第21話 デートに行きませんか


『土曜日暇かな?』


送った…。送ったぞ…!


続いてもう一文送ろうと入力を始めたところ、先に送ったメッセージに即既読のマークが付いた。


『暇だよ、どうしたの?』


あっ。


こちらが次の文章を打ち込んでいる間に返信が来てしまった。


なんか可愛い絵文字がついてる。そうか、絵文字とか付けた方がニュアンスが柔らかくなるのか…。


でも、付け方がわからん。男同士のやりとりで絵文字なんて使った事ねえし。


キモい絵文字の付け方するとおじさん構文とか言われるらしいし…あれ、でもあれっていつから流行ってたんだっけ。今打ったら逆に最先端なのでは?


…いや、最先端の駄目な文章ってだけだな。


っと、早く返信を打たねば。


『いや、よかったらどこか遊びに行かないかなって』


『いいよ、どこ行く?』


即返事が返ってきた…。しかも了承って…。


え、なんでこんなにサクサク進む?


どうしよう。こんなにすぐに返事が来るなんて想定してなかった。


まさかとんとん拍子に話が進むと思ってなかったから具体的にどこに出掛けるかも決まってない。


ベッドでくつろぐレオに視線をやるも、漫画に集中して全くこちらの様子に気付いていない。


っていうかもう少しポーズを気にしろ。


スカートをはいているという自覚を持て。目のやり場に困る。


…いや、助言を求めれば同じ話になる。


やっぱり自分で考えよう。


『御崎はどこか行きたいところある?』


こっちから誘っておいてこれだと自分の意志が無くてうざいか?


いや、最適解に辿り着くまで長考するのもダサいし、送ってやれ!!


『ん-、特には』

『綿貫君はどこかある?』


…そうなるよな。突然誘っておいて、かっこ悪りい。


テーマパーク、ランチ、映画、喫茶店、カラオケ、ショッピング…。


中学時代の俺には…女の子におごるだけの金が無い。


『芝山公園にでも行ってみる?』


背伸びしたってしょうがない。こうなったら中学生らしく振舞っていこう。


嫌なら断ってくれるだろ。


『いいね』

『土曜日天気いいみたいだし行ってみよっか』


『ありがとう、じゃあ詳細は追って』


『業務連絡みたいになってるよ』


成功した…。


ゆっくりと深呼吸。


……なんだろう。


今の心情をシンプルに表すと、“跳び上がる程嬉しい”。


ああ…心臓が、バクバク言ってる…。


ずっとこんなにうるさかったか?いつから高鳴ってたんだろう。


童貞が初めて女の子をデートに誘ってこんなに上手くいく事あんのか…?


達成感と安堵で体中の力が抜ける。


ふとレオを見ると俺など存在しないかのようにだらしない格好で漫画を読んでいた。

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