前のエピソード――第10話　初心者の森での戦い

　しばらく歩くと、小さな水たまりの近くにスライムが現れた。半透明の体に、ゆっくりと動くその姿は一見無害そうに見えるが、油断は禁物だ。俺は剣を構えながらスライムに近づき、間合いに入ると一気に剣を振り下ろした。

　スライムは剣の一振りで真っ二つに割れ、あっけなく消滅した。拍子抜けするほど簡単だったが、これはあくまでも最弱の魔物。　慢心は禁物だ。

　スライムはパチンコ玉ほどの大きさの玉を残し、体液が地面に吸収されて溶けるように消えていった。

　これが魔石というのだろう。

　ち、小さい・・・

　まあ、血塗れになるよりはマシだ。うん。マシだ。気を取り直して次、行ってみよう！

　次に現れたのはホーンラビット。

　よ小さな角を持つウサギのような魔物で、素早い動きが特徴だ。

　小型犬というか、猫にしては少し大きい程の大きさ。

　鋭い歯とあの角が一番やばいと思う。

　あれで刺されたら痛そう。

　異世界と言ったらホーンラビットは定番だよね？ソロの初心者には少し厳しい？位の設定のはず・・・

　ホーンラビットは鋭い目でこちらを見て、すばしっこく動き回る。だが、その動きも俺には見切れていた。

　素早いステップで距離を詰め、一撃で仕留めてやると意気込んだ。

　正確には視界の外から角をひっつかみ木に叩きつけて撲殺を試みる。

　何故か？剣で切ったら血が飛び散るよね？というわけではない。

　これをするのには、血を見たくないこと以外にちゃんとした理由があるんだ。

　素材として高く売るために、可能ならそうするのが良いと聞いたからなんだ。

　・

　ホーンラビットもまた、俺の前では赤子のように何もできずにいた。

　角を掴まれてジタバタするが、もちろん何もできない。

　後は木に叩きつける簡単なお仕事。

　その後も何体かのスライムやホーンラビットと対峙したが、どれも容易に倒すことができた。自分のステータスが確かに初心者のそれではなく、上級並みであるんだろうなということを実感しながら、俺は森の中を進んでいった。

　試しにわざと隙を見せてホーンラビットに攻撃させたけど、やはり恐ろしい形相でジャンプし、角で突き刺そうとしてきた。

　躱しざまに右手で角を握り、左手で背中を掴むと一気に首を捻って〆た。

　初心者の森を一通り見て回り、俺は自分の実力を改めて確認できた。これならば委員長を安全に守り抜くこともできるだろう。

　初級者向きの魔物相手では、正直怪我をするなんて想像できないほど弱かった。

　１５時位になり俺は森を後にして再び王都に戻ることにした。次は委員長と共に行動を始めるための準備を本格的に進める時だ。

　戻る途中、ふと足を止めて考えた。自分の強さを確認できた満足感よりも、魔物を素手で殺してもなんとも思わなかった自分の変化に戸惑ったが、これからもっとエグいことをしなきゃならないだろうし、そうしなきゃ委員長を守れないんだと、自分に言い聞かせた。

　これからの道のりに一抹の不安を感じたが、その不安を打ち消すように、自信もまた湧き上がってきた。

『俺は必ずやり遂げる。委員長を守り抜くぞ！』」

　そう心に誓い、再び歩を進め町に戻った。

　門から普通に入る時に気が付いたが

　この日の俺の稼ぎはホーンラビットが1体につき銀貨5枚、スライムの魔石は銅貨1枚と差が出た。この差はホーンラビットの価値が肉は銅貨5枚、魔石は銅貨2枚といったところらしい。だが、無傷の毛皮が大きな価値を持っているが、それを得るには角をつかんで叩きつけて倒すのが一番なのだが、角をつかむのが厳しく、よく掴んだなと感心されてしまった。

　スライムの魔石3個とホーンラビット4体をギルドに持ち込むと、査定が始まった。最終的な稼ぎの内訳は以下の通りだ。

　- スライムの魔石（3個）：銅貨3枚

　- ホーンラビットの肉（4体分）：銅貨20枚

　- ホーンラビットの魔石（4個）：銅貨8枚

　- ホーンラビットの毛皮（無傷4枚）：銀貨20枚

　総計：銀貨20枚、銅貨31枚

　これで初心者パーティーの2日分ほどの稼ぎになるらしい。お金を受け取ると、必要な準備に不足がないか考えた。毛布をもう一枚買い足し、宿に戻って休息を取ることにした。翌日は、王都の外を歩き回って地理を把握することにした。