初心者殺し

 リザールと戦う

 翼で攻撃を仕掛ける

 縮地で接近して攻撃をされる前に素早く翼を叩き付けて体勢を崩させて二発目で仕留める

 翼は魔法によって生み出された物の為、呪いの身体能力低下を受けない

 その為素早く攻撃が出来る


 ……翼なら早い、翼主体の戦闘をしたいが


 翼の問題点は背中から生えている事

 右側に生えてる為、右側からしか攻撃、防御が出来ない

 どうしても左側への反応が遅れる

 左手に短剣を持つ


 ……祈りの翼が使えればだが……


 1対1を何回かした後休憩をする


「今の翼は接近しないと攻撃が出来ない。身体能力が低い今きつい、魔法の派生が早く欲しいが……」

「2階層は行かない方がいい」


 話し声が聞こえる

 俺は聞き耳を立てる


「どうしてだ?」

「奴が出た」

「奴?」

「初心者殺しだよ」

「まじか、レベル高い探索者呼ばねぇと」


 ……初心者殺しってあの虎か


 レベル5の虎

 初心者殺しとは言い得て妙だと思う

 水を飲み話半分に聞く

 2階層には行く気がない為他人事、襲われた探索者には悪いが今の状態では救えるとは限らない

 知らぬ他人より自分の命が大事


「誰か襲われたか?」

「全身鎧の男が迎え撃ってる」


 ……全身鎧の男か。それなりの探索者かな


「強い探索者か?」

「いや、多分初心者だ。昨日1階層で戦ってるの見たし」


 ……昨日1階層に居た。そんな奴見なかったがタイミングが合わなかったのか。初心者で全身鎧なんて形から入るタイプなのか


 呑気に会話を聞いている

 この時点で俺は気付いてもおかしくなかったが呑気な俺は気付かなかった


「まぁレベル5以上の探索者が来るの待つしかねぇな」

「そうだな、ただ彼はハンマーを使ってた」

「それは相性最悪だな」


 ……ハンマーか……全身鎧にハンマーで昨日1階層で戦ってた? なんか知ってる気が……いや連日ダンジョンは危険って言ったから


「あれ」

「どうした?」

「あの子仲間じゃないかな」

「その男の?」

「昨日一緒に居たの見たし」


 ……狛だな……あの鎧とハンマーならワンチャン、いやあいつは素早い


 立ち上がり急いで2階層に向かう


「あの馬鹿、出会ったら逃げろと言っただろ」


 2階層のゲートに入り探す

 装備が強くても戦闘慣れしてない狛では死ぬ可能性がある


 ……2階層の何処だ。そんな遠くに行ってねぇと思うが


 丁度ゲートに向かってきてる探索者を見つける


「虎どこ!」


 逃げてる探索者に叫ぶ

 声に気付いた探索者は雑に指を差す


「あっち!」


 そう言い残してゲートに入っていく


 ……あっちか


 探索者が指で差した方向に向かう


 〜〜〜


 悠永が話を聞き向かう10分程前


 俺は2階層でレベル2の魔物を倒していた


「レベル2もちゃんと倒せるようになった。早くレベル3にしたいな」


 そう言いながら魔物を倒しては探すを繰り返していた


「逃げろ!」


 1人の探索者が声を張上げる

 その方向を見ると2m程度の虎が居た

 緑色の虎、それは悠永が言っていた危険な存在


 ……出会ったら即逃げろだったよな


 ゲートに向かって走る

 その途中後ろで転ぶ音がした

 逃げている探索者の1人が転んだのだ

 そして転んだ時に足を痛めてしまっている


 ……助けないと


 勢いよく地を蹴り転んだ探索者の元へ向かう

 レベル5の虎 リザーベドル

 転んだ探索者にゆっくり近づき自慢の爪を振り上げる


「させるか!」


 ハンマーを大きく振るう

 リザーベドルは攻撃に気づき後ろに飛び退く

 そして威嚇するように唸る


「た、助かった」

「逃げろ」

「だがあんたが」

「隙を見て逃げる構うな!」

「助けを呼んでくる」


 ……さて、何も考えずに突っ込んだけど不味いなこれ


 ゲームとは違う

 俺はゲーマーだがその事くらいは知っている

 死ぬかもしれない、鎧があるとは言え攻撃を喰らえば痛いだろう


「時間を稼ぐか。何分稼げばクリアのミッションだこれ」


 ハンマーを構えて様子を伺う

 格上相手に無闇な特攻は自殺行為

 リザーベドルの視線はハンマーに向いている


「これが危険だって理解したのか」


 2階層より遥か下の階層の階層主が落としたハンマー

 その強さを本能で理解し警戒する

 互いに動かない

 互いに相手の武器が危険だと理解しているから無闇に動かない


 先に動いたのはリザーベドル

 素早く爪を立てて襲いかかる

 横に飛んで転がり避ける

 そしてハンマーを振るう

 回避されるが深追いはせずに再び構え直す

 集中状態が続く

 慣れていない命を懸けた戦闘状態

 構えているだけで体力が持って行かれる


「はぁはぁ……」


 ……くっそ


 汗が出る

 汗が目に入る、素早く汗を拭いハンマーを握り締める

 構えながら理解する、このままでは死ぬと

 体力が持っていかれている

 先に体力を失うのは俺、そうなれば鎧があっても殺されかねない


 ……一撃顔面に叩き込めば……勝てる筈


 助けが来るのがいつか分からない

 今考えられる勝ち筋は全力の攻撃を当てる事

 深呼吸をする

 ハンマーを持つ手が足が震える

 恐怖、死ぬかもしれないと言う恐怖


 ……あいつなら勝てるんだろうな、たった1人でも


 思い浮かべるは親友の姿

 この状況でも戦って勝つんだろう


「行くぞ!」


 声を上げる

 そして一歩踏み込む

 痛みが生じるほどにハンマーを握り締めて突っ込む

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