知り合いの探索者

 7階層へ繋がっているゲートを見つける


「おっ、ゲートだ。進むのか?」

「いや、休憩した後戻る。まだ7になってないからな」

「急いで進む必要無いか」


 ゲートの前で座って休む

 ゲート周囲の広場には出て来ないので通路を見張ればいい

 他の階層に比べて警戒が楽


「道は覚えたか?」

「いや全然、曲がり道に分かれ道多過ぎだろ! 地図欲しい!」


 狛は方向音痴とまでは行かないが地図を覚えるのが苦手でマップ覚えるのに苦戦しているようだ


「あるぞ」

「あるのか?」


 探索者が協力した地図、複数人の探索者が協力している為信頼出来る

 少し高価だが買う者は多い


「ただ魔物が出るから見ながら進む事は出来ないから結局覚えないと迷子になる」

「ぐぬぬ……」

「まぁ言うてこの階層はまだ優しいから何度か行けば覚えられるぞ」

「優しい?」

「31階層は洞窟型でここみたいに狭くは無いが複雑で尚且つ吹き抜けになってる」

「吹き抜け?」

「31〜35までは物理的に繋がってる。ゲートを通らずに進む事が出来る。逆に言えば足を踏み外せば下の階層に真っ逆さまって訳だ」


 当然ながら落下して死ぬケースもある

 31階層に行ける探索者はベテランが多い事もあって落下による死者は少ないと言われてはいるがそれでも死者が出続けている


「ひえっ、怖いなそれは」

「俺も前に踏み外しかけた事があった」

「危機一髪だな」

「休憩がてらなんか聞きたい事はあるか? 答えられる範囲にはなるが」

「聞きたいこと……嫌いな食べ物ってなんだ?」

「基本は無いぞ。激辛と甘過ぎる食べ物は苦手だが……ってダンジョンや探索者についての聞きたい事だ。それに昔言った気するしな」

「そうだったか? 探索者について……そういえば収入はどうしてるんだ?」

「収入?」

「高レベル探索者って仕事掛け持ちしてないじゃん。どうやって金稼いでるんだ?」

「あぁ、魔物が偶に落とす素材を売ってる」

「素材?」

「倒した時に偶に落ちてるぞ。魔物の消えずに残った体の一部」

「ゲームでもよくある奴だな。何に使えるんだ?」

「主に武器や防具だな。ダンジョン製の武器や防具ってのは階層主とか特殊な魔物しか落とさないから素材で作った武器とか売られてるぞ」

「素材で作った武器かこれまたゲームみたいだな」


 狛は俺の持っていた武器を使っている為、本来なら買う筈だった人の手で作られた武器や防具を知らない


「ダンジョン製より強いのか?」

「いや、ダンジョン製の方が基本優秀だ。最も腕の立つ鍛冶師かじしが良い素材で作れば並のダンジョン製より強い事もあるが」

「成程、それだけだと結構余りそうだけど」

「ダンジョン関係で無ければアクセサリーや服の素材に使われてるって聞いたな。他にも機械にも使われるケースがあるとか」

「あぁそういえばドローンも使ってたな」

「ドローンも使ってるのか?」

「耐久性を上げるために魔物の素材を利用してますって説明に」

「だから高いのか」


 ダンジョンの魔物は倒せば落とすという訳でもなく高レベルの魔物となると倒す数が減り素材が落ちる頻度も比例して少なくなる

 その為素材を使うとかなり高価になる


 その後に軽く雑談していると複数の足音が聞こえる


 ……音からして人だな。防具や武器もしっかり着けてる。人数は5人


 通路から現れる

 自然と先頭にいる人物に目が行く

 その人物は着物のような服を身につけ武器を持っているようには見えない

 昔の日本の貴族が身につけているような装飾品を着けている


「おぉ美人」


 狛も見ている

 狛の言う通りかなり顔が整ってる美人

 俺はこの人物に見覚えがあった


 ……あれは……


詠見よみ


 名前を呼んでしまう

 それが失言だと気付きハッとする


 ……しまった


 俺が詠見と読んだ人物は名前を隠している

 関わった中でも親しい人物でも無ければ知らない

 俺と連絡を取っていた変人の1人


「うん? あぁ……その仮面よぅ知っとるわぁ」


 詠見が視線をこちらへ向けた瞬間、詠見の姿が消える

 そして目の前に現れる

 俺も狛も移動が見えなかった、それ程に速い速度で移動していた


「どうして主が持ってるん?」

