クラン

「クラン名は月詠つくよみ

「……月詠」


 そのクラン名は知っている

 詠見が率いているクランだ


 ……詠見の所が?


 詠見の所は特殊で勧誘するケースはほぼ無い


「月詠は勧誘をしないはず」

「よく知ってるな。そう、クランリーダーの意向で本来なら勧誘をしない。クランの方針が来るもの拒まず去るもの追わずだから」


 基本的なクランはクランメンバーが勧誘した人物もしくは厳正な審査の元、認められた者しか入れない

 しかし、詠見の所、月詠は違う

 来るもの拒まず去るもの追わずと言う方針を取っている

 最も流石に誰でもとは行かずレベル9以下の探索者は入れなかったりする一定の制限はあるがその条件さえ満たせば誰でも入れる

 その方針で成り立っているのは問題行為を起こせば詠見直々に処罰するから

 その結果、最もクランメンバーが多いクランとして有名である


「なら何故勧誘を」

「クランリーダー、詠見様が君を勧誘するようにって指示を出しててね」

「は?」

「詠見様と知り合い?」

「一度ダンジョン内で会っただけ」

「偉く気に入ったらしいんだよね。それで見つけたら勧誘しろって」

「断る」


 詠見が何を考えているか分からない

 変な事をするような奴では無いと知っているが本当にそうだとしても行動が怪しい

 そして本当に月詠に所属しているメンバーかも分からない

 ここは断るしか選択は無い

 その時丁度狛が更衣室から出てきた


「早いな、もう少し聞いて」

「相方来たから」


 そう言って俺は狛の元へ行く

 優一は追いかけては来ない


「どうした?」

「勧誘されたから逃げてきた」

「勧誘? パーティの?」

「いやクラン」

「クランって確か探索者が集うグループみたいなやつだよな?」

「そうだ」

「入らないの?」

「色々と怪しいから入らん」

「どこかに入る予定は?」

「良いところが有れば入りたいが当分はどのクラン目指すとかは考えてない」

「成程」

「防具は成程そうしたか」


 ダンジョン製のコート型の防具を羽織りその下に別の防具を着ている

 下は長ズボン型

 手袋型と帽子型の装備も身につけている


 ……そういやあったな


 防具を複数着る事は出来る

 しかし、多く着ればその分戦闘時に邪魔になるケースがあり複数付けることは余り無い


「ただダサいな」

「性能重視編成はそうなる運命、武器も幾つか使っていいか?」


 装備の性能は確認出来る

 その事は伝えていなかったが自力で見つけたようだ


「構わんが扱えるのか?」

「あくまで選択肢として欲しいだけ」

「ならバック持ってけ。大きい武器はバック経由しないと持ち運べないだろ」

「良いのか?」

「俺は急ぎで使わんからな」

「助かる」


 バックから小さなポーチを取り出し付ける

 必要最低限のアイテムを入れている

 そしてダンジョンに向かう

 レベル5以下の魔物は軽々と一蹴して何事もなく6階層に着く


「リザーベドル居なかったな」

「珍しいからな。あれは本当に凄い偶然だ」

「そうか」

「戦いたかったのか?」

「試したい事があったから」


 6階層を進む

 ドローンを飛ばす

 レベル6の魔物が現れる

 俺は翼を出して準備をする、すると狛が前に出る


「ちょっとやりたい事がある」

「分かった」


 後ろから援護するように構える

 狛が魔法を発動させ剣と短剣を取り出す

 短剣は念の為に持たせていた短剣

 地を蹴り突っ込む

 真正面から突っ込む


「燃えろ」


 短剣の力を使う

 短剣から炎が放たれてる

 魔物は飛んできた炎を回避するが接近してきた狛の剣による一撃で切り裂かれる


 ……試したいってのは炎の事か。確かに一度も使った事無かったな


 狛は短剣を一度も使用していなかった


「よし、やっぱりこっちの方が性に合うな」

「性に合う?」

「俺ってゲームだと装備や武器の性能ガン積みで戦うんだよね」

「あぁだからお前のキャラダサいのか」


 狛のゲームキャラは何度か見た事あるが見た目を完全に捨ててるような見た目をしている事が多い


