雑談

 地上に戻った後狛は更衣室で着替えようとするが止める


「その服なら別に着替えなくていいと思うぞ」

「そうか?」

「全身鎧は運転できなかったり邪魔になるし目立つからダンジョン前で着替えさせてただけで俺みたいに家で着て来る奴は多い」

「成程、ならこれからそうするか。タイミング悪いとあそこめっちゃ混むからな」

「鎧付けてる奴がよく使うから帰りはめっちゃ蒸し暑いしな」


 更衣室は蒸し暑い

 結構使う人数が多く鎧を身につけてる人が多く使うせいで汗臭いわ熱いわで評判が悪い

 そのため鎧型でも無ければ家や別のところで着てから来るなどのケースが多い


「そうなんだよな」

「その防具の調子はどうだ?」

「もう少し色々試したいが俺のやり方に合ってる」

「性能重視ってのは前にもちらほら見た事はあるが全員一ヶ月後には大人しく装備揃えてたがな」

「何故だ?」

「ダサいってのは結構響くらしい、まぁ性能面でもゴチャゴチャしてて動きづらいとか付けすぎて重くなったとか」

「あぁ、その辺はしっかり考えとかないとな。一瞬で装備を付け替えるみたいなスキル無い?」

「聞いた事は無いがあってもおかしくは無いな」

「なら少し試すか」

「やり過ぎて戦えないとか辞めろよー」

「わーってるって」


 車に乗り家に戻る

 家に帰ってからローブを外しバックから出している防具や武器を狛は確認する

 その間ソファーに寝転がる

 趣味はダンジョン潜り、普段は特にやる事は無い


「なんかやるか? ゲームとかも良い気はするが」


 狛のゲームを勝手に遊ぶ

 選んだのはTPSゲーム


「セーブデータは、おっ、複数作れるのか。なら新規でやろ」


 ゲームを軽く遊ぶ

 それから2時間後狛が部屋から出てくる


「おっ、ゲームやってるのか」

「試しでなぁ。やる事ないから、服決めたのか?」

「あぁ決めたぜ。魔導具も幾つかな。お前上手いな」

「そうか?」

「ジャスト回避にカウンター、お前本当に初心者? 実はやってたとか?」


 ゲームをしながら会話をする

 今戦っている相手はチュートリアル後すぐのボス、レベルも高くは無い


「初心者、ジャスト回避あぁ、これかまぁこれより速い攻撃避ける事は日常茶飯事だったし入力さえ間に合えば余裕」


 下の階層に行けば行くほど魔物は強くなっていく

 それが階層主など特殊な魔物で無くてもかなり強い

 油断すれば高レベルでも余裕で死ねるレベルの威力の攻撃をかなりの速度と頻度で放ってくる

 魔物にもこちら側にもゲームのように予め決められた動きの制限なんて存在しない


「下の階層となればそうか。やっぱとんでもない奴いるのか」

「確か階層主に無差別爆撃とか居たぞ」

「無差別爆撃!? どうやって倒したんだ?」

「爆撃を切った。避けられない程の密度の爆撃ってだけで防げるし切り裂ける」


 ……まぁあれはゴリ押しだったが


「とんでもねぇ話だ」

「近接なら魔法系統切り裂けるか避けられないときつい」

「まじかぁ、まぁそうだよな。敵に突っ込むならそのくらいしないと無理か」

「強い防御用の魔導具使えば防げるがな」

「完全な装備頼りはダメにしろ必要な時は頼るわ」

「それが一番安定する。実力に自信を持つのはいいが過剰に自信を持てば死ぬ……よし倒したノーダメクリア」

「そいつ初見殺しのボスなんだが」

「初見殺し、そんなのあったか?」

「あったぞ。避けたんだろうが」

「そうか」

「ゲームするならマルチ出来る奴やろうぜ」

「良いぜ」


 マルチプレイのあるゲームで対戦したり協力したりでも時間を潰す

 チュートリアルや説明書を見ながら戦う


「強ぇな」

「言うて8割はお前の勝ちだろ」

「俺これでも上位プレイヤーなんだがプロ目指せるぞ」

「興味無いな」

「そっかぁ、あっ、飯食うか」

「久しぶりに出前取ろうぜ」

「良いな。何食うか」

「色々あるな……牛丼にするか」

「牛丼か良いな! そういや久しく食ってねぇ」


 食べる物を頼み来るのを待っていると携帯が鳴る

 画面を見ると詠見からであった


 ……詠見から? なんだ


 取り敢えず電話に出る


