激辛料理
風呂を出た狛が台所に戻る
「何を食う?」
「何があるんだ?」
「焼きそば以外は何あったかな」
狛は冷蔵庫の中を確認する
遠目から見える範囲で食材は余り入っていないように見える
……まぁ元々来る予定無かったしな
本当なら来る予定がなく突然急に来た
最悪食う飯がなくても仕方がない
「作れるのは焼きそばとチャーハンとオムレツと……カレーだな」
「焼きそばで」
「了解」
狛が料理を始める
狛は料理が上手い、正確には家事全般出来る男
学生の頃からモテる人間だが今まで彼女が居ない
「そうだ、狛」
「どっした?」
「確か高性能のパソコンとか持ってたよな」
「持ってるがなんだゲームやるのか?」
「配信のやり方を知ってるか?」
「配信? あぁダンジョン配信って奴か……え? お前がやるの?」
驚きの余り料理の手を止めて俺を見る
……そこまで驚かれる事か?
俺はそこまで驚かれた事を変に思い首を傾げる
「そんな不思議か」
「ほぼ他人とは関わらないをモットーにしてるお前が配信をだぞ」
「……それもそうか?」
俺は殆ど自分から絡みには行かない
人間関係は苦手で知り合いは多いが今でも話すのはその中でもごく一部に限られている
そのごく一部もかなり変人や物好き
「配信用の機材はあるぞ」
「機材? なんであるんだ?」
……狛って配信してたのか? ゲーム上手いしゲーム配信してんのかな
ゲーム自体は余りやらないが狛のプレイはよく見ている
かなり上手く色んなゲームで上位数パーのプレイヤー
プレイ中の指の動きがもはやよく分からない
「趣味」
「趣味で配信してるのか?」
「いや、そういった……機材?を集めるのが趣味」
「よく分からん趣味してるな」
「そうか?」
「まぁいい。ダンジョン配信だと確かカメラ型だっけか」
「それもあるぞ。1個だけだけどな、あっやべ焦げる」
料理を再開する
「1個じゃ足りないのか?」
「ダンジョン配信は複数使ってる事多いな」
俺はダンジョン配信の動画を見たことが無い
その辺の事も知らない、配信は本当に思いつきである
「そうなのか、なら買うか」
「高いぞ」
「金はある。なんなら装備のいくつか売れば金になる」
「流石ベテラン探索者……そういや元のレベルはなんなんだ?」
「言ってなかったか?」
「聞いた事ないな。配信者の高レベルが40くらいだから……50とか?」
「外れ」
「なら45!」
「なぜ下がる」
「上なのか……確か現在の最高レベルが78だから……60とか?」
狛の言う最高レベルは公表されている探索者の中で最高レベルという事
公表されていないだけでそれ以上の探索者が居てもおかしくはなく呪いを受ける前の俺のレベルは80
その最高レベルを超えていた
最も俺も俺以外に78以上の探索者を見た事は無いが居てもおかしくは無い
自分が探索者最強なんて思ってはいない
寧ろレベルは上でも公表されている中で最高レベルの探索者は数十年単位で探索者をしてる人物
その長年の経験からなる勘と
「外れー」
「分からねぇ」
「まぁ頑張れ」
「教えてくれないのか」
「教えない方が面白そうだから」
「絶対当ててやる」
「いずれ当たるぞ」
「そりゃな、よし完成したぞ激辛焼きそば」
「なぜ激辛にした?」
素朴な疑問をぶつける
俺は辛いのは余り得意では無い、ピリ辛程度が好み
そして別に激辛を注文もしてない、焼きそばとは言ったが激辛とは言っていない
……忘れてた……狛の激辛
狛は辛い物が好き……な訳では無い
得意ではあるらしいが特に好きでは無いという
だが狛……こいつは何故か何回かに一度、激辛料理を作り出す
もはや呪いに掛けられているんじゃないかと思う
「なんでだろうな?」
本人でもなぜ作ったか分かっていない
「まぁそんな辛くないと思うぞ」
「激辛の時点で辛いのは確定だが……仕方ない」
使って貰った身としてこれ以上文句は言えない
