ありふれた悪事
姫路京介はギャングの生き方が染みついていた。ギャングといっても、派手な服装をしたり、髪を染めてタトゥーをいれたり、これみよがしに力を見せびらかすことはしない。短所も長所も人前に出すことを避け、目立たないように潜む。それが、姫路京介のギャング道だった。タイ・ロナのギャングの中に身を置き、目立つことで起こる運命を嫌というほど知っていたのだ。目立つことは怨恨の元凶であり、暗殺に繋がるということを。
目立たないという身の置き方は幼少期に得たもので、それによってトラブルを回避してきたのだと信じていた。
他の命を奪うことに何の感情も持っていなかったが、殺しを続ければいずれ足がつくことはわかっていた。適度なところで切り上げ、一般人になりすます必要がある。だが、頭でわかっていても心が動かないのも確かだった。姫路京介にとって、殺人は至上の幸福であるのだ。
人間はどうしても抗えない宿命を背負っている。脳が避けるべきだと理解しても、避けることはできない。殺人の幸福は逃れられない宿命なのだと、姫路京介は理解していた。
姫路京介のギャング道にはもう一つ、信念があった。欲望に忠実に生きること。殺意が芽生えれば殺すし、肉欲を感じれば犯す。至極単純な思考に従って生きることを常としていた。
目立たないことと欲望に忠実に生きること、ふたつの信念に従うことが、姫路京介の生き方だった。
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