第17話 嗚呼、友よ


今日も一人で登校。


いつも一緒だったレオがいないと、通学中も慣れない感じがした。


教室に着く。


相変わらずレオの姿は無い。


あいつ、そんな遅刻魔のイメージは無いんだけどな。


クラスメイトと軽く会釈をして席に着く。


同じクラスで柔道部員の鈴井すずい 陽介ようすけが近づいて来る。


「おい、体調どうだ」


「ああ、問題ねえよ。全然、心配するような事じゃねえから」


昨夜メッセージをくれたうちの一人。


中学時代はレオと一緒によくツルんだな。


「じゃあさー、見学だけでも来いよ。

 お前いねーとつまんねーじゃん」


そんな盛り上げるようなキャラじゃなかったろ、俺。


大体いつもレオが中心になって騒いで、俺は一歩引いて…って、レオもいないのか。


部員が二人も減りゃあそりゃ寂しいわな。


俺も三年間練習した柔道場が少し懐かしく思えてきた。


「まぁ、確かに一回くらい…」


「おい、姫来たぜ」


陽介は俺の言葉を遮り、教室のドアの方を指差す。


「ひめえ?」


勢いよく開いたドアの方から、一段と目を引く美少女が肩で風を切って歩いて来る。


ああ、レオね…。


その美貌で相変わらずクラス中の視線を独り占めしている。


あの暴君がこの世界じゃ「姫」扱いか。


「おっす」


レオは雑な挨拶をかわすと荒々しく席に着く。


眠たげにまぶたを持ち上げる様子すらどこか色気のある表情に見える。


そういえば男の頃は寝起きがよかったのに、昨日も遅刻スレスレだったな。


「珍しいな、遅れてくるなんて」


声をかけると、いかにも不機嫌そうにこちらを睨んできた。


「遅刻してねーよ。

 間に合ってんだろ、ボケ」


「何か体調の変化でもあったのか?」


性別が変わってるんだから、そういう心配もあるかもしれない。


だが、レオはぶすっとしたままぶっきらぼうに答える。


「別に。朝練ねーと思って二度寝したら寝すぎた」


そういう事か。


「俺がモーニングコールしようか、姫!!」


陽介がここぞとばかりに身を乗り出して会話に割り込んできた。


「陽介かよ。

 姫って呼ぶな、気持ちわりぃな」


「はい!りおんちゃん!!」


バシッという気持ちのいい音と同時に、陽介の顔面に痛烈なビンタが入る。


「ちゃん付けもやめろ、シバくぞ!

 あっち行け!!」


シバいてから言うなよ。だが、シバかれた本人は何故か幸せそうに笑っていた。


陽介…完全にレオの舎弟みたいになってる…。


以前はどんなにいじられても対等な関係だったのに…。


これが惚れた弱みなのか…?


なんか嫌だな…。かつての男友達同士でこういうの見させられるの。


…まぁ、童貞仲間の陽介らしいっちゃらしいか。

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