対人戦闘
決闘が始まると同時に複数のスキルと翼の魔法を発動させる
ステータス関係のスキルはダンジョン外でも使えば身体能力の上昇が出来る
「翼よ我が怒りに答えたまえ」
勝てると思っているから、格下だと考えているからこそ生じる油断は俺にとっては想定内の好機
……スキルも魔法も無しって舐めプかぁ
俺が相手より格下なのは認めるが露骨な舐めプには少し苛つく
「準備は出来たか?」
「待ってくれてたのか優しいな」
「準備不足で負けたなんて言われたくないからな」
「それはこっちのセリフだがな」
ナイフを構えて突っ込んでくる
「早い」
「圭介さんが先に動いた!」
「流石! 幹部の中でも速度が高い圭介さんだ」
「ユエさんは遅れたが大丈夫なのか?」
「圭介さんは自分のペースに乗ったら強いぞ。崩せないと押される」
スキルも魔法も使っていないが相手は俺より早い
呪いのせいで身体能力が低下している俺はスキルを使ってもその速度に届かない
「翼を使ってもリーチの差があるな」
「これは無理だろ。リーチも経験も圭介さんが上だ」
「レベルやステータスの影響を受けないとはいえ元々の差が……」
「この決闘降参するまでだろ?」
「すぐ降参するかな?」
「ユエさんが仕掛けた側なんだろ? なら降参しないんじゃないか?」
「こりゃ最悪酷い事になるぞ」
戦いを見ている中で俺の勝ちを考えている者は2人しか居ない
そのくらい本来なら絶望的なのだ
身長差と武器の差もあって相手の方がリーチが長い
回避はせず俺も真正面から挑む、回避すれば相手のペースに乗る事になる
そうなれば押し負けるとは目に見えている
リーチが長いと言ってもリーチの差は互いに胴体を狙っていた場合の話、圭介は狙っているが俺は胴体なんて狙っていない
狙っているのはナイフを持っている方の腕
前に出た腕ならリーチが短くとも届く
「速刀刺突」
素早く振るわれたナイフが振り下ろされるよりも先に翼が腕を突き刺す
そしてそのまま翼を下に振るう
圭介の腕が斬られ血を流して宙を飛ぶ
「う、腕がぁぁぁぁ!!」
「思ったより楽に行けたな」
圭介は腕を押えて叫ぶ
腕を切り飛ばされた激痛で呻く
「は?」
「なっ……」
「嘘ぉ」
「馬鹿な」
「今何がどうなって」
「腕が切られた?」
幹部達は驚く、普通に勝つと思っていたから想定外の出来事に動揺する
詠見は笑みを浮かべる、詠見は俺が負けるとは思っていない
「何もおかしな事は起きてないわぁ。ナイフより先に翼が腕を貫き切り裂いただけの話」
「はい、その通りです。何もおかしな事は起きていません」
「優一どういう事だ? 身体能力も戦闘経験も圧倒的に圭介の方が上だ。何故後れを取る。お前が何かしたのか?」
「……さぁ、何故でしょう? 少なくとも私が悠永様に情報を渡した訳ではありません」
「一手で勝負が付いた」
俺はすぐに翼を首元に添える
このまま軽く振るえば首を切り裂ける
「降参しろ」
降参を促す、これ以上の戦闘は意味が無い
「ふざけんな」
「ならここで殺すぞ」
「何を言って」
「俺が提示したルールでは決闘相手の殺害は敗北にはならない。それはお前も理解していただろ? だから俺にはお前を殺す選択ができる」
「はっ、イキがるな餓鬼、殺せるのか?」
「試すか?」
翼を首に押し付ける
……殺した事ねぇのはてめぇだろうが
優一に聞いた質問は幹部達は人を殺した経験があるかどうか、そして彼らは罪人であっても殺害した事がないと言う
俺は多くの対人戦経験と殺害経験を持つ
対人戦において圧倒的な経験の差がある、この勝負はその差が響いた
どれだけ強くても慣れてない人間ならナイフで人を刺すのには抵抗が起きる
ダンジョン内部ならステータスが適用されて簡単には死にづらいが外はナイフ1本、一撃あれば殺せる
慣れている人間は意思があれば迷いも抵抗も無く刺す事が出来る
圭介からは抵抗からの僅かな鈍りが生じ俺には生じなかった
