第10話 クラスメイト
一限目の終わるチャイムの音を聞き、教室に戻る事にする。
二人で話し合った取り決めは以下の通り。
・なるべく目立たない。
・この世界の常識に合わせる。
・なるべく情報を集める。
二人とも頭が悪いので他にいいアイデアは思いつかなかったが、ひとまずは情報収集を目的に生活してみる。
レオは興味ないと言うが、やっぱり俺はどうしてこんな状況になってしまったのか知りたかった。
二人並んで廊下を歩いていると、前から一人の女子がこちらに気付き近づいて来る。
「りっちゃん!綿貫君!」
「あれ、あー。どした?」
こちらに話しかけてきた女子は
小学校から一緒で、今もクラスメイトだ。
「びっくりしたよー。
授業前にいきなり喧嘩して保健室直行なんだもん」
「いやー、コイツ思ったより軟弱だったから。
もっと手加減してやればよかったね」
うるせえ。
あんな強烈な頭突き食らって耐えられる中学生がいるか。
「さっき保健室に見に行ったら二人ともいないし。
どこ行ってたの?」
「体育準備室。
握力測ってきた」
レオが偽りなく答える。怪訝な顔をする御崎。
「体育準備室…?握力…?
なんでいま握力測るの?」
「測りたいから。
そんな変?握力測るの」
「授業サボって測るのは変だけど…。
でも、りっちゃんの場合は変じゃないか。
りっちゃんは変なのが普通だもんね」
「そうなんだよね、
ちょっと変わってるんだオ…ボク」
慣れない一人称に戸惑いながら、へらへらと笑うレオ。
「ちょっとじゃないよ。
凄く変。まともになったら逆に心配するよ」
御崎もくすくすと笑いながらレオと談笑している。
「じゃあ綿貫君はまたりっちゃんに振り回されてたんだ。
大変だね」
「大変だよ」
「ふふ、おでこ見せて」
言われるままに姿勢を低くする。
御崎は俺の短い前髪を少し上げて額に触れた。
「少し腫れてる…」
「大丈夫だよ。
柔道でもしょっちゅう頭ぶつけるし。
脳震盪だって慣れてるよ」
思わぬ女子との接近に動揺し、照れ隠しについ強がってしまった。
「慣れちゃダメでしょそれは」
「ボクの手厚い看病のおかげで完治してるから
お嬢ちゃんは心配しなくていいよ」
苦笑いする御崎に、レオがへらへらと横やりを入れた。
「完治してないよ、腫れてるってば」と御崎が笑った。
何が看病だ。お前は俺の腕を折ろうとしただけじゃねえか。
と、突っ込んでやりたいところだが御崎の前でこいつと親しげに接する事が是か非かわからないので黙っておく。
「てなワケでボクら教室戻るから、また後でね」
レオはさっさと話題を切り上げようとしている。
「そう、大丈夫ならよかった。
次、理科室で授業だから急いだほうがいいよ」
御崎もそれとなく察したのか先に教室に戻っていく。
彼女の反応から、どうやらレオは自然体のまま振舞っていれば問題無さそうだ。
俺も中学時代と同じように普通にレオと接していいのかもしれない。
ふと、御崎が思い出したようにピタリと止まりこちらを振り返った。
「ところで気になったんだけど…りっちゃんどうしたの?
いつもは自分のこと『俺』って呼ぶのに、
急に『ボク』なんて言いだして。
やっぱり何かあったの?」
そう言って心配そうにレオを見つめる。
レオは…多分俺を猛烈に睨んでいるはずなので隣を見ないようにしていたが、直後脇腹に肘鉄が飛んできた。
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