「この仮面は知り合いが持っていた物で」

「記憶違いで無ければあのダンジョン狂が持っていた。彼に少女の知り合いが居るなんて思わなかったわ」


 詠見は俺の事をダンジョン狂と呼んでいた


「ダンジョン狂かは知りませんがダンジョンには潜ってましたね」


 必死にとぼけようとする


「主はわらわの名前を知ってる? 彼が話すとは考えづらい」

「き、聞き間違いでは無いでしょうか」

「……知り合いなのか?」


 狛が聞いてくる

 狛と詠見は面識が無い

 そして俺の名前を聞いたら間違いなく問い詰めてくる


 ……後で話すから今は静かに


 素早く片手でジェスチャーをして静かにしろと伝える

 どうにか一先ず穏便にこの場を離れる方法を考える


「なんや、秘密の会話なんてつれない事しないで欲しいわァ」


 腕を掴まれる

 隠していたつもりだったがバレていたようだ

 腕を動かそうとしてもビクともしない


「な、何のことでしょうか」

「1つ聞きたい事があるわ」

「なんでしょうか」

「彼は生きてるのかしら?」


 呪いを掛けられてから時間が経っている

 異変に気づく者が現れてもおかしくない


「そ、それは……」


 呪いを受けた後、知り合いとは連絡を取っていない

 別に知られても問題自体は無い

 しかし、余り多くの人間に知られたくない

 単純に個人的な事だ

 皇さんは呪いの解呪の術を知っている可能性があったから伝えた

 伝えるべきだと思うが信用されるか分からない


「もし生きてるようで連絡を取れるなら伝言お願いするわ」

「…………」

「何があったか知らないけどそこまでわらわを信用出来ないのかしら? って」


 ……それは……


 信用されるか分からないは言い訳だ

 言えば事情を理解してくれるとは思う

 彼女もまた高レベル探索者、呪いについても詳しい

 言えないのは個人的な理由だ

 心配させている、それは


「またいずれ」


 そう言い残して詠見が率いるパーティはゲートに入っていく

 それから周囲に静寂が訪れる

 沈黙を破ったのは狛


「休憩終わったしレベル上げするか」

「そうだな」


 狛は俺の頬を抓る


「な、何をするんだ狛」

「ダンジョン内は危険なんだろ? なら考えるのは後だ」

「……そうだな」


 両頬をパチンと引っ叩く

 俺が今やるのは魔物を倒す事、考えるのは後で良い

 立ち上がり来た道を戻りながら魔物を探す

 そして接敵した魔物を倒して進む


「おっレベル上がった」

「俺も上がったな」

「おぉ!」


 狛が大声を上げる

 突然の事でビクッと身を震わせる


「な、なんだ!?」

「魔法覚えた」

「まじか! どんな魔法だ?」


 狛の初めての魔法

 俺もワクワクする


 ……近接で戦うなら身体強化系が好ましいが中距離系もかなり役に立つ……狛なら癖があっても使いこなせそうだな


「戦乙女の祝福、全ステータス強化の魔法らしい」

「ステ強化の魔法か。単純だが使い易いな。上昇率がどのくらいなんだろうか」

「強化を調整出来て長時間発動する場合は上昇率は抑えめで短時間の場合結構上がるっぽいな」

「状況次第で使い分けれるのは便利だな。当たりの魔法だな」


 ステータス強化の魔法は癖が強いのが多いが狛の魔法は寧ろ扱いやすい物

 魔法の中でも当たりの部類だろう


 目の前に丁度いい魔物が現れる、レベル8、2体

 魔物と接敵して試しに狛は魔法を使う、気配が変わる

 狛は地を蹴る

 先程よりも断然早い速度で魔物の目の前に行き剣を振るう

 魔物は避けようとするが間に合わずに両断される

 もう1体の魔物も首を貫いて倒す


「早いな」

「だいぶ上がってたな今のは短期?」

「あ、あぁ短時間用の奴だ」

「これなら長時間用の奴もそれなりにステータス上がりそうだな」

「普段から使っていいか?」

「むしろ使って行った方がいい強い敵と戦うなら温存した方がいいかもしれないが魔法やスキルは使い続ける事で進化、派生する」

「もっと試したい」

「無理はするなよー」

「わかってる」


 狛は魔物を見つけ次第突っ込み次々と切り裂いていく

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