったからなんか作る」
ソファーから起き上がり台所に向かう
「あっ、私が作ります」
「疲れてるだろ? 俺はだいぶ体力回復したから、まぁ簡単なのしか作れないが」
「それではお言葉に甘えて」
冷蔵庫を漁りある物で簡単な料理を作る
料理は鳴からの評判は良かった
……調味料は偉大
疲れが溜まっていた事もあり早めに眠りにつく
翌日
朝起きると鳴が出かけようとしていた
昨日、35階層の階層主を倒しに行くと言っていた
「気をつけろよ」
「分かっています。行ってきます」
鳴はダンジョンに向かっていく
姿が見えなくなるまで見送る
……今日は二度寝するか。朝起きたがまだ眠いわ
二度寝をして昼頃に起きる
カップラーメンを食ってニュースを見る
「大きい規模の火事だなぁ。住民は偶然外にいたのか運良いな」
呑気にニュースを見ていると携帯が鳴る
……誰だ?
滅多に連絡が来ない人物
それもメールでは無いとなると緊急の何かだろう
電話に出る
「もしもし」
『おや、我が友の声ではないな。彼は居るか?』
携帯から中性的に近い声がする
調、高レベル探索者の1人で変人の代表格のような人物
「あぁ……居ない」
『ふむ、そうか、なら伝言を頼むとしよう。今話題のイレギュラーに紛れて良からぬ事を行おうとしている輩が居る。その件で力を貸して欲しいと伝えてくれ』
「分かった」
『では』
電話が切れる
……良からぬ事? ダンジョンでって事だよな
イレギュラーが起きたのは昨日の事だ
話題になったからにしては行動が早い気がする
……偶然と考えるべきか便乗したと考えるべきか……くっそ、俺は参加出来ねぇんだよな
高レベル探索者は今イレギュラー捜索に力を入れている
その為、他の事への意識が薄くなっている
調が言った事に関する情報を集めたいが今の俺では捜索も出来ない
……これは楸さんに伝えるか。ワンチャン楸さんなら何か情報を掴んでる可能性がある
既に俺の素性を知っている人物、それなら気軽に頼れる
楸さんの連絡先は知らない
だが楸さんなら今日も施設で仕事をしている筈、あの人なら今の状況からして進んで連勤する
急いで支度をしてダンジョン前の施設に向かう
ダンジョン前の施設に着いてすぐに受付に行く
「今日は何の御用でしょうか?」
「楸さんに聞きたい事があるので呼んで貰えますか?」
「楸さんですね。少々お待ちください」
受付の男性が電話をし始める
「はい、はい、分かりました。それでは部屋に案内します」
楸さんの居る部屋に案内される
受付の男性が扉をノックする
「楸さんお客様です」
「入りたまえ」
扉を開けて部屋に入る
楸さんは大量の本を山のようにおいて1冊ずつ読んでいる
「失礼しました」
男性はすぐに頭を下げて受付に戻っていく
「聞きたい事とはどのような事だ?」
本を読みながら聞いてくる
「少し前に調から連絡が来た」
「ほう、調君からか。となれば良からぬ事を企む輩についてかな」
「知ってたか。調が俺に助力を願ったって事は相当の事があるのか?」
並の相手であれば調1人で事足りる
それなのに力を借りようとしたとなれば調1人では対処しきれない何かがあると考えるべきだろう
「1人の高レベル探索者と数人の探索者が関わっている可能性が高い。それもそこそこのレベルの探索者」
「高レベル探索者か。成程、今の俺じゃどうしようもないな」
「いや、今の君だからこそ出来る事がある」
「出来る事?」
「配信活動している君が秘密裏に情報を集めて欲しい」
「成程、配信者や探索者と関わって裏を探るか。分かった。やる」
バレればリスクはあるが情報は少しでも多く必要となる、誰かがやらないとならない
それなら低レベルの警戒されづらい俺は適任
……狛には秘密にしておくか。単独行動するか。念の為に詠見に狛の周辺の警戒を頼むとして
「君ならそう言ってくれると思ったよ」
「あのような事件は二度と起こさせてはならない」
強く拳を握る
「我々とてその予定だ。問題が起きる前に潰す。奴らの存在を影で抹消する。表沙汰になる前にだ」
「了解、聞きたい事終わったから帰るわ」
「おや、ダンジョンには入らないのか?」
「昨日のイレギュラー戦の体力が戻ってないから暫くは入る予定無い」
「それもそうか」
「忙しい中失礼した」
部屋を出て鳴の家に戻る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます