レベル2

「ハンマーの間合まあいを理解しろ」


 戦闘時の反省点を見つけて狛に伝える

 粗を見つけて口酸っぱく言う

 俺は教えるのに慣れていない、だからこそ多くを言う

 その中で狛自身が最適を見つけられれば良いが


「間合い?」

「間合いは分かるよな?」

「剣の間合いとか言うもんな、攻撃範囲だろ」

「俺が言っているのはそれだな。リザール戦で無用に踏み込んで懐に入られただろ」

「あ、あぁそうだな。あれはビビった」

「その武器は持ち手が長い。その分振り回せば強いが懐に入られると弱い」

「なるほど、その場合は短剣か?」

「抜けるならな、その武器は両手武器りょうてぶきだ。片手で扱える重量では無い。咄嗟に出した蹴りは正解だ、怯ませて追撃ついげきか下がれ。攻撃する場合は決して弱っているからと深追いはするなよ」

「重量はレベル上がれば行けそうだがな。分かった」

「ゲームと違って力に全振ぜんふりなんて出来てもするなよ。死ぬぞ」


 俺は狛ならやりかねないと考えて先に注意する

 レベル20までは選べるという事もあって1つのステータスに特化させる人は多い、それでもある程度は他のステータスに振る

 戦闘スタイルによっては勝手にレベルが上がれば特化型のステータスになる


「あっ、先生! ステで質問」

「先生では無いがなんだ?」

「ステータスは力、魔力、耐久たいきゅう敏捷びんしょうの4つだけど体力や魔法攻撃、器用みたいなのは無いのか?」

「無いな。体力ってのは生命力かそれは上がらない。ただ耐久を上げれば肉体の強度を上げられる」


 壁役は耐久を底上げして攻撃を防ぐ

 耐久に特化した者は並の攻撃ではビクともしないと言う


「耐久か」

「魔法の威力は使用する魔力と魔法の性能に依存する、魔力は魔法を多く使うと自然と増える。器用は知らん訓練じゃね?」

「いきなり雑、そんじゃスキル」

「スキルは言った通り戦闘スタイルによって変わる。例えばだが俺のスキル縮地は対象に高速で接近するスキルだ」

「縮地って色んなゲーム出てくるあれか」

「確か何かの武術の歩法ほほうだった筈だが、これを得た時は縮地に似た行動を取っていた。素早く敵に接近を結構な頻度ひんどで行っていたら習得した」


 スキル縮地は突然手に入れた

 俺自身よく分かっていない

 探索者の掲示板と言われる情報共有場所ですらスキルの正確な取得方法は分かっていない

 武器に関するものならその武器を使い続ける事で得られるがそれも個人差があると言う


「スキルに適した動きをしないと習得出来ない。それとも……自分の技がスキルに変化する?」

「体感では自分の技がスキルに変化するの方だな。縮地や剣術の心得のようなスキルもあるが俺独自の技がスキルとなったケースもある」

「どんな技なんだ?」

「……言わん」


 技は独自に名前をつけていてスキルにもその名前が使われている

 自分で使うなら別に問題ないがそれを他人に聞かれるのは恥ずかしい


「スキルは得たら突然強くなるなんて物では無い。あくまで自身の技術の延長線と考えた方がいい」

「成程」

「休憩が長くなった、倒し行くぞ」

「おー」


 立ち上がり魔物を探す

 そして1体なら狛1人、複数体なら1体を分断後、残りを俺が担当する

 翼に慣れるまで短剣も使って倒していく

 そしてレベルが上がる

 レベルが上がると感覚で理解する


 ……これでレベル2か。次は狛のレベルだな


 魔物との戦いに慣れたのか時間をかけずに倒している

 狛は物事を覚えるのが早い


 ……もう2体同時もやらせるか……いやレベル2になってからだな。焦るな


 頭を軽く叩く

 狛は優秀だが戦闘の初心者、優秀だからと言って焦ってはならない

 まずはレベル上げてステータスを伸ばす


