ありふれた悪事 その2
日本に密入国してから一週間ばかりが経った。姫路京介は三人の人間を殺害していた。奪った金品は財布に入れて持ち歩く程度の紙幣しかないため、一日二日で一文無しに戻ってしまう。まとまった金を得るには他の方法を見つける方がいい。
そこで、たどり着いたのがSNSだった。
SNSで金持ちにコンタクトをとり、奪う。最初はそう考えたが、すぐに間違いだと思い直した。金持ちという人種は警戒心が人一倍強い。そう簡単に近づけるはずはない。
金欲を殺人欲で補っているが、それも限界に近いような気がしていた。別な欲望で補う必要がある。肉欲だ。
姫路京介は出会い系サイトで女を物色した。インターネットサイトの登録名は二番目に殺した鈴木誠の名前を使った。管理の厳しさがウリのようで、登録には免許証を運営に送信する必要があったのだ。鈴木誠は姫路京介と背格好や年齢が近く、証明写真では一見見分けがつかなかった。
これから鈴木誠として生きていくのも面白いかもしれない。姫路京介はそう思い、声を出さずに笑った。
数分間物色を続け、直感で女を選んだ。どうせ書かれている自己紹介文の半分は虚偽だ。こういうときに大事なのは動物的なカンだ。
……こいつだ。
職業、歯科助手。登録名、チサト。
姫路京介は新な出会いに笑みを浮かべた。
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