第16話 進路


それからレオは中学時代いかに女子からモテたかなどを語って帰って行った。


外が暗くなると部活の仲間から症状を尋ねるメッセージが届く。


『見学くらい来いよ』


『推薦どうすんだ』


『お前が休んでる間は俺がエースだからな』


柔道部のエース…か。


全然しっくりこないな。


前はレオという絶対的エースがいたから自分がその地位に座していたなんて想像もつかない。


でも、確かにレオを除けば俺がエースになるのか…。


その日は心身ともに疲れていたせいか、早く眠れた。




翌日。


目を覚ます。やはり、実家の天井が見える。


一晩経っても同じか。マジで人生やり直しなのかな、俺。


朝練の時間に合わせてアラームを設定したままだったのでまだ早い。


くそ…もっと長く寝ておけばよかった。


いや、母親に部活休む事を言ってないからどのみち起こされてたか。


説明めんどくさいなぁ…。


朝食。母親に部活を休む事を告げてみる。


「なんで?」


いつもと変わらぬ調子で理由を尋ねる母。


「いや…なんか最近疲れててさ…。

 いまいちやる気も出ないし、

 オギセンに相談したらしばらく休んでいいって」


「そう、じゃあ明日からは朝ご飯遅くていいのね。

 朝練行くときは前日に言ってね。

 お母さんももっと寝るから」


ああ、そっち。


…あんまり心配してないな。


でもそうだよな。母ちゃんも俺が朝練行かなきゃもっと寝られるんだ。


当たり前に出てくる朝食にも、もっと感謝するべきだったんだな。


「部活辞めるワケじゃないんでしょ?」


「…まだわかんねえ」


「わかんねえって…推薦どうすんの?

 塾行くなら早く言わないと受験間に合わないよ」


「…うん、まぁ、なんか考えとくよ」


「高校は行くんでしょ?」


「そのつもりだけど…。

 あんまり母ちゃんに迷惑掛からないようにするから」


「それは別にいいけど…」


そうか、推薦で高校行けば授業料も免除だし塾に行く必要も無かったのか。


気まぐれや思いつきで部活辞めたら母ちゃんに迷惑かけちゃうな。


自由にやらせてもらってたけど、意外としがらみが多いんだな中学生。


一旦社会に出た事で改めて親に頼って生きてる事を実感させられるなぁ。

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