 ……魔法に特化させるか。呪いでステータス半分なのが辛いな


 ステータスを振り分ける

 しっかり呪いの効果で魔力のステータスも下がっている、俺の翼の魔法は込める魔力によって翼の性能が変わる

 つまり本来込められる魔力量の半分という縛りがあるという事


「近づいてきた魔物も倒したぞ」

「そうか」

「何かあったのか?」

「レベルが上がった。ステータスを魔力特化で振る」

「そうか俺より数倒してたもんな。早く上げたい」

「焦るな、後2体とかでレベル上がるだろ」


 魔物を探して2体倒す

 すると狛のレベルが上がる

 狛はそれに気付いたようですぐにステータスを確認する

 後ろから背中を叩く


「まずは周囲の確認をしろ」

「あっ、そうか」

「ステータスを振るのも取っとくのもありだ、戦闘スタイルは決めたか?」

「……まだ取っておきたい」


 狛は真剣に考えている

 レベル20までのステータスは高レベルになればそこまで影響は出ない

 だが序盤中盤のレベルではその差が響く

 下手に決めないのは正解だ


「そうか、ならそれでいい」

「ステータスを振らなくても戦えるのか?」

「言ってなかったな。仮ステータスがある。今の戦闘スタイルのステータス上昇がな」


 レベル20まで存在する仮ステータス

 現在の戦闘スタイルに寄ったステータスになる

 そのためレベル20まで振り分けなくても戦える


「成程、それは助かる」

「この仮ステータスに振り分けるステータスを上乗せは出来ないから注意しろよ」

「気を付ける。2になったがここでレベル上げか?」

「レベル上げでは無いが経験値集めと軽い戦闘訓練をする」

「戦闘訓練?」

「まぁ魔物戦に慣れろって事だ。1階層はレベル1しか居らず弱いが種類が多い。それに少ない数で群れてる魔物もいるからうってつけだ」


 俺は助けに入れる位置で狛の戦闘を観戦する

 翼の練習で何体かの魔物も倒すが基本狛の動きの確認


 ……鎧があるからと言って無闇に攻撃を受けないのはあいつの性格か


 避けられる攻撃は避けて不利になったら一旦下がるなど引き気味に戦う

 それでも自慢のフィジカルで魔物を倒していく

 腕力や筋肉に補正があるとはいえ元々力が強くないと出来ない芸当


 戦闘音を聞きつけて近づいてきた魔物を翼で薙ぎ払う

 翼は解除せず維持し続けいつでも戦闘に入れるようにしている


「魔法系のスキルが欲しいが魔力が少ないから余り下手に使えないな。困ったな」


 俺のスキルは近接系のみ、今でも使えるスキルは幾つかあるが使えないスキルも多くある

 例えば剣術の心得、これは剣を使っていないと効果のないスキル

 他にも独自の技はほぼ近接攻撃系であり扱うには高い身体能力が必須となる


「…………」


 狛の姿を確認する

 ハンマーで2体同時に薙ぎ払っている

 接近されると蹴りを入れて蹴り飛ばし振り上げたハンマーを叩き付ける

 見たところ、2体同時も余裕のようだ


「慣れてきたな。休憩を挟んだあと2階層行くぞ」

「流石に少し疲れた」

「だろうな」


 狛はその場に座り水を飲む

 俺も座り水を飲む


「2階層になると何が変わる?」

「レベル2以上が出てくる。気を付けるのはレベル5の魔物」

「レベル5かいきなり強いな」

「稀に出てくる。殆ど出会う事は無いが出会ったら即撤退だ」

「そんな強いのか?」

「レベル5の中でも最上位の魔物だ。レベル2ではまず勝てない」

「どんな魔物なんだ?」

「2m程度の虎だ。確か毛の色は緑、2階層も平原エリアだから擬態ぎたいしてる」

「それは厄介だな」

「油断した初心者が襲われる事が多い」


 休憩を終えて2階層へ向かう

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