自己紹介配信

『声入ってる?』


 狛がそう言うとコメントが流れる


『入ってる』

『入ってるぞ』

『戦闘以外の動画初じゃね』

『始まったぞー!』

『おぉ!』

『来たァ!』

『ユエさんも居る?』


 同接100人以上居るようだ

 リザーリオレムの生配信よりも多い


 ……案外居るな。リザーリオレムの時より多いな


『悠永も確認しないと』

「通話アプリで繋いでるし入ってるだろ?」

『いや、機材の不調で入らない事あるぞ』

「マジかよ、えぇっと声入ってるか?」


『入ってる!』

『声良いな』


 先程と同じようにコメントで返答が来る


 ……こうやって会話をするのか


『両方とも良い声してる』

『バリバリ男口調なのか』

『普段から?』

『今日なんの配信?』

『自己紹介配信って何? 自己紹介は最初の方でしてたよね?』


『俺達は正式には自己紹介してないからさ』

「編集した動画でざっくりと名乗っただけだからな」

『だから改めて配信で自己紹介をと思ってな。後こう言った配信も今後考えてるからその試し』


『路線変更?』

『こういう配信増えるの助かる』

『ダンジョン動画だけだと味気無い』

『結構淡々としてるからね。凄い真剣な感じがして悪くないんだけど』

『そうだよなぁ』

『あのスタイルだから探索者の本当の姿みたいで見てるのワクワクする』

『人を選ぶタイプな気がする』


 ……動画は賛否両論か。流石に少しは意識した方がいいのかな


 疑問に思っているリスナーに狛が答える

 狛が主体に会話を進める


「やると言ってもメインはダンジョンの動画だから頻度はそんなでもないだろうがな。先どっちから?」

『そんじゃ俺からやろう。俺は狛、ほぼ初心者の探索者で前衛役をやってる』

「それだけか?」

『一応色々質問来てるからそっちで答える』


 ……質問来てたのかそういや確認してねぇ


『前衛役って今前衛しか居ないじゃん』

『確かにw』

『ダブル前衛』


『一応悠永が後衛の予定なんだよ』

「まだ後衛になれる見込みは無いがな。次は俺か」


 一度深呼吸をして落ち着いてから話し始める


「俺は悠永、現在は魔法主体の前衛をやっているが後々後衛をやる予定だ」


『前衛の方が向いてね?』

『前衛のままの方が良さそうに思えるが』

『別に2人だからって前衛後衛分ける必要無いんじゃ』

『なんかしらの理由あるんだろ』

『後衛の戦いも見てみたい』


「ちょっと他に理由がある。それで次は何するんだ?」

『質問箱、まずは悠永が引いてくれ』

「引く?」

『画面』


 画面を見ると1つの箱がありマウスでタップすると箱が揺れて出てくる


「こんな機能あったのか。これを読み上げればいいのか?」

『そうそう、出てきたメモを読み上げる』

「えっと、好きな食べ物はだとよ。俺はほうれん草のおひたし」


『ほうれん草のおひたし』

『し、渋い』

『何とも渋いなぁ』

『他には?』

『他は無いの?』


「他? ラーメンとか寿司とか牛丼、焼きそばとか上げたらキリがない」


 思い付いた物を上げる

 好きな食べ物は普通、平凡な物、特に面白みも無い


『寿司の具やラーメンの種類は?』

『その辺って安定だよね』

『確かに美味しいからねぇ』


『何とも普通だな』

「うっせぇ、お前もそんな変わんねぇだろ」

『俺は激辛系好きだぞ。今日も激辛明太子パスタ食ったし』


 ……別にお前そんなに好きじゃねぇだと激辛、キャラ作ってんな


「激辛明太子パスタに関しては作る気で作ってねぇだろそれ」

『それはそう』


『激辛か』

『激辛チャレンジの伏線!?』

『辛いの行けるタイプか』

『作る気が無かったのに作るってどういう事?』


「ぜってぇやらねぇ」


 狛なら激辛チャレンジを喜んでやりかねない

 そうなれば巻き込まれる事は目に見えている、俺はやる前に不参加を表明する


「次行くぞ」


 狛が激辛チャレンジに触れる前に次行くように促す


『逃げたな』

『これは逃げた』

『チャレンジ期待して待ってるわ』


「次は狛だぞ」


 コメントを無視して狛に引かせる


『次俺だな。……ふむ、これか』

「どうした?」

『二人の関係はだそうだ』


 ……来たか。あれでいいか


 予想していた質問、いずれは来るだろうと思っていた

 想定より来るのが早かったが答えの準備はしている


「関係か、単純に狛って俺の兄の同級生なんだよ。そんで兄繋がりで関わった」

『そういう事だ』


