「あれも魔導具か」


 先に入った狛が言う

 なんだと思いゲートに入って狛の視線の先を見る

 ゲートのある広場の先の通路にローブを身に付けた人物が立っていた

 ぞくりと背中に悪寒が走る

 あれはやばいと直感で理解する


 ……なんだあれは殺意? やべぇ


「狛戻るぞ」

「えっ?」


 狛を引っ張って6階層に戻る


「どうしたんだ」

「あれはやべぇ」

「やべぇって何が」

「雰囲気だな。逃げるぞ」


 地上を目指して走ろうとする

 後ろから音がする

 足音

 追ってきている

 走っているが恐らくすぐ追いつかれる

 そう思っていた時、雷が走る

 横に雷が駆け抜ける

 近くで音が轟く、雷が落ちた時ほどの音はしないが似たような音が辺りに響く

 雷が駆け抜けた瞬間、ローブの人物は目の前に立っていた


 ……雷魔法、それも身体能力強化の魔法! 鳴と同じタイプか


 その人物は剣を持っている

 顔が見えないどころか体格も分からない

 恐らくローブも魔導具、仮面と似たような魔導具だろう


「狛、下がってろ」

「俺も」

「ダメだ、あれは無理だ」


 狛の持ってるバックから刀を取り出す


「……刀」


 殺人鬼に使った戦法を取ろうとする

 スキルで無理やり底上げしたステータスで放つ八重の剣で切り裂く

 間違いなく殺人鬼より格上

 通じるかは分からない

 スキルを使いステータスを底上げする

 刀を抜いてスキルで八重の剣を放つ


 高速で繰り出す一撃目

 現状最速の一撃、ここから残り七連撃を叩き込む

 それしか勝ち目は無い


 ガキッン

 相手の振るった剣が刀にぶつかる、いや、当てられた

 高速で振るった刀に正確に剣をぶつけられた

 そしてそのまま剣が振り切られる

 刀が弾かれる


「ぐっぁ……」


 持っていた両腕に衝撃が流れる

 手が痺れる

 咄嗟に腕は使い物にならないと考え翼を構える


 〜〜〜


「てめぇ!」


 戦乙女の祝福を使って魔法を使い突っ込む

 怒りに身を任せての突撃、それは見えない壁に阻まれる


「なんだこれ、邪魔だ!」


 剣を叩き付けるがビクともしない

 何度も切りかかるが傷はつかない


 ……硬ぇ、なんだこれ魔法か!? 防御、結界? クソが!


 結界に蹴りを入れる


「それは突破出来んよ」

「……確か詠見だったか」


 見覚えのある人物がいた

 詠見、悠永の知り合いであり高レベル探索者


「そやでー」

「どういう事だ?」

「どう言う……うーん主は知っているんでは?」


 詠見は一瞬で距離を詰める

 その動きは一度見ている

 高レベル探索者、勝てる気はしないが

 魔法で強化した身体能力で剣を振るう


「危ないわァ」


 何かに止められる

 剣先を見ると薄透明な何かに剣が止めていると分かった


 ……障壁か


「何をだ?」

「あの子の事」

「あぁ」


 何となくだが予想が付いた

 悠永の関係者による行為、詠見は接触したあの1回で何かに気づいていた

 恐らく少女の正体について

 そして今日行動を取ったのなら昨日何かあったのだと予想は付く


 ……昨日と言えば殺人鬼、その殺人鬼も確か悠永の後輩が倒したんだったか


 剣を仕舞う


「後であいつ1発殴らせろ」


 後ろを親指で差す

 そこにはローブの人物が立っている

 理由は分かったが少なくとも殴らなければ気が済まない


「女の子だけど?」

「知るか。やり方考えろ馬鹿が」

「馬鹿? わらわに言ってるのかしら?」

「あぁそうだが? 高レベル探索者だからって調子に乗ってんなよ?」

「は?」

「あ?」


 喧嘩腰で言い合い睨み合う

 予想した通りなら事情は分かるがやり方が気に入らない


 〜〜〜


 ……まだ残ってる


 スキルの負荷はまだ来ない、まだ動ける

 地を蹴り翼を振るう

 軽く避けられる


 ……攻撃はしてこないのか?


 目的が分からない、何故か攻撃をしてこない

 距離を取ろうと後ろに飛ぶとローブの人物は剣を振るう

 再び音が轟く

 そして雷の斬撃が壁を切り裂く

 雷の余波が仮面に当たり破損して落ちる


 ……この技、まさか、いや流石に無いよな。あと一度は動けるな


 脳裏にある可能性が過ぎるがすぐに振り払う

 速刀刺突をスキルで放つ

 高速の突き、素早く接近し繰り出す


 ローブの人物は剣で軽々と防ぐ


 ……ビクともしない


 弾かれ淡々と振るわれた剣で翼が切られる

 翼に痛みは無い、切られても問題は無いがもう翼は出せない

 翼は出す時に魔力を消費するがその分の足りない

 ステータス移行の効果で魔力を敏捷に回している

 その為魔力が足りない

 そしてスキル多重発動及びステータスを無理やり伸ばした負荷で膝をつく


 ……タイムアップか


 短剣を持とうにも両手が痺れて思う様に動かせない


「何者だ」

「…………」

「その技は知り合いが使っていた物に似てる」

「技名は?」

「確か雷一閃らいいっせんだったか」


 雷の魔法を操り近接主体で戦う人間

 1人だけ知っている

 結塚鳴

 近接主体ではあるが近接特化では無い

 主に身体強化系統の雷魔法を使うが魔法も複数の派生、進化を習得している

 魔法、近接両方使える怪物

 歴やレベルこそ皇さんや詠見クラスには劣るがそれでも充分強い


「探索者の知り合いが多いのですか」

「多くは無いがまぁ居るな。何が目的だ?」

「目的は確認」

「確認?」

「貴女の生配信を見た」

「リスナーって奴かそれは嬉しいね」

「あの時もさっきもあの技を使ってた」

「あの技?」


 ……あの時使ったのは速刀刺突、普通に見る限りだとただの突き攻撃なんだが


 確かに俺が編み出した技だが類似した技は多くある

 寧ろそういった技を真似て編み出した技


「速刀刺突、最初の技は恐らく八重の剣、何故使える?」


 剣先が首元に当たる

 ひんやりと冷たい刃

 言葉の選択を間違えたら死ぬと理解する


 ……くっそ、どう答えればいい

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