第10話 初心者の森での戦い

 翌朝、宿にて朝食を済ませると、本日の狩りに向けて出発した。

 ギルドで教えられた通りに町を出た後は左手へ歩みを進め、初心者の森へ向かい始めたと言いたいところだが、方向音痴である俺には森の場所がよくわからない。

 何せ昨日右と左を間違えてしまったくらいだ。


 そこで、それっぽいやつがギルドの門を出るのを待って、後ろをついていくことにした。俺って頭良い?とこの時は自画自賛したよ。

 そうじゃないだろって?そもそも方向音痴をどうにかするのが先だと言う話しもあるが言わないで欲しい・・・


 待つこと数分、幸いなことに少しだけ待っただけでそれっぽいパーティーが現れたので、意を決して彼らの後を追い始めた。


 確かに初心者向けの森に向かっているようだった。少し頼りなさそうながらも、このパーティーの後ろについていけば迷うことはないだろう。

 年端も行かぬ少年少女、初心者丸出しの安っぽい武器に頼りない所々欠けている盾・・・


 森に向かう道は静かな町並みから次第に草木が茂り、生い茂る木々に囲まれていく。方向音痴な俺は、一人で来るのはちょっと不安だ。それでも、彼らの後ろについていけば大丈夫だろうと、自分に言い聞かせながら歩を進めた。


 今日はスライムやホーンラビットといった弱い魔物たちを相手に、自分の実力を測るのが目的だ。


 これまでのステータス操作で得たステータスは上級並みのようだ。

 昨日換金したバトルウルフは、単独で討伐可能な者は上級冒険者だと言われても、実際に他の人と比べてみないと自分の強さがどれほどのものかよくわからない。かと言って人と戦うのはなるべく避けたい。


 それもあり、実際に強さの分かる魔物を狩って確かめることにした。

 バトルウルフは中級冒険者の場合、パーティーでの対処が必要と言われ、はははとごまかすしかなかった。

 冒険者登録する時にオネェさんに変な目をされたけど、なるほどと思った。

 バトルウルフを単独討伐はB級以上と見なされているようだ。


 罠を張って身動きできない状態にしてから討伐したんだと誤魔化したけど、多分誤魔化しきれてないよね?

 ジト目だったからね。美人のジト目ごちそうさまでした。


 守秘義務?からか大げさにはされていない・・・と思いたい。

 貴族や騎士の中に、身分を隠して急に冒険者を始めたとか、破産したり勘当された貴族が上級の実力者であり、そんな人が冒険者になるのはアリアリなのだと思いたい。

 そして俺がそんな風に思われ、あまり深入りりしないほうが得策と判断して下さい。 


 その思いが通じたのか、スルーされてステータスや家柄に関係なくFランクスタートと、淡々と登録時の説明を始めた。

 空気の読める受け付け嬢だ!うん、そういうことにしよう。

 悪目立ちしないためには、ランクにあった魔物を討伐してランクを上げればよいだけの話だ。


 又はギルド以外に素材などの買い取り先が見つかれば良いけど、この世界に来たばかりの俺にはその様な知り合いや、店を知らない。


 そんなこともあり、今日こそはと初心者向けの森に入る。


 確かに若いのや弱っちそうだったり、貧相な装備のやつが向かっているが、中には木で作った槍?を持っているが・・・あんなんで大丈夫なのかな?

 まだ石を布で巻いてブラックジャックもどきの方が強そうだな。

 一度試そうかな?

 確かに現代社会で暗殺に使われているそうだけど、つまるところ靴下に石や金属の塊を詰め、それを振り回せば即席の武器になるんだったっけか?


 そんなことを考えながら教えられた方角と言うか、それっぽい奴の後ろをついていくと、今度こそ目的の森に到着したようだ。

 そこは静かな雰囲気が広がっており、木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりが心地よい。


 だが、その平和な風景の中にも、確かに魔物の気配があった。俺は先に森に入っていったパーティーとは別の方角に向かうことにした。

 森に足を踏み入れると、慎重に歩を進め、最初の獲物を探した。

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