辛いのを我慢しながら食べる
「か、辛ひ……」
「確かに辛い」
何とか時間をかけて完食する
普段ならぺろりと行ける量だが肉体の変化のせいか結構満腹になっている
満腹になった事で眠くなり寝る準備をする
「そんじゃ寝る」
「おやすみ〜」
ゲームをしている狛を横目に部屋に入り布団で寝る
そして朝、目が覚めると狛が朝食を作っている
「おはよう」
「おはよう」
「それで何からするんだ?」
食べながら今日やる事を話し合う
……ダンジョン行くのと服買うのか。配信用カメラはまだ良いか。先に服だな……めっちゃ辛い……
「適当に寝間着と下着を買う」
「確かにその方がいいな。ダンジョン後は体力あるか分からないしな」
「その後にダンジョンだな」
「OK、てか朝弱いのに今日は寝惚けてないな」
「それは目の前にある食べ物が理由だぞ」
激辛目玉焼き
激辛料理二連続は珍しい
激辛なお陰でバッチリ起きた
さっさと出掛ける準備をして家を出る
狛の運転で近くの服屋へ向かう
俺の今の体力では服屋行ってダンジョン行くと入る前に倒れる
近くの服屋で雑にサイズの合う寝間着や下着を購入しバックに詰め込む
「これでよし」
「ちゃんと選んだりはしないのか?」
「誰かに見せる訳でもないから雑でいい。そんじゃダンジョン行くぞ」
「頑張る」
「まぁ今日は試しだから強い魔物とは戦わん。肩の力は抜け」
「分かってるが初めてだからなぁ」
ダンジョンの入口付近の探索者用の駐車場に止まる
「ダンジョンは見た事あるが見た目人工物なんだな」
ダンジョンの入口は建物で囲まれている
「ダンジョンの入口は確かに人工物に近いが入口付近の建物は人間が作ってるぞ」
「そうなのか」
「ダンジョンから魔物が出ないように、出ても対応出来るようにって」
「出た事あるのか?」
「今までどのダンジョンでも起きてはいない。しかし起きていない=起きないでは無いからな」
「レベルはダンジョン内だけだよな? 魔物が出てきたらどう対応するんだ?」
レベルはダンジョン内でのみ効果を発揮する
もし高レベルの魔物が現れたらほぼ対処は出来ない
「魔法やスキルは使える。それでどうにかするか
ダンジョンの装備はダンジョン内でしか効果を発動出来ない
逆にダンジョン外の武器は殆ど役に立たない
ダンジョン内で取れた鉱石などで作られた武器でも無いと役に立たない
それ故にダンジョン外における人類同士の争いはそのまま発達した
「成程」
「それじゃ受付行くか」
ダンジョンの入口を囲む建物に入り受付に向かう
そして俺と狛の探索者登録を行う
呪いがかけられた今、前の登録情報ではダンジョンに入れない恐れがある
探索者登録はすぐに終わる
「向かう予定の階層を教えてください」
「1〜5階層」
「分かりました。それではお気をつけて」
「これで入れるぞ」
「なんで階層?」
「あぁ、探索者は
「わかった」
「それじゃ防具着てこい」
「OK」
ダンジョンに潜る前に仮面を付ける
どうやらこの見た目は目立つようだ
狛が着替え終わるのを椅子に座ってボーと待つ
ガチャガチャ音を立てて近づいてくる足音がする
見ると全身鎧を身に付けた狛だった
ハンマーを背負っている
探索者の中には全身鎧を付けている者は居るがやはり目立つ
兜の顔を隠している部分をズラして狛は会話をする
「分かっていたが息苦しいな」
「息苦しい、見づらいならその状態の方がいいぞ」
「そうする、準備は万端!」
「じゃ入るか」
ダンジョンの入口に向かう
大きな門がある、そして門の先は何も見えない暗闇が広がっている
中に入らないと中の様子は分からない
「これがダンジョンの門……」
「どうせ何度も通るから見慣れるぞ」
「そういう物なのか」
「そういうもん」
俺と狛は門を通りダンジョンに入る
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