第24話 あの日のこと


「…ほんとはりっちゃんと来たかったんじゃない?」


突然の思いもよらない質問に心臓が飛び出そうになった。


「なっ、なんでっ!?

 いや、そんな事無いよ。

 いつも学校で顔合わすのに

 休日まであんなのといたら休まらないって」


こんな質問が御崎から飛んでくるとは予想外だ。


御崎って結構、ストレートに聞いてくるんだな。


「そうなの?

 てっきりりっちゃんが私に気遣って無理矢理

 誘うように焚きつけたのかと思ってた」


すげえ、ほぼ当たってる…。


あれ?


それってどういう意味だ…?


何か返答しようとして、言葉が出て来なくて。


口をあんぐり開けたまま、また無言の時間。気まずい空気。


…確かにレオが背中を押してくれなかったら御崎をデートに誘ったりはしなかっただろう。


でも、自分から行動しようとしなかっただけで、その気が無かった訳では無い。


あの頃俺が御崎の事を好きだったのも事実だ。


レオと付き合ってなかったら…。


……あ。


ふっと記憶が湧きだすように思い出した。


十二年前にこんな話をレオとした気がする。


レオから御崎と付き合うことになったと聞いた日。


そのとき初めて俺は自分が御崎を好きだった事に気付いた。


レオは当然そんな事知らなくて、自然な流れで御崎と付き合った。


でもある日の部活帰り、何かのはずみでレオがそれに気付いたんだ。


…レオの表情は思い出せない。確か辺りはもう暗くて…。


それから少し経って、レオと御崎は別れた。


ひょっとして。


二人が破局したのって…。


「綿貫君?」


気付くと、御崎が心配そうにこちらを見ていた。


「あ、ああ。ごめんなんでもない」


俺のせいで、この子は傷付いて。


御崎と別れてすぐに次の子と付き合い始めたレオをクズ呼ばわりして。


レオは自分を悪者にすることで俺たちに気を遣わせなかったっていうのに。


自分は何も知らずに、最低なのは俺の方じゃないか。


申し訳なさと後悔を奥歯で噛み殺す。


「あ、ボートあるよ。

 あれ、乗ってみたいな」


わざとらしく御崎が話を逸らす。


俺はありがたくその話題に乗っかる事にした。


会話のイニシアティブも中学生にとってもらって…カッコ悪りぃなぁ。

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