「どうした?」

『ちょいとなぁ、主の相方怒らせた代わりに謝罪の品をと思ってなぁ』

「謝罪の品?」

『彼の装備、見た感じ性能重視やろ?』

「あぁそうだが」

『せやから月詠で保有してる装備の1つ渡そうかと』

「どういう腹積もりだ?」


 クラン保有の装備ともなれば優秀な装備も揃っているだろう

 それを渡すのは目的が無ければおかしい話

 ましてや謝罪なんて詠見はしない

 ほぼ絶対何か考えている


『ただの謝罪の品、腹積もりなんて欠片も無い』

「助かるが装備に関してはそこまで困ってない」

『あらそう、確かに主は沢山装備持っとるもんなぁ』

「あぁ、集めていたからな」

『話はちと変わるがあの武器、わらわが保管してるけど使わんの?』


 ……あの武器……あぁあれか


 詠見が保管している武器がある

 昔、俺が使っていた刀


「今の状態では武器を使う戦闘は難しい。それに使えたとしてもあれを使う気は無い」

『あの動きをしておいて言うのはなぁ』


 恐らく鳴との戦闘の話だろう


「あれはスキルで底上げした結果であれは奥の手にしかならない」

『取り敢えずあの武器送るわぁ』

「要らねぇって」

『必要になる場面が来ないとは言えない』

「……俺の家に送っても無駄だぞ」

『どうして?』

「あの家に今住んでない。この姿になってから身分証明書が使えん」

『なるほどねぇ、なら優一に持たせておくから』

「こき使ってんな」

『信者やからねぇ』

「信者……あぁ確かに詠見様って言ってたな」


 月詠の中には詠見の信者が居る

 この世ならざるとまで評される美しさと高レベル探索者らしい実力、そして並の傷なら一瞬で治す程の治癒魔法とそれを対価も無く使う慈悲深い(ほぼ返せない借りを作る)

 信者が増えるのも頷ける

 優一もその1人なのだろう


『主も呼んでも良いが』

「呼ばねぇよ」

『それじゃ優一に会ったら受け取っといて』

「だから受け取らねぇって……切られた」


 ため息をつく

 恐らく受け取らなければ優一は待ち続ける事になるのだろう

 そういう事を平気でする奴だあれは


 ……一応明日行って確認して……認識阻害系の魔導具ローブ以外ねぇんだったそういや、貰えばよかったかいやでもあいつから貰うのはなぁ


「まぁ仕方ない。配信、顔出しするか」


 魔導具が無くなった以上、仕方がない

 元々危険を考えてだったが狛と一緒に行動していれば早々危険は無い


 ……他にも一気に変えるか……いやでもなぁ


 詠見からメールが来る

 内容は『あの服着れば?』

 丁度のタイミングで来る


 ……心でも読まれたか? いや装備の話したから思い出したのか。まぁあれを使うのは


 ゴスロリ風の服

 見た目は巫山戯ているが魔法特化の性能で今使っている服より圧倒的に優秀

 優秀だが見た目のせいで着たくないのだ、普通の見た目ならともかくゴスロリ風は普通では無い


 ……だが階層主と戦う予定だ。最適の準備はしないとならないか


 10階層に居る魔物は階層主と呼ばれる今まで戦っていた魔物とは別格の魔物が居る

 しかし、レベル10の魔物である程度のレベルの探索者なら余裕で倒せる相手


 自分の言った言葉を思い出す

 ステータスやレベルが下がっても経験がある

 俺の自信はそこから来てる、そしてレベル10の階層主とは何度もやり合っている

 だからこそ勝てると確信している

 だがそれは過剰だ、良く考えれば俺はステータス低下の呪いを受けている

 奥の手も失敗すれば動けなくなる

 狛の実力は上がっているがまだ初心者だ


 ……腹括るか


「電話終わったのか?」

「あぁ、終わったぞ」


 目の前に牛丼が置かれる

 電話をしている間に来ていたようだ

 食事を取り色々と支度を済ませて部屋に行き置いてあるゴスロリ風の服を見る

 着たら何かを失う気がするが階層主と戦うなら使える手段は取るべき


「最善を取るべきなんだ。あれも俺の最善になる」


 覚悟を決める

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る