 適当に作った話を言う

 年の差があって仲が良い理由としてはこれなら違和感は少ないだろう


『妹キャラなのか』

『だから歳離れてるのに仲良いのか』

『同級生って事は学生の頃からの関係か』


『あぁ、この兄妹とはその頃からだ』


『ユエ兄はよく探索者になる事許可したね。危険なのに』

『ユエ兄は探索者なの?』


「兄は探索者だ。俺達が使ってる装備や道具は兄譲りで俺のダンジョン知識も兄からの物だ」

『詳しい事は知らないがあいつは結構強い探索者らしい。許可に関してはあいつは他人の進路に口を出すタイプじゃないからな』


『成程』

『だから初心者なのにダンジョンに詳しいのか』

『兄譲り』

『強い探索者か』

『配信には参加しないの?』


「残念ながら兄は配信には参加しない。次の質問行くか」

『そうだな』


 これ以上質問攻めされるとボロが出るかもしれない

 箱をタップして次の質問を箱から出す


「配信と探索者を始めた理由」


 ……これも考えていた奴だ


 作り話を考えた時に一緒に考えていた


「兄関連でダンジョンに興味が湧いたから、配信は今話題だから」

『親友の妹が無理しないように監視役として』


『兄弟に探索者居るとなる人多いよね』

『成程よくある理由だ』

『確かに配信は人気な話題だもんな』

『ハクさんはユエ兄の時に一緒に探索者にならなかったの?』


『俺は普通に職に就く事に決めてたから探索者自体なる気無かったんだよな』


 狛は安定した職を選んだ

 探索者は職としては認められるが日常的に危険も伴い再起不能の怪我を負えば引退せざるを得ない不安定な職


『探索者一筋では無いのか』

『まぁ安定した職に就くの大事だよな』

『本当に大事、探索者やめた後無職になるケース多いし』

『兼業?』


『今は兼業で普通に仕事もしてる。まぁこれからも兼業のままの予定、探索者一筋にするのはちょっと抵抗ある。次の質問行くかぁ。……休日何してますか』

「運動したり寝転がってる」

『俺は溜まってるゲームやったりアニメ見たり筋トレしたり』


『オタク趣味に紛れて筋トレしてる』

『ハクさんムキムキだもんな』

『ガタイ良いオタク』

『ユエさんは趣味ないの?』

『家で寝転がるのが1番』

『そうだよなぁ』


「趣味は……まぁ音楽鑑賞と読書辺りかな? 狛からアニソンとか進めれるからそれを聞いたり」


 本当の趣味はダンジョン潜りなのだが言わない

 設定上では俺はまだ探索者なりたての初心者、既に趣味がダンジョン潜りは少々おかしい

 適当にでっち上げる


「次は……使ってる魔法の事教えてくださいか。俺の使ってる魔法は祈りと怒りの翼って名前の魔法で今は片翼の1枚だが条件を満たすと翼の枚数が増えるって魔法だ、後派生魔法はせいまほうが1つある」


 嘘を付く必要がないので正直に答える


『祈りと怒りの翼』

『条件次第で増えるって事は現状で伸び代がある魔法なのか』

『魔法の中でも当たりの部類だな』

『両翼になったら飛ぶのかな!』

『翼は凄い映えるな』


『次は俺の魔法、戦乙女の祝福って言う身体能力強化の魔法、高倍率と低倍率を選べてそれぞれ魔力消費が変わる』


『シンプルに強い奴だ』

『あの戦闘スタイルならバッチリの魔法だねぇ』

『二種切り替え型の魔法、使い勝手良いな』

『相性良い強い魔法』


『他にも質問はあるが今日はここ迄にするか。次はダンジョン配信か振り返り配信の予定』

「振り返りはリザーリオレム戦の予定だ。好評ならリザーベドルの方もやる」


『おぉ! 振り返りか』

『生配信で言ってたやつか』

『振り返りって何するんだ?』

『生配信よく分からない所あったから助かる』


『詳しくは決まってないけど戦闘中の状況を悠永先生が要所要所で説明って感じにする予定』

「誰が先生だ。だがまぁそうだな」


『ユエ先生!』

『土煙の時とかどういう行動したか気になるし最後の攻撃も何故あの手を取ったのかとか聞きたいこと多い』

『気になるよねぇ』

『あの行動は普通じゃ思いつかないと思う』


『では配信はこれで終わり』


『お疲れ様です』

『お疲れ様でしたー!』

『次の動画待ってます』

『頑張ってなー』


 配信が終わる

 配信が終わった事を確認してホッとする


 ……凄い疲れた、緊張した


 質問にはちゃんと答えれていた、コメントにも反応出来ていた

 初めてにしては上出来、成功と呼べるだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る