だから先に振るわれたナイフより早く翼が届いた
「もう終わりだ。降参しろ」
「まだ俺は……」
「そうか」
首元から翼を離す
そして翼を勢いよく振るい圭介を結界まで吹き飛ばす
「眠っとけ」
圭介は結界に叩きつけられ気絶する
「対人戦闘じゃそこらの探索者に負ける気はしねぇな」
「戦闘続行不可としてユエの勝利!」
勝敗が決した
すぐにスキルを解除する
……複数のスキル使ったのきついな。かと言って使わなければ負けてただろうしちゃんと鍛えねぇとなぁ
「まじか」
「圭介さんが負けた」
「うぉぉ、まじか……」
「圧倒したな」
「すげぇ、どんでん返しだ」
結界が解除された、詠見が解除したのだ
結界が解けた後、直ぐに詠見の元へ行く
「お疲れさん」
「クランリーダーさんよ〜、治療早よ」
「分かってるわぁ」
俺の右腕に手を翳して詠見は詠唱を始める
「祈りを我が手に、願いを汝に、願いは祈りによって成就する、聖者の祝福」
治癒魔法を掛けられる
見る見るうちに腕が治っていくのが分かる
詠見が治癒魔法を掛け終わった後、腕を動かして確認する
軽くジャブをする
痛みは一切無く動きに支障も無い
……よし、これなら問題無くダンジョン潜れるな
「治療費は幾らだっけか?」
「タダでえぇよ。うちのが迷惑掛けたし」
「そうか」
「それにしても腕切り落とすなんて加減無いわねぇ。加減くらいしたら良かったのに」
「加減してたら負けていたのはこっちだ。色々不利な状況だったし殺さなかっただけでも充分だろ」
別に殺す気自体は元々無かったが腕を切り落としても動くようなら手足のもう1本くらいは切り落としていただろう
もし相手が舐めプをしてこなかったなら本気で殺す気でやらないと勝てなかった
「腕程度ならお前なら治せるだろ」
「まぁねぇ」
「そんじゃ用も済んだし帰るわ、じゃあな」
「またねぇー」
「お疲れ様でした」
視線が集まっているので早足で施設を出る
施設を出た後に腕が治った話をする為に狛に電話をする
『どうした?』
「詠見に腕を治してもらった」
『おぉ、それは良かったな。だが治ったとは言え数日は安静にした方がいいぞ』
「そうだな。今回は少し長めに休み取るか。階層主戦の疲れもあるし」
『普通の方だけでもだいぶ疲れたからな。お前に関しては2回戦あった訳だし』
……さっき、実質3回戦目やったしな
「次のダンジョンアタックは11階層行くから万全にしたい」
『だなぁ。11階層は森系で合ってるか?』
「あ〜、なんだっけな。多分、森系のダンジョンで合ってる」
全部の階層を覚えている訳では無い
……森だった気もするが森は16階層からだった気もする
うろ覚えで思い出そうとする
『前に動画で見た気するんだがどのチャンネルだったっけな。確か大きな虫が出てきた気がする』
「森系の階層だったら虫系の魔物は居るぞ。蜂とか蜘蛛とかその辺が」
『うわぁ、それは嫌だな……』
「あれ狛、虫苦手だっけ?」
『別に普通に出てくる虫くらいなら大丈夫なんだが大きいとなると苦手じゃなくてもキツくね?』
「あぁ、確かに出来れば長時間、間近で見たくは無いな」
虫嫌いなら発狂しかねない程の虫が出てくる、虫以外にも鳥系や獣系の魔物も居るが虫の印象が強い
『だろ? 覚悟はしとくわ』
「まぁいざとなればお前の持つ短剣で焼けばいい」
『火が弱点か?』
「虫系は基本火系統がよく効く」
魔物の種類や個体によって弱点が存在する
虫系統は基本的に火が弱点なケースが多い
『なら他にも炎系列の力の魔導具あれば持っていくか』
「それもありだな」
『いつにするか決めたら早めにメールしてくれよ』
「分かった」
電話が切れる
鳴の家に着いた後鍵を回収して開け中に入る
鳴が帰ってくるまでソファーに寝転がる
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