異世界でハズレスキル【安全地帯】を得た俺が最強になるまで〜俺だけにしか出来ない体重操作でモテ期が来た件〜

鍵弓

第1話 プロローグ

 山田三郎はどこにでもいる平凡な高校1年生だった。身長165cm、体重は80kgちょいの小太りで、特に突出した特技もなく、ただ漠然と日々を過ごしていた。唯一の特技といえば、空間認識能力が高く、ルービックキューブの6面を30秒以内に揃えられるくらいのもの。修学旅行や宴会で一発芸として披露する程度のもので、それ以上の価値は感じていなかった。


 彼の日常は勉強とゲーム、好きなアイドルの動画鑑賞、そして異世界ものの小説を読むことで満たされていた。学校では、三郎は無視される形でのいじめに遭っていた。友達はオタク系の2人だけ。見た目に自信が持てず、積極的に仲間を求めたり、異性にアプローチすることもできなかった。そんな彼は、いつか異世界に召喚されたいと夢見ていた。言うなれば、彼は自分をモブキャラとして認識していたのだ。


 そんなある日、教室でホームルームが始まるのを待っていたが、時間になっても先生は現れなかった。


「おい、先生遅くね?」


 クラスメイトが不満を漏らす。


「誰か何か聞いてる?」


 別の生徒が尋ねたが、返事はない。


「しゃあないな。誰か聞いてこいよ」


「ならお前が行けよ」


「しゃあねぇなあ、じゃあ山田見てこいよ」


 突然、三郎に話が振られた。


「ちょっと馬鹿じゃないの!何が『しゃあねぇなあ』よ。山田君の脚は怪我で階段の上り下りが辛いのを知っているでしょ?」


 委員長が三郎をかばう。


「っち!はいはい、委員長様。わーったよ、俺が行くよ」


 そう言いながらドアに手をかけるも、ドアは開かなかった。


「何だよこれ?」


「篠津川、何やってんだよ。面白くないぞ」


「違うよ。ウケ狙いとかじゃなくて、本当に開かないんだって。嘘だと思うならお前が開けてみろよ」


「何をバカなことを!開いたら山田マツク奢れよって、何だよ!本当に開かないぞ!」


「ねぇ、外おかしくない?」


 クラスの女生徒の1人がカーテン越しに外を見ようと窓を見るも、日差しは感じられず真っ黒だ。スイッチを触るも電気はつかず、外は真っ暗だった。


 皆がパニックになっていると、突然足元が輝き出し、男子21人、女子19人は忽然と教室から消えた。


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 気がつくと、僕たちは冷たい石畳に崩れ落ちていた。周りには甲冑を着た兵士、神官服の男女、メイド服の女性、そして派手な服を着た老人たちが立っている。まるでコスプレ大会に迷い込んだようだ。


「何だよこれ・・・」


 辺りを見回すと、どうやら僕たちは中世の城にある広間のような場所にいる。教室が一瞬にして異世界の壮大な広間へと変わった瞬間、僕たち40人の高校1年生は異世界に召喚されたことを悟った。


「成功だ」とか、「これで我が国も・・・」といった喜びの声が周囲から聞こえてくる。前方には堂々とした態度の壮年の男、国王と思われる人物と、その傍らにいる美少女、恐らく王女が僕たちを見つめていた。


 僕は四つん這いになり息を荒くしていたが、意識ははっきりしており、状況把握をし始めた。これはひょっとして・・・異世界召喚か?


「ステータス」と心の中で念じてみた。すると、目の前にホログラムのような画面が浮かび上がった。


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 名前:山田三郎

身長: 165cm

体重: 82kg

年齢: 15

1. レベル: 1

2. クラス: 無職(異世界召喚者)

3. 能力値

 力: 50

 体力: 40

 知恵: 70

 魔力: 60

 敏捷: 30

 幸運: 80

 魅力: 99

 ポイント: 100

4. スキル: なし

5. 特別スキル:

 安全地帯(Lv. 1)

 

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 ゲームや小説が好きな僕はその表示に微笑んだ。すると、体重の文字の色が変わっていることに気が付き、頭の中で体重と念じると、なんとなく体重を減らせそうなことに気づいた。試しに2kgを変更してみると、一瞬体に違和感が走り、ポイントが2000増えて2100になった。

 

 ポイントをスキルに振れることに気が付き、僕は特別スキル【異常状態耐性】と【ステータス隠蔽】を取得し、すぐにステータス隠蔽を発動して今取ったスキルを隠した。また、何故こんな操作ができるのか不思議だけど、出来る!としか言えなかった。鳥になぜ飛べるの?と聞いても、飛べるとしか言えないとなるのと同じで、生まれながらにできていたとしか言えなかった。


「万が一に備えておかないと・・・」


 小説やアニメの見過ぎかもしれないが、警戒してスキルを隠したんだ。僕のようなモブは無能者とかでクラスからひどい仕打ちを受けたり、召喚した側が処刑や追放をしたりされる率が高いと相場が決まっているからね。


 しかし、隠蔽した途端、僕の頭に突然鈍い痛みを感じた。周りのクラスメイトたちも同様に頭を抱えて苦しんでいるようだったが、僕もまたその痛みに耐えるのが精一杯で、立てなくなり、皆と同じように呻くしかなかった。


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 名前:山田三郎

身長: 165cm

体重: 80kg

年齢: 15

1. レベル: 1

2. クラス: 無職(異世界召喚者)

3. 能力値

 力: 50

 体力: 40

 知恵: 70

 魔力: 60

 敏捷: 30

 幸運: 80

 魅力: 99

 ポイント: 100

4. スキル: なし

5. 特別スキル:

 安全地帯(Lv. 1)

 異常状態耐性(隠蔽)

 ステータス隠蔽(隠蔽)


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 皆が取り敢えず座れるようになると、国王と思われる人物が前に進み出て、僕たちに向けて話し始めた。僕は警戒しながらも、新天地であるこの見知らぬ異世界で、自分が秘めている可能性に胸を高鳴らせた。

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