第4話 はじめまして
自分にとっては異常事態だが、周りが当たり前に日常を送っている事でこっちも合わせようとしてしまう。
その上全く知らない世界ではなく、過去に自分が経験した日常なので精神に相反して身体は自然とルーティンをこなす。
なんだかんだ、普通に家を出て学校へ向かっていた。
通学路もやっぱり、あの頃と一緒。
受け入れよう。
マジで中学時代に戻ってるみたいだ。
一つ違うのは、隣にレオがいないこと。
いつもならうちまで迎えに来るはずなのに、時間を過ぎても来なかった。
途中、ガキの頃にレオと遊んだ公園のベンチに腰掛け現状を整理してみる。
今の俺の認識はこうだ。
・十二年前、中学三年生の頃に戻っている。
・恐らく、二十七歳の自分が事故に遭った事で戻ってきた。
・この世界ではレオの存在が消えている。
・元の世界に戻れるかはわからない(元の世界の自分がどうなっているかもわからない)。
根拠のない想像なので間違っているかもしれないが、少しずつでも情報を集めていかなければならない。
なんで過去に戻ってしまったのか、この世界で自分に何が出来るのか。
……気付くと朝練の時間を大幅に過ぎてしまっていた。
どのみち部活なんて出来る心理状態じゃない。
今日はサボろう。
ゆっくりと時間をかけて登校。
始業のチャイムぎりぎりに教室に入る。
教室を見回すも、レオの姿は…無い。
窓際の自分の席に着く。
十年以上経っているにもかかわらず不思議なもので、既に着席しているクラスメイトの配置から自分の席がわかる。
斜め後ろの席にはレオがいた…はずだった。
今はその席に誰も座っていない。
休みなのか?
……もしかして。
あの空席にはやっぱりレオが座るんじゃないか。
そんなことはないかと思いながらも
「ねえ、あの席ってさ…」
苗字も思い出せない隣の女子に尋ねる。
「ああ、りっちゃん。
今日来てないね。休みなのかなぁ。
綿貫くん聞いてる?」
「いや、俺は…」
案の定というか、やはりレオの席じゃなかった。
レオ…。
本当にこの世界から消えちまったのか…。
ガラッ
バンッ!!
気分が悪くなって机に伏せようとしたその時、突如。
威勢よく教室のドアが開いて一人の少女が現れた。
クラス中の視線が彼女に向いている。
俺が中学生に対して言うのもなんだが、めちゃくちゃ可愛い。
テレビや雑誌でもお目にかかれないレベルの美少女だ。
長く輝く白金のロングヘアーを颯爽となびかせて教室に入ってきた。
だが、俺はこの子を知らない。
こんな可愛い子がクラスメイトにいて、思い出せないわけがない。
つまりこの子は、
初めて会うはずのその子がつかつかと俺の席へと近づいて来る。
その目ははっきりと俺を見つめ。
眉間にしわを寄せ、顎を引いて上目遣いで……。
…もしかして睨んでる?
この世界の事を知らない俺にとっては初対面で、この子と自分がどんな関係なのかもわかっていない。
だが彼女はそんなことお構いなしに、俺の目の前に立ち。
「なんでオメーは男のままなんだよッ!!」
そう叫びながら俺の額に強烈な頭突きをお見舞いしてきた。
突然の事態に身構える事も出来ず、目の前が真っ暗になった。
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