 ……装備の性能重視か成程、戦いにおいて見た目よりも性能だからな


「性能の為なら見た目は捨てなければならない……いやでもスキンあるゲームはスキン使ってるし……」

「今まではなんで使わなかったんだ?」

「それはその……怖かったから、実戦は体験した事無かったし」

「ダンジョン以外で実戦経験あったら中々おかしいぞ。もう慣れたのか?」


 個人的にそのまま力特化で行くと思っていたから驚いた

 魔法も身体強化系、今までの戦い方でも充分相性は良かった


「慣れたというか怖いのは怖いんだけど性に合わないやり方の方が危険だと思ってな。少しは慣れたしちょっと変えてみようと思ってな」

「ちょっと所じゃないが」

「はっ、確かに」


 ……十分強かったんだがな。スタイルに関してはだいぶ向いてると思ったんだが


 経験者から見ても充分強かった

 しかし、自分のやり方で行く方が良い

 急に変えた事には驚いたが本人が良いのなら問題は無い


「自分に合った戦闘スタイルをってのは俺が言ったんだしな。その戦い方が良いならその方がいい」

「折角装備沢山あるんだし使うしかないとも」

「余り雑に使うなよ、壊れるからな。後手入れもしろよ」

「気をつける。斬り合いは自動修復ある奴メインで使うか」

「自動修復あるのは雑に使っても大丈夫だ」

「雑に使うわ」


 6階層の魔物を狛1人で倒していく

 2本の短剣の力を使い攻撃を仕掛けた後片方をすぐにしまって剣を抜く

 もう一度撃って接近して切り裂く

 複数体戦闘も武器の能力を使い格闘を混ぜて倒していく


 俺は狛が身に付けている装備の性能を調べる


 ……コートは耐久補正、下に着てる服は弱ステータス補正、ズボンが敏捷補正、帽子は魔力補正、手袋は力関係に補正、確かに性能重視って感じの編成だな


 軽い武器をコートに仕舞い器用に武器を変えて戦っている


 ……確かVRってのがあったな。狛はあれのゲームもやってたな


 その動きは手馴れている

 技術はゲームで鍛え身体能力は趣味の筋トレで鍛えている

 性能を見終えて参戦する

 狛の背後に回った魔物に翼を叩き込む

 狛が自由に動き俺が合わせる


「戦いの基礎は忘れるなよ。だが自由に暴れろ」

「良いのか?」

「合わせるのは得意だ」

「了解」


 武器を幾つも切り替えて狛は戦う

 蹴り飛ばし無防備になった魔物に対してハンマーを取り出してぶん殴る

 魔物の攻撃は剣で受けて力を込めて弾く

 弾かれた魔物を俺が翼を叩き付ける


 そして7階層へ続くゲートまで着く


「休憩だ」

「鎧より軽いから疲れないな」

「あれは重すぎるんだよ」

「確かに、これなら魔導具色々付けたいな」

「最終形態歩く度にジャラジャラ言いそう」

「そこまでは……状況次第だな。耐久も防御魔法とか付与されてる魔導具あれば」


 耐久補正の装備を身に付けていても耐えれるとは限らない


「あるな。確か何個か持ってたと思うぞ。にしても今回の動画はインパクト強くなるな」


 狛が全身鎧から服装を変えた

 服が変われば印象もかなり変わる

 その上戦闘スタイルもだいぶ変わっている


 ……これは再生数伸びたりするかな


「確かに装備一新したしな。丁度良いしお前も変えれば?」

「検討はしてる。検討の検討くらいだけど」

「そうなると新衣装は暫くは無理そうだな」


 俺は魔力補正の魔導具を身につけている程度

 ステータスが下がっているせいで余り大きな効果を得ている感覚は無い


 ……10階層行く前に変えるのも……悩む


「そういやさっきレベル上がった」

「8か」

「10まで後2レベだな」

「今のペースならだいぶ早い。焦らず行く」

「早いのか」

「そもそも同レベル、格上を連続で倒すのは難しい。強さじゃなく単純に格上相手への恐怖」

「あぁそうか、そうだよな。俺も怖いしその感覚は分かるまぁ……」


 狛は何かを言いたげに俺の方を向く


「なんだ?」

「ナンデモナイ」

「そうか、休憩終えて行くぞ」


 休憩を終えて7階層へ行く

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