第12話 委員長と再会

 この2日間は魔物を狩るために街道を外れて行動しけど、今日は狩りではなく街道沿いを1時間ほど歩いて地理を頭に叩き込むことにした。その後はさらに王都の周辺を歩き、どんな場所かを探った。王都の外には小さな村や農地が点在し、様々な風景が広がっていた。


 午後3時過ぎにギルドに戻ったが、講習が終わる前だったようで、とりあえず講習が終わるのを待つことにした。

 さて、どうするかなと思い、ギルド内の掲示板を見て、依頼の内容や報酬を確認しながら時間を潰そうと思うも文字が読めず、冒険者たちの話に耳を傾けて情報を収集する位しかやることがなかった。


 講習が終わる時間が近づくにつれ、ギルドには依頼を終えた冒険者が次々と来ており、段々賑わってきた。


 そして講習が終わった者たちがロビーに現れ、その中にいる委員長を見付けたので、トイレに向かいつつすれ違いざまに短い言葉を掛けることにした。


「この前のところで待つ」


 お互い振り向かず、俺はそのままトイレに向かった。待つこと数分、ようやく委員長が現れた。高々数分だが、数時間にも感じられるほど長く感じた。待たされる側にとって、待ち時間はどうしてこんなに長く感じるのだろうか?とイライラしていた。


「ごめん、本当にお花を摘みに行きたいの。少し待って」


 そう言うと、委員長は実際にトイレに行った。少しして戻ってきた彼女は俺の目を真っ直ぐに見た。


「や、じゃなく、どこまでも貴方についていくわ。それと私は委員長じゃなく佳苗よ。佳苗って呼んで欲しいわ」


 ちょっとおかしいかもだけど、一緒に来る決意を示してくれて、俺はホッとした。


「ありがとう、佳苗。じゃあ、行こう。着いてきて」


 そう言うと、さっと安全地帯を発現して入口を出した。(文末に解説)


 安全地帯の入口、つまり小部屋の入口が出現すると俺たちは急いで中に入り、直ぐに扉を閉じた。部屋の中は狭いが、2人が数日隠れ潜むのには十分な広さがあり、なにより安全な場所だ。異空間に逃げ込むことで、俺たちはしばらくの間だけでも安全を確保することができる。


「ここが安全地帯なのね・・・本当に異空間なんだ」


 佳苗が驚きながら呟いた。


「そうだよ。この中にいて出入り口を消せば間違いなく安全だ。外に出るときも周囲の状況を確認できるから安心して移動できる。別のところに扉を出せば、入口とその分違うところに出られる。うまく活用すれば壁抜けができるんだ」


「確かにこれを使えば、王都からも逃げられるかもね」


「その通りなんだ。でも後でちゃんと、計画を立てよう。この安全地帯を活用して、王都の外に出るまでのルートを考えるんだ。因みに荷物は大丈夫?」


「基本的に講習に必要なのや、召喚時の服を身に着けているわ。ただ、替えの服や下着がないのがネックかな」


「大丈夫。下着以外は買ってあるよ。ただ、逃げる時に下着だけ買っていこうか?申し訳ないけど、町を出て落ち着くまでは俺の指示に従ってほしい」


「もちろんよ!私の全てを貴方に託すわ」


 2人で計画を練りながら、次の行動を決めていかなければならないが、一息つくことが可能になるまでは俺の指示に従ってもらうしかない。この安全地帯を使えば、壁を抜けることも可能だし、追っ手からも逃げられる。俺たちは互いに信頼し合い、共に未来へと歩み出す決意を固めた。


 そして用意した服に着替えてもらうことにし、俺は背中を向ける。しかし、彼女は躊躇なく服を脱ぎ捨て、俺が用意した冒険者風の服に着替えると、一時的に髪の色を変えるポーションで変装した。着替え終わった後確認したが、やっぱりすんごい美少女だ!思わず見惚れた。


 だけど、どうかしたの?と聞かれ、少し慌てながら答える。


「うん。これならもうクラスメイトは委員長とだと分からないだろうってね」


「佳苗よ」


「うん。分かっている。皆にとっては委員長だけど、今の君は佳苗だよ。さて、もたもたしていると委員長どこ行った?と騒ぎになるから、とっとと逃げよう!」


 そして安全地帯の出口をトイレがある壁の外側に出し、ギルドの建物から外に出ることになる。佳苗はメガネを外しており、フードも深く被っている。そして髪も緑にしているから、まず佳苗とは分からないだろう。さあ逃避行の始まりだ!



【特別スキル解説】


 **安全地帯(Lv. 1)**


 戦闘から遠ざかることに長けたスキル。小さな小部屋を出し、そこに逃げ込むことで異空間に待避する。出口はその場の相対位置になるが、部屋のどこにでも出せる。上手く活用すれば安全地帯経由で壁抜けが可能。

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