第13話 出鼻を挫かれるトラブル発生
佳苗が着替えている間に、小さな窓を出して外の様子を慎重に確認した。
丁度トイレのあるところの足元に出したはずなので、外からは基礎によく開いている通常の穴くらいにしか思わないだろう。
誰もいないことが確認できたので、ギルドの建物の壁を抜けて安全地帯を出ることにした。
「佳苗、準備はいい?今は目を瞑って!その方が大丈夫だから。取り敢えず壁抜けをするから」
佳苗が頷いたので、彼女の手を引いて入口とは別のところに作った出口を開けると外に出た。
さっと周囲に目を向けるが、幸いなことに目立った動きはなかった。
ここはギルドと隣の建物の間の裏路地だ。
町を抜けるまでの道中、建物の壁をすり抜けるようにしたりし、目立たない場所を選んで進んでいこうとした。
俺たちはギルドの建物の陰を利用して素早く移動を始めようとしたが、予期せぬ事態が待っていた。
「アンタたち、逃げるんでしょ?」
突然、陽キャである神原さんが俺たちの前に現れた。彼女は明るい笑顔を浮かべながらこちらを見つめていた。丁度トイレの窓が見える場所におり、安全地帯を出た俺たちの死角に当る場所だった。
冷や汗が出る。
「えっ・・・どうしてここに?」
「私、ずっと見ていたのよ。あんたたち逃げるんでしょ?あたしも混ぜなさいよ!」
彼女の積極的な態度に一瞬戸惑ったが、すぐに状況を理解した。彼女は俺同様、精神支配が効いていないか、効果が切れたのだろうか?はたまた効きが弱かったのか?
「でも、俺たちの計画は・・・」
「大丈夫、あたしも逃げる準備はしてきているから。ほら、荷物も持ってるわよ!佳苗の様子が変だったから、もしやと思ったのよ。誰かと接触しているのはなんとなく分かったけど、まさかあんただとは思わなかったわ。私のことは美佳で良いわ」
そう言って彼女は背負っていたリュックを見せた。確かにギルドの講習に来ている割にリュックは不自然なほどに膨らんでいた。
彼女の決意と明るい性格が、俺たちに少しの安心感を与えた。
「山田君・・・」
佳苗が俺の袖を引く。
「わかった、でも静かに行動してくれよ」
「もちろん、任せて!ただ後であんたのその激変わりについて話してもらうんだからね!ヤマピーで合っているわよね?」
「ヤマピー?なるほど、そう言うことか。そうだ、山田だよ。ところで精神支配が効いていないようだが、何かしたの?」
「それは後で話すわ。あたしも聞きたいことが山ほどあるけど、今は逃げるのが先でしょ?」
俺は頷いて受け入れるしかなかった。俺の逃走計画に新たな仲間が加わった。3人で協力しながらギルドの建物から遠ざかり、安全地帯を駆使して王都の外へと向かうことになったが、
初っ端から想定外の事態が発生し頭が痛い。
今ここで連れて行くか行かないかを議論する暇もないし、助けを求められたのに見捨てるなんて選択肢はあり得ない。
しかし、こいつ苦手なんだ。
陰キャの俺と真逆なんだよな。
確かモデルをやっているとかあって、美人で人気者なんだけど、派手なんだよな。とはいえ、今すぐ聞かなきゃならないことを質問する。
「他のやつは?」
2人とも首を横に振ったので、俺は頷いた。
彼女にはその場で予備の外套を羽織らせ、目立たないように防壁方面へと向かうことにした。
それからは、追手や注目している者がいないか気をつけながら歩いていった。
彼女は神原美佳(カンバラ ミカ)という名で、派手な見た目で俺の苦手なタイプ。気の強いツンデレ属性持ちで、茶髪のモテキャラだ。真面目な佳苗とは対極的な陽キャラだ。
なぜか俺の正体を見破られた。ギルドから少し離れた裏路地